コロナで衰退する事業・急伸する産業は?コロナ後の世界はどうなる?
コロナで急速に変わるビジネスと経営
コロナウイルスの世界的な蔓延により「伸びるビジネス・縮むビジネス」の明暗がわかれています。
「売れるもの・売れないもの」の急速な入れ替わり。
私たちはいま、時代の節目にいるのかもしれません。
一刻も早い終息を願うコロナウイルスですが、その後は以前と同じ世の中に戻らない可能性もあります。なぜならすでに「残るビジネス・残らないビジネス」がハッキリしつあるからです。
コロナ後の世界は果たしてどのようになっているのでしょうかー。
今回の記事では、
■ 「コロナの影響でどんな事業が苦境に立ち/どんな産業が伸びているか」
■ 「コロナ後の世界の仮説」
以上の二本柱で書きたいと思います。
コロナの影響で「苦境に立たされる」業種
まずは、コロナ影響で「苦境に立たされる」業種から見ていきます。
例えば下記の業種。
■ 旅行業
■ 旅館・ホテル業
■ 航空業
■ 飲食業
■ 製造業
■ 運輸業
■ 留学業
■ イベント業
■ 服飾品卸売業
■ 繊維・繊維製品業
■ 娯楽産業(遊園地・映画館等のオフラインビジネス)
■ 印鑑業
■ コワーキングスペース業
■ スポーツジム業
こう書くと「これって、ほぼ全ての業種では…?」と思えるほど、世界中の産業に影響を及ぼしています。
例えば「旅行業」は国内外の旅行代理店など海外への航空券発券やホテル予約の産業。それに直接関係している各国の「旅館・ホテル業」も打撃を受けています。Agodaなどの大手ホテル予約サイトは、本来キャンセル不可の予約に関しても全額返金するなど特別対応に追われています。
「飲食業」も外出禁止・ロックダウンの影響をもろに受けている産業。人々が外に出ないわけですから、お店は開店休業状態に。外国人旅行者を対象にしていたようなインバウンド型のお店は大打撃です。
「運輸業」では中国市場の停滞によりコンテナ貨物などの輸送量が激減。コロナ以外の要因はもちろんありつつも、現在リーマンショック以上のインパクトが市場を襲っています。復活の兆しにあった半導体業などの「製造業」、また原材料の調達難が受注減に結びついている「繊維・繊維製品業」も苦しい状況。
「留学業」も旅行業同様、海外渡航の禁止・抑制の動きにより、留学に行きたくても行けない人たちを生み出しています。受け皿となる各国の留学学校はストレートにダメージを受けている状態。
「印鑑業」もしかり。まだまだ続きそうだった日本の印鑑文化ですが、オンライン業務が急浮上で一般化してくると「ハンコ」「印鑑」というアナログかつ偽造も可能で紛失や盗難のリスクもある形式は衰退していくでしょう。電子署名の採用企業が増えると、わざわざ会社に印鑑を押すために行く、という文化がナンセンスとも囁かれ始めました。先日4月15日、このコロナ禍のなかでIT大手のGMO社が「ビジネス契約上での印鑑廃止」を打ち出すと発表。また、5月29日にはサントリー社が「6月から業務のペーパレス化」の推進を決定。電子決裁を段階的に導入していくことを発表し、グループ主要各社で2022年内までの導入を目指すことが大手メディアでも報道されています。
ノマドワーカーや個人事業主などを顧客にしていた「コワーキングスペース業」も危ない兆候。いましばらくは「人の集まるところに行きたくない」という層の客足が遠のく可能性があります。筋トレ・健康ブームで追い風だった「スポーツジム業」も、コロナ初期に政府から名指しでその危うさが警鐘されるなどモロに喰らったかたち。
今回のコロナの大きな問題は、上記の恐慌が日本だけでなく世界中で同時に起きていることです。
当サイトのアクトハウスはセブ島にあるIT留学ですが、このコロナウイルスの被害を受けた「留学業」に入ります。今回、その対応に追われ新入生の方々にご了承いただいたうえで、入学時期を予定より先に延ばしにするなど調整をしている状態。セブ島での政府の動きやアクトハウスの対応は下記の記事にてご説明しています。
▶関連記事『セブ島での「新型コロナウイルス感染症」の対応と方針』
▶関連記事『ロックダウン中のセブ島をレポート。都市封鎖の現状を徒歩で見てきた。』
コロナ影響で「急伸する」業種
反対に、コロナショックの影響で急伸する業界も出てきています。
外出制限のあるコロナの属性から「非対面産業/オンラインビジネス」が伸びている傾向。
■ 医療・医薬品業界
■ オンライン産業(ECサイト/ゲーム/VOD:ビデオオンデマンド)
■ スーパー/コンビニエンス/ドラッグストア
■ フードデリバリー
■ 保険業
■ リモートワーク関連(ウェビナーツール)
注目はやはり「オンラインビジネス」。アメリカはカリフォルニア州・サンノゼに本社を構える『ZOOM』はリモートワークには欠かせないウェビナー(WebとSeminarを組み合わせた造語)ツールとして大躍進。「コロナ需要」とも言われダウンロード数は平時の25万増を記録し話題になっています。日本ではビジネス面以外でも「ZOOM飲み」なる言葉が早々に生まれ、プライベートの「オンライン飲み会ツール」としても機能する意外な一面も。
そのZOOMの好況を察知し、すかさずGoogle社がセキュリティ度の高いオンラインミーティングツール『Google Meet』をリリースするなど覇権争いもすでに始まっています。
そして先ほど、衰退産業の候補に「スポーツジム業」を入れましたが、反対に「自宅でやるオンラインフィットネス」として、アメリカでは今『Peloton(ペロトン)』はブームの兆し。
『Peloton』はちょうどコロナの猛威が襲ってきた2月から3月にかけてユーザーは40万人も増加し、現在は70万人を突破。入会ユーザー100万人も目の前まで来ています。これは室内で使用するエクササイズバイクを購入し、あとは動画でインストラクターのレッスンを視聴しながら運動するサービスで株価も急上昇(2020年4月18日現在)。こちらの動画はそのコマーシャルです。
また、もともとEスポーツなどのブームの予兆で堅調だったゲーム産業にも「引きこもり需要」は見込まれ、さらなる躍進が期待されています。コロナがさらに売上を後押ししたかたち。
そしてニュースでご存知の方も多い、スーパーでの買いだめ・パニックバイイング、巣ごもり消費による「スーパー/コンビニエンス/ドラッグストア」は急伸。しかしこれはあくまで流通があってのこと。品物がないことには売ることはできないため、長期的な活況とは言い難い状況です。
また、限定的なエリアのニュースではあるものの、意外なものとしてアメリカでは治安悪化を見越しての護身用の「銃」を買う人がいたり、どうせ外出禁止ならとオーストラリアでは自宅修繕のため「ペンキ」を買い込む層も出てくるなど、各国で思わぬジャンルの消費が伸びるケースも。
▶関連記事『コロナウイルスをきっかけに「リモートワーク・在宅勤務」の時代へ。』
オンラインビジネス産業の強さに再注目
こう見ると、固定費もかからず、起業のハードルが低いと言われるオンラインビジネスですが、今回の世界的コロナウイルスの騒動で再び注目を浴びていることがわかります。
プログラミングを操り、デザインをし、WEB上にサイトを作りあげてビジネスを開始する。英語も操れれば世界的なビジネスをパソコンひとつで運営できる。
デフォルメして言えば、
■ 高い家賃もかからない、
■ 天災が起きても店の修理もいらない、
■ 従業員もいらない、
■ 24時間365日開店できる、
などなど、オンラインビジネスの強さはあげればキリがありません。あわよくば、
■ 自動化できれば不労所得にもなる、
という利点も。完全自動化は難しいとしても、定期的なメンテナンスやアップデートで運用できればそれは大きな財産にもなります。
同時にブログやYouTubeのみのオンラインビジネス集中一本化は、Googleのアルゴリズムにその検索結果や露出を左右されるゆえ、自分で事業をコントロールできないリスクをはらむのが悩みどころ。オンライン事業は決して甘くなく「情」も通用しない「WEBマーケティング」の世界。競争力の高いコンテンツと訴求力の高いUSP(ユニーク・セリング・プロポジション:他社にない強み)が求められることは忘れてはいけません。
「オフ」ラインビジネスがこれだけのダメージを喰らっているなかで、もし失敗しても多額の借金を背負うリスクも低いオンラインビジネス。
「オン」ラインビジネスはこれからますます魅力的であり、同時に競争が著しく激しいフィールドにもなっていくことでしょう。
もちろんオンラインの一極集中を横目に、あえてのオフライン特化という手法もビジネス戦略としては決してなしではありません。ここがまた、ビジネスの面白いところでもあります。
▶関連記事『会社に頼らず生きていく「9つのスキル」を身につけよう。』
ビジネスのセオリーと現実
事業打撃を受けた会社には、何が足りなかったのか?
ビジネスのセオリーで言えば、ひとつのモデルに集中するでなく多角化でリスクヘッジを図るというのがあります。
しかし、ビジネスとはなかなか二匹目のドジョウは捕まえにくく、もし多角化できても、どのサービスも同じような売上を出すのは困難を極める。
例えば「飲食業」でレストランがうまくいった場合。
同じようなノウハウで挑戦できる居酒屋を展開したとしても、それは「同じ飲食業での多角化」であり今回のようなコロナのような有事では同時にダメージを喰らいます。かといって、飲食業と全く異なるゲーム産業を両立しているような会社は少なく、ひとつの会社でやれることは限られる現実が立ちはだかる。
世界を相手に物流ビジネスや通販ビジネスをやっていた場合でも。各国に同じ危機が訪れるリスクはほぼないと思われていたため、多角化としてはこれまでは「あり」だったとも言えます。しかしまさかのこのコロナウイルスは「世界同時多発」であり、このインパクトと長期化は誰も予想できないものでした。
言うなれば今回の世界的なコロナショックは、グローバリズムゆえに発生したグローバリズム恐慌。
今回の出来事は間違いなく歴史に刻まれる1ページであり、これからのビジネスのあり方を変えるに十分な出来事となっています。
コロナ後の世界はどうなる?
では、コロナウイルス後の世界はどのようになっているのでしょうか。
予想されるのは、働き方や人生のあり方を変える人が出てくること。
下記に「3パターン」で、予想される動きを書いてみます。
①働き方・学び方は?
生活習慣や行動習慣は急激に全てが変わるわけではないので、急激でなく、だんだん変わると思われます。
今後またコロナのようなトラブルが突発しても対応できるように、
■ リモートワーク
■ リモートスタディ
が推進され、人々は「以前より少しIT慣れ」「ITへの理解」をしてくると思われます。オンラインでの仕事や学習に否定的だった人たちや会社の考えが今回の事案でやっと変わり、ビジネスでも勉強でも新しい波=オンライン化が加速するでしょう。
▶関連記事『天災やウイルスのロックダウン時でも稼げる「ITスキルのかけ算」とは?』
②企業は?ビジネスは?
企業は、旅行業やオフラインの娯楽産業からは完全撤退するケースも考えられます。固定費がかかるオフラインビジネスは衰退し、ますますオンラインに注力する流れとなる。そこに現在加速している、
■ AI(人工知能)産業
■ VR(仮想現実)産業
■ AR(拡張現実)産業
が当然融合する。
将来はリアルのディズニーランドさえもなくなり、部屋でVRゴーグルをつけてディズニーランドで遊ぶ時代が来るかもしれません。すでにその流れは「映画館に行かずNETFLIX」という現在からも想像できます。
■ 非対面産業
■ 非濃厚接触
■ 人々のオタク化
の加速です。
③生き方は? お金は?
人の生き方、考え方も変わるでしょう。
コロナの真っ只中に満員電車で通勤を強いられていた人のなかには、会社に言われるがまま、仕事にあらがえない人生を見つめ直し、
■ 起業の計画・準備
■ フリーランスへの転身
■ 海外移住
■ 地方移住
といった大きな勝負・決断に出る人もいるかもしれません。「いやいや、コロナ不況くるのに、起業はないでしょ」と思う方もいるかもしれませんが、ここで言う起業やフリーランスというのは「コロナ後1〜2年置いて」のイメージです。すぐには無理でも「好きなことを仕事にしたい」「人生の質を上げよう」という方向に気持ちがシフトする・準備に入るイメージ。コロナ禍においても、会社の指示通り・上司の希望通り出勤し続けることに違和感を持った人は「なりたい自分」を求め次の人生への情報収集をすると思われます。
また、手堅いところで、
■ 副業のための勉強
■ サイドビジネスの開始
こういった「スキル獲得」の動き。プログラミングに代表されるスキルの本格的な習得も出てくると思われます。
「お金」にフォーカスすれば、
■ 節約・貯金
■ 資産運用
このような資産形成への第一歩を始める人も出てくるはず。「有事に備えて散財しない」という風潮になることは、コロナ後の大不況がささやかれる一因ともなっています。
そして「会社員」にフォーカスすれば、
「会社員だからこそコロナでも余裕で生きながらえた」「起業なんてリスクはもってのほか」と実感した人もいるため、
■ 徹底的なキャリア志向
■ 出世・昇給・転職に敏感
といった「勤め人を極める」「スーパーサラリーマンを目指す」「企業幹部を狙う」という思考になってくると思われます。
ミニマリストは「無駄がないからコロナ後にいつでも移動できる」と言い、蓄えを大切にする人は「蓄えがあるからまたコロナが来ても安泰だ」と言うかもしれません。
いずれにしろ生き方・働き方の多様化は進み、枝分かれしていく。コロナ以前もあったこの動きですが、今回の一件でより鮮明に顕在化してくると思われます。
時間差で出てくる「それぞれの生き方」
生き方の多様化、思考の多様化。バラバラな個々の人生プラン。
これらの動きはコロナ終息後、少しづつ出てくると予想されます。
さすがにたった今は生きるのに必死であり、すぐ行動できる余裕がない人も多いはず。しかし自宅謹慎の間に久々にじっくり人生を考える人や、自営業の方は必死の資金繰り対策を行うなど、多くの方々の人生が想定外にものすごいスピードで変化していることは確かです。
すこし時間を経て、
「実はコロナのとき、いろいろ考えが変わった」
「やっと行動しようという気になった」
「死ぬときに後悔したくない」
「いろいろ備えることにした」
「自分の無力さを知った」
「人生は短い」
「勉強するわ」
「貯金する」
こんな方々が、それぞれの新しい価値観の元、新しいライフスタイルを歩み始めると考えられます。そしてこれは日本だけでなく、世界中で。
歴史の転換は突然やってくる
過去、天災や事故、あるいはスマートフォンの登場など、歴史の転換は突然やってきました。
「トレンドの移り変わり」というような生易しいものでなく、先読み出来ない天変地異が急転直下でやってくる。
コロナ後の世界に待っている「ニューノーマル」。
ここにどう個人として、企業として立ち向かうかが問われています。
ネガティブなニュースが日々飛び交うなかでどう冷静に判断し、次の自分を作り上げていくか。どう会社を運営していくのか。
見えないコロナウイルスは過去数十年を振り返っても、最大の敵になりうる様相を呈している。
個人は今そして今後の人生プラン、会社は喫緊の経営手腕が問われています。
著者:アクトハウス代表 清宮 雄
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