サラリーマン「10のメリット・デメリット」フリーランスよりも会社員?
サラリーマンかフリーランスか起業家か?
ストレス社会、と言われる現代。
「いつまでも雇われでなく独立したい」
「もう会社員はたくさんだ」
「会社をもう辞めたい」
そんな声もある一方で、
「会社員こそ最強」
「サラリーマンが安全でしょ」
「出世してスーパーサラリーマンになればいい」
などなど、サラリーマン派の声もある。
いずれにしろ人生の選択において「会社員でいるか」「辞めて独立するか」の選択は、生き方を決める大きな決断。
ただ普段「サラリーマン」という言葉が使われる際、それはポジティブな表現で言われることは決して多くない。どちらかと言うとネガティブに語られるケースや、揶揄する場合に使用される。そこには「会社員はかっこ悪い・守りに入っている」という意識も見え隠れする。そのため、逆に「会社員はとっても良いぞ」と擁護する派の語気は強くなり、反対にフリーランスや起業家は人生を謳歌しているコメントが多く、両者は対極にあるかに見える。
しかしそもそも、会社員とは本当にネガティブな存在なのか。
現状、日本国民の87%が雇用者(総務省統計局)であるゆえ、国民の約9割がサラリーをもらう側の道を歩んでいる。数の原理で言えばサラリーマンにメリットがないほうがおかしい。
そこで今回は、サラリーマンのメリットを「5つ」そのあとにデメリットも「5つ」考察していこう。
メリット①「給与が支払われる」
当たり前のようで、これはスタートアップ起業家や駆け出しフリーランスにはない最も大きな恩恵。それが高給であれ低給であれ、会社と個人が契約をしその企業の社員となった場合、契約に基づいた給与が支払われる。
仕事でミスをしても、納期を遅延しても、会社から社員には給与が支払われる。「反省させるために支払わない」などやると会社は罰せられる。会社が倒産寸前など特定の場合を除き、20万なら20万、確実に約束の給与が手に入るというのがサラリーマン。つまり、生きていくうえでの金銭的な安心感を得ることができる。
メリット②「社会保険・厚生年金が半額」
サラリーマンは社会保険・厚生年金の支払いが義務であるものの、それらの半分は会社が払ってくれる。また結婚して扶養家族ができた場合でも、扶養者の年収が規定額を下回る場合、その扶養者の社会保険の支払いは免除に。反対に、フリーランスなどの個人事業主の場合は自分と扶養家族の分も全額支払うことになる。
実際に個人事業主を開業してから、国に支払う保険と年金の負担を痛感する人も多い。また「作業」という意味でも、単純に「保険・年金・税金」の大変な支払い作業を会社がやってくれるわけで、これは「日常業務にだけ集中すればいい」という会社員の大きなメリット。
メリット③「仕事がある」
仕事は面倒、と思われる対象だが、自ら仕事を作らないと生きていけない起業家やフリーランスと異なり、会社員には用意された仕事がある。自分で見つける必要はない。
その仕事内容に好き嫌いはあれど「自分で毎日仕事を生み出す」必要がないことは、時間的にも精神的にも大きなメリット。余分なパワーを使わずに、その仕事に集中し結果を出せば、評価や給与も上がっていく。
なおここで言う「仕事」とは上司のお説教シリーズによくある「自分のシゴトは自分で見つけろ」の類にある曖昧な基準の「シゴト」でなく、会社の業務として決められた本業務のことを指す。
メリット④「会社の名前で仕事ができる」
世界的企業や大企業との仕事などは、会社員だからこそできる業務。反対に駆け出しの起業家やフリーランスではそういった大きな仕事をいきなり受諾することはできない。できたとしてもそれは「孫請け」と「下請け」と呼ばれる末端の仕事。
サラリーマンはいわゆる「法人格」という言葉でも語られる「法人(会社)としての格(信頼)がある」。昨日までフリーターでも、今日あなたが会社員になればいきなり「法人格」が付く。クレジットカードや銀行口座もスイスイ作れる。過去がどうであれ「◯◯株式会社の◯◯さん」として社会的な信頼をいきなり手にすることができる。
メリット⑤「ノウハウをもらえる」
給与、社会保険、仕事、さらに法人格もあるなかで、さらにその会社にある「ノウハウ」を手中にできるのも大きなメリットだ。入った会社が自分の将来につながるジャンルであれば、その会社で巻き起こる森羅万象の全てをノウハウとしていただける。
お金を払って学校に行ったりオンライン教育を受けずとも、逆に給料をもらいながら、さまざまな技術とスキルを吸収できる。
では次に、サラリーマンのデメリットを「5つ」見ていこう。
デメリット①「ルールが多い」
会社は他人の集合体。その集合体を機能させるにはどうしても「さまざまな規則」が必要となる。「始業時間・休憩時間・就業時間」など時間に関するものあれば「服装・言葉」や「メールの書き方・書類の作り方」さらに「話し方」などなど多岐に渡るルールが会社を支配している。
会社のルールは絶対であり、一社員が変更できるものではない。またそのルールを解釈する上司によっても拘束の限度が変わる。規律は明文化されているものもあれば「飲み会」や「社員旅行」での伝統などいわゆる「空気」としてなんとなく決まっているものも。悪質な組織ではこの「ルール」を逆手にとってのパワハラ、セクハラなどが発生する会社もある。
「うちは自由な社風だよ」という会社でも、それを発言している社長のワンマン体制だったり、上司の気分で物事が左右されてしまうならば、むしろそれは「見えないルール」が無数に存在しているカオス状態である。
デメリット②「帰れない・休みにくい」
まだまだ日本の会社にある空気として多いのが「帰れない・休みにくい」という風潮。就業時間が決まっているにも関わらず、いつまでも仕事を終えない先輩社員や上司がオフィスに残っており、自分だけが帰宅しにくい風潮がある。さらにそこから「一杯飲んで行きますか」と終電間際まで居酒屋で上司・先輩・同僚、ときに後輩に付き合うこともある。
「誘いなど断ればいいだけ」という意見もあるが、それはその会社の風土や本人の性格に依存してしまうため多くのケースに当てはめることは不可能。また有給休暇が「あるけど取りにくい」会社もあり、たった数日の休暇を取るために周囲に頭を下げたり、スタンバイに奔走するなどの事案も珍しくない。
デメリット③「会社の一部にすぎない」
会社によっては同じようなことを毎日やらされる「作業員」のような状態になる。その場合、会社は儲かれど、自分の利益はなにひとつ増えていかない。
誰がやっても同じ仕事、AIに取って代わられる仕事、喜びやノウハウ吸収を見いだせない業務は「会社の部品」にすぎず、自分のためでなく会社のために人生を使っていることになる。仕事に慣れれば慣れるほど、歯車のひとつであるという虚しさと戦うことになる。
デメリット④「給与が上がらない」
奇跡的なスピード出世やチャンスが巡ってくるなどのレアケースを除き、会社員の給与は大幅に上がることはなく、現状キープか年々微増、という状態のまま退職となる。
20代でその会社に入っても10年後・20年後の給与が先読みでき、大きな金銭的リターンは期待できない。
デメリット⑤「上司・同僚・後輩・客を選べない」
会社員とは組織人。やれと言われたことをキッチリこなすことがミッション。しかし指示を出してくる上司や社長、そして自分の同僚や後輩、もちろん顧客も自分では選べない。不特定多数の人間が複雑に絡む会社業務においての個人プレイは歓迎されないゆえ「受け入れる度量」が求められる。
つまり環境、とりわけ「人間関係・人環境」を自らの手で一変させることは不可能で、自分の好き嫌いに関わらず、その会社を取り巻くさまざな人たちと上手に付き合い続けることを強いられる。
「自由」の解釈
▶フリーランスと起業家にある自由とは?
上司の存在しないフリーランスや起業家であればその日のスケジュールは自分の裁量で変更でき、休暇をいつ取ろうとクライアントとのコンセンサスが取れていれば問題ない。仕事でミスろうともリカバリーするのは自分であり、会社から呼び出されて説教や降格を喰らうこともない。あまり好きでない客とは距離を置き、自分と合うクライアントやパートナーを探すこともできる。しかしそれらの自由度と背中合わせなのは「お金も含めた全責任」。倒産が起業家の破産という結果につながるケースがあるように、どんなミスも、負債も、自分で受け入れることになる。誰も守ってくれない。
これを「自由」と見るか「リスク」と見るかは人それぞれであり、決して「起業家・フリーランスは自由」などという短絡的かつ間違った見方は危険だ。むしろ会社の社長とは雑用であり、土日休みもなく、会社員より自由な時間は少ない。フリーランスは生き残るためにすべきことが山程ある。年末年始もよほど安定したフリーランスでない限り仕事をしている。
▶サラリーマンにある自由とは?
反対に、組織人である会社員はスケジュールやミスのリカバリーに自社の人間が大きく関与している。朝礼や終礼まである会社はもちろん、有給を取る時期さえも遠回しに押し付けてくる会社さえある。どんなに自由な社風に見える会社でも不特定多数の人間を一定のリズムとインターバルで動かすためのルールが結局は存在する。しかしそれは、ピンチのときに助けてくれるメンバーが常に存在することでもあり、一見勘違いしがちな自由のなさと引き換えに、守られた日常・守られた仕事をこなすことができる。当然、会社がなくなっても破産や負債を抱える心配はない。
これを「がんじがらめ」と見るか「安定を得たうえで生きていける自由がある」と見るかは人それぞれ。「会社員=雇われでラク」「サラリーマン=かっこわるい」などという安直な見方はあまりに浅すぎる。サラリーマンは出世していけばいくほど、組織内での裁量は大きくなり、結果的に組織内での自由を獲得することもできる。会社の規則は変えることができなくても、意思決定や帰宅時間に至るまで、ある程度の自由さを得ることができる会社もある。
サラリーマンが正義?それともフリーランス?
「サラリーマンこそ正義」
「これからは会社員の時代」
こういう意見もあれば、
「起業し独立した人生を」
「フリーランスで身軽に動く」
こういった意見もある。
これらは正反対の属性であるがゆえ比べられることも多いが、どちらもメリットとデメリットがあり、どちらが正しいということもない。
人生で働く時間は最も多いゆえ、つまりそれは「どのような人生を生きたいか」によって働き方が変わる。組織のなかでこそ光り輝く才能を発揮できる人もいれば、一匹狼でフリーランスが合っている人もいる。あるいは起業し自らの夢に挑むリスキーな人もいる。
SNSで飛び交う個人個人の好き勝手な見解、インフルエンサーの言うことなどに惑わされず「どのような人生を生きたいか」を自分の胸に手を当てて考えることがキャリアのスタートだ。
とはいえ、胸に手を当てたくらいで答えが出ないから悩むわけで、その際は「会社員→フリーランス→起業」と段階的に《3年以内に全て》体験するという短期決戦を打ち立て、まずは就職すればいい。それだけのことである。
計画的に偶発を活用する
キャリアなど計画的に練っても実際にはそのようにはいかず、就職先の会社や上司などの環境にも左右されるゆえ、結局は「出たとこ勝負」である。
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提唱した「計画的偶発性理論」(※キャリアの8割は偶然によって決定されるゆえ、その偶然を計画的に変換・発展させていく考え方)にもあるように、立ち止まらず引きこもらず、興味ある進路への一歩をまず踏み出すことが大切だ。
キャリアは「考えながら働く」「動きながら見つける」ことで選択していこう。失敗したら会社を辞めたり、フリーや起業を一度やめることでリセットすればいいだけのこと。行きたい業界へのスキルが自分に今ないなら、さっさと勉強できる環境に自分をセットしよう。
一番の問題は「どっちがトクか、どっちがラクかばかり考えて何もしないこと」である。
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著者:清宮 雄
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