「フィリピンのマクドナルド」のマーケティング。ジョリビーって何?

フィリピンのマクドナルド

フィリピンのマクドナルドってどんな感じ?

かつてファーストフードの覇者と崇められたマクドナルドの失速は、よくネット上で話題になっています。最近はまた持ち直した、という話題も耳にします。どちらの噂も出るのは、王者ならではというところでしょうか。

日本でもさまざまなマーケティング/ブランディング戦略を打ち続けているマクドナルドですが、筆者の住む「フィリピン」のセブ島ではさらに大胆な戦略が取られています。

そのフィリピン・マクドナルドの人気メニューを見てみましょう。

Chicken

フィリピンのマクドナルドは安定の支持率

フライドチキンの後ろに見えるのは「ライス」です。ここにハンバーガーの面影はありません。

そしてフィリピン・マクドナルドはこの大胆な方法で、しっかりと国民の胃袋をつかみつつあるのです。

フィリピン人の年間お米消費量

我々日本人は、自分たちのことを「お寿司/お茶漬け/おにぎり/炊き込みご飯」など、お米を好む民族の代表格と考えているかもしれません。しかし広い世界、冷静に考えれば中国、韓国、インドやインドネシア、マレーシアだってお米の消費国です。想像以上にお米大国は世界に点在します。

そして各国のなかにおいても「ライス帝国」として存在するのが「フィリピン」。2015年にトリップアドバイザーが発表した「世界で最もお米を食べる国ランキング」では『7位』。ちなみ同ランキングにおいて、日本は50位でした。

ざっと、1人あたりの年間お米消費量を見ると、

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日本人:約70kg/年
フィリピン人:約145kg/年
================

単純計算でも日本人の2倍以上の米を消費しているのがフィリピン人です。

そして、マクドナルドがライスに焦点をしぼってマーケティングを繰り広げているのは、もうひとつ理由があります。

それは「赤いミツバチ」。こやつが目の敵なのです。

ジョリビー

赤いミツバチ『ジョリビー』(Jolibee)

マクドナルドのみならず、ケンタッキーやピザハット、ダンキンドーナツにクリスピークリームといった錚々たる競合がいつまでたってもその地位をフィリピンで築けない理由。

それは赤い脅威、このミツバチにあります。

「ジョリビー」(Jolibee)。

このジョリビーグループ全体の年間売上高は約3,200億円。

日本のお菓子会社「グリコ」の2015年・年間売上高が同じく3,200億円、ライオンが約3,700億円と考えれば、このジョリビーがどれだけの知名度と拡大力をもっているかが何となくわかるでしょうか。

このジョリビーのやり方は圧倒的に正しくストレート。味は日本人が食べてもアメリカ人が食べても、中国人が食べても決してオールマイティに口に合うとは言いがたい、なかなか個性的な味となっています。そして、それでいいのです。

ジョリビーは商品販売において、フィリピン国民だけが好む、

●ライス
●バナナケチャップの甘い味付け
●スパゲティ
●フライドチキン
●パイナップルジュース
●メリエンダ(おやつ)

をメニューの中心に据え、定食もハンバーガーもあるファーストフードとして、その規模を加速度的に拡大してきました。さらに一企業としても、外資系ピザチェーンの「グリニッジ」(greenwich)、中華ファーストフードの「チョウキン」(Chowking)も買収、かのバーガーキングのフィリピンでの販売権さえも握っており、その規模は拡大の一途となっています。

ジョリビーという帝国

ジョリビーという一大帝国

グループ全体のフィリピン国内店舗数は約2,400店。ジョリビーはそのなかの約900店をも占めています。ちなみにマクドナルドの出店数はジョリビーの1/3という状況。

ジョリビーの支持率

ジョリビーの社長はフィリピン人ではない

他国で成功しているビックマックやマックシェイクではフィリピン国民の心はガッチリとまではつかめません。この国では「ライスなくして食事にあらず」なのです。

その証拠にフィリピンでは、町のオシャレなカフェ、ホテルのバー、コンビニ、パン屋さんに至るまで、とにかく怒涛の「ライスづくし」。もしどこかでパーティを開催し、そこにライスがないようなものなら、来訪客は不満タラタラです。それほどこの国では「白米」が何よりも大切。こじゃれた前菜でもなんでも、そこにライスがない限り、話は始まりません。そんな国民性・風土に正面から入っていったキャッチーなファーストフードが「ジョリビー」でした。

なおジョリビーの社長はフィリピン人かと思いきや、華僑(中国本土から海外に移住した中国人およびその子孫)のトニー・タン。32の国際版を持つ世界的経済誌『Forbes』世界長者番付の常連です。外国人でありながら、1975年にアイスクリーム屋として事業を開始、少しづつ現在のスタイルを形成していった、まさに叩き上げの経営者。

マスコット戦略も大成功

またジョリビーはマスコット戦略もうまいです。最近ではフィリピンのユニクロから「フィリピン限定」のTシャツをリリースするなど、あの手この手で、抜け目ないマーケティングを息つくヒマなく投下しています。

世界のマクドナルドがハンバーガーを二番手にしてまで、ライスメニューを押して生き残りをかけている理由がここにあります。やることなすこと、フィリピンではジョリビーがマクドナルドやKFCを凌駕しているのです。

フィリピンのユニクロからジョリビーTシャツ

フィリピンではマクドナルドは挑戦者

ジョリビーの絶対王政に、世界的ブランドのマクドナルドは、なりふりかまわず勝負を挑んでいます。フィリピンでは、マクドナルドは王者でなく挑戦者です。

ライスをメインメニューに据え、その商品ルックスたるやジョリビーと何も変わらないとも言えます。

フィリピンのマクドナルドでは、まずレジカウンターの上にあるメニューボードはライス+チキンの「チキン・マクド」のセットが最も見えやすく大きな写真で掲げられているのです。当然、店内でもビッグマックより「チキン・マクド」セットの購入者が多くを占めます。

チキン・マクド

「ご当地メニュー」というユーモア路線ではない

ライスを大胆にメインメニューに据えたマクドナルドの戦略は当たっています。むしろそのブレない追随に、ジョリビーも少しくらいは気にしているかもしれません。

そしてマクドナルドのこの「フィリピンナイズド」は、たまに話題になる「世界ご当地マックメニュー」とは戦略が異なります。

例えば、宗教上の理由で牛肉を食べないインド。そこでは鶏肉版ビッグマック「マハラジャ・マック」があります。イギリスやカナダでは「マックロブスター」、南アフリカではひき肉のコフタを使った「マック・アラビア」、香港では「将軍バーガー」なるものも。

マクドナルドのご当地メニュー

しかしそれらは、あくまで話題性や観光客向けに軸が置かれています。つまり、その土地の国民への恒常的な薄利多売というスタイルの要の商品ではないのです。

そういう見方からすると、フィリピンの「チキン・マクド」は、世界のご当地マックとは趣が異なります。マーケティング本来が持つ「勝つための戦略」「生き残りを賭けた戦い」というエゲつない施策がムキ出しになっている、まさに売上の軸をなす主力商品と言えるでしょう。

ハンバーガーでもなんでもない「チキンとライス」の定食は、ジョリビーに対抗する本気の主力商品なのです。

jlbmcd

ビジネスの仁義なき戦い

マクドナルドのやり方を「オリジナリティがない」「プライドはないのか」「そのままやんけ」と非難する声もあるかもしれません。あるいは「ファーストフード同士の戦いなんてどうでもいい」という見方もあるでしょう。

しかし世界的なブランドが、フィリピンのローカルブランドに勝てないこと、そして勝つためになりふりかまわず「ライス」をメインメニューに投入してくること、これは紛れも無くビジネスの仁義なき戦いとして見ておくのは勉強になると思います。

ここにはマーケティングの要素が凝縮されているからです。

ペルソナとストラテジー

マーケティングの本やお勉強でたびたび登場する、

●ペルソナ
●ターゲティング
●ブランディング
●コンペチタ

といった、購入客像の詳細な設定と売るための商品戦略。継続して売り続けるためのブランドイメージの浸透。経営・広報・ストラテジー。もっと砕いて言えば、

●どんな人たちに
●どんな場所で
●何を
●いくらで
●どれくらいの周期で
●売り続けるのか

以上の設定が明確に見えてきます。

顧客の創造とリピート化。利益のサイクルを構築するための戦略です。

このサイクルを作りだすことが「マーケティング」であり、すなわち食いつなぐ基本であります。

マクドナルドとジョリビー

自分が王者でも挑戦者になれるか

もしあなたが起業する場合。
誰かのビジネスを手伝う場合。
企業のコンサルに入る場合。
あるいは、破綻しかけた会社を再生する場合。

このフィリピンのマクドナルドのような、プライドを捨てたような英断が打てるでしょうか。

「やはり、昔ながらの原点に帰り…」

「とりあえずは現状を少しづつ回復しつつ…」

といった「っぽく見える活動」にとどまるか。つまり、何もしないか。

mark

ビジネスの現場は待ったナシ

マーケティング戦略を投下する状況はひとつとして同じものはありません。

ビジネスの現場においては、同じ方法・戦略が成功することはないため、過去の成功テンプレートを持ってくるのはあまりにも安直です。しかし、多くの広報戦略が「わりと無難な折衷案」に着地するにとどまるため、新しいファン層を獲得できず、古いファンには飽きられ、やがて消え去っていく現状があることも確かなのです。

会社とビジネスは、カメレオンのようにその姿を変えていくべき時代。時代は高速であり、ユーザーの心のうつろいはさらに速くなっています。

ビジネスの現場はスピード

フィリピンのマクドナルドが健闘できている理由

ナショナルブランドがバタバタとつぶれていく昨今、もはや知名度だけでは集客できず、また逆に言えば「やり方ひとつ」「工夫と変化」で勝ち上がることができる時代でもあります。

世界的な劣勢のなか、フィリピンのマクドナルドが健闘できている勝因は、お客さんを主役に据えまくったマーケティングの賜物と言えるでしょう。ハンバーガーを主力にせず「ライス」を中心においたフィリピンのマクドナルド。このやり方は限りなく冷静とも言え、国民には自然に受け入れられているように見えます。

今後もフィリピンの王者に挑む、フィリピン以外では王者のマクドナルドのマーケティングに注目です。

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著者:清宮 雄「IT×英語×ビジネス留学」のアクトハウス代表。

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