フィリピンの超有望スタートアップ企業3選。新たな次の波が来るか?
日本顔負け? フィリピン発スタートアップ企業の勢い
巨大金融機関であるHSBCは2014年にレポート上でこう発表し、これが一躍大きな話題となったフィリピン。
現在もフィリピンの経済成長は着々と進んでおり、その成長率は2012年以降は毎年6%を超える水準だ。
こう見ると、日本は経済成長率において勢いのある新興国にどんどんと差をつけられているようにも見える。だが、その規模はまだまだ小さく、特にフィリピンはGDPベースで見ると日本の足元にも及んでいない。しかし、だからこそフィリピンにはたくさんの潜在的な可能性があり、そして勢いのあるスタートアップ企業が活躍を続けているのだ。
近隣国ではベトナム、タイ、マレーシアがどんどん勢いを見せる中、2017年に入りフィリピンでもその成長速度を加速してきた。
今回は、そんなフィリピンで勢いを増している注目のスタートアップ企業を「3社」紹介していこう。
①お洒落なプレハブ住宅を展開する「Revolution Precrafted」
プレハブ住宅を販売するスタートアップ「Revolution Precrafted」はフィリピンを拠点とし、デザイン性優れたプレハブ住宅を安価にグローバル展開している。
このRevolution Precrafted社のCEOであるRobbie Antonio(ロビー・アントニオ)氏の父であるJose Antonio氏はフィリピンの富豪ランキングトップ40にランクインしており、Robbie氏はそんなフィリピン大富豪の御曹司だ。
同社が販売するプレハブ住宅は1,200万円という値段でから購入でき、これを世界各国へ輸出しているのだが、このプレハブ住宅の販売において既存の「住宅」という概念を壊している。
同社はお金持ちだけの高級感溢れる住宅購入という概念を壊す為に「住宅デザインの民主化」を心掛けているのだ。
今までは社会の上流しか手に入れることが出来なかったようなラグジュアリーで贅沢な空間を民主化し、それをプレハブ住宅でデザインすることによって誰にでも安価に提供することができるようにしたのだ。
このプレハブ住宅の建築には有名な建築家やデザイナーが携わっており、建築家やデザイナー側もプレハブ住宅を通じてその「腕前」を披露することができるというメリットを持ち合わせている。
そして既存の不動産業とは違い注文後90日以内に家を作り顧客の元へ住居を届けるというスピード感もプレハブ住宅ならではだ。なお、今後は住宅のみならず、プレハブ型のレストランも展開するとされている。
同社はサービスを展開後1ヶ月以内に黒字となり現在に至るまでに100億円以上の受注額を記録した。
その企業評価額は昨年時点で2億ドルを越え、注目のスタートアップとなったのだ。
②オフィスをシェアリングする「FlySpaces」
(引用:FlySpaces)
2015年に設立された「FlySpaces」は東南アジアで多国籍企業や中小企業、ノマドワーカーを対象にオフィスやコワーキングスペースのシェアを提供するスタートアップ企業だ。
同社はフィリピンの大手不動産会社からも出資を受けている期待のスタートアップであり、コワーキングスペース界の「Airbnb」を目指す。
不動産オーナーが所有している部屋やオフィスも、誰にも知られず、誰にも使用されなければ収益を得られず、ただ不動産の値上がりを待つしかない。
そこでこのFlySpacesは不動産の貸し手と借り手をマッチングさせることでオーナーのマネタイズ化を手助けし、借り手側も安価にオフィスを借りることが出来るように設計したのだ。
上の写真はセブ島でのオフィスレンタルの検索結果だが、いずれも安価に借りることが可能であり訪問の予約やオフィスについてのお問い合わせも同プラットフォーム上から行うことができる。
同社で借りることができるオフィスは1,000以上存在しており、フィリピン以外にも香港、シンガポール、マレーシア、インドネシアなど、アジア圏を中心に多数展開している。
このようなシェアリングエコノミー分野の企業ではUberが680億ドル、Airbnbが約300億ドルの評価額をつけているが、FlySpacesがそれらに匹敵する存在となり得るかが楽しみだ。
③銀行口座が無くても価値交換ができる「Coins.ph」
(引用:Coins.ph)
そして、フィリピンで今最も注目を集めているのがFinTech(金融のFinanceと情報技術のTechnologyを組み合わせた造語)の分野だ。
フィリピンでは出稼ぎ労働者による送金額が国内GDPの1割を占める国である為に、国際送金という分野では大きなマーケットとなっているのである。
国際送金では送金時に複数の中継銀行を経由する場合もあり多額の手数料と時間コストを取られてしまう。なお、フィリピン人の銀行口座保有率はおよそ30%と日本とは相対的に低く、思うように金融サービスを活用出来ない人が多くいる。
そのような現状を解決する為に創られたのがフィリピンのFinTechスタートアップ「Coins.ph」である。この「Coin.ph」はブロックチェーン技術を用いて銀行口座を持たなくてもモバイルベースであらゆる支払いができるプラットフォームを提供する。
そもそもフィリピンではモバイル市場が急速に成長しており、Facebookのアカウントの保有率はアジアでも最大級だ。日本人以上にFacebookを日常的に使用していると言っていいだろう。
同社はこのようなモバイルインフラを活用して、お金のやり取りを銀行口座無しでモバイル上で全て完結できるプラットフォームを目指しており、その登録ユーザーは既に400万人以上にも及ぶ。
更に同社ではビットコインでの支払いや送金、売買も可能だ。
仮想通貨は現在はまだ流動性が少ない通貨もあり価格の変動が激しいが、国際送金においては両替をせず、手数料を比較的安価に且つ送金速度を上げられるベネフィットがある。
特にフィリピンでは上述した通り出稼ぎによる国際送金は国内GDPの1割にも及び、その規模はおよそ3兆円にも及ぶ。
このように、国際送金に大きな需要があるフィリピンでは抱えられている問題も金融インフラも日本とはまるで違っており、「投機で儲けたい」「国際送金を安くしたい」といったように、各国の本音は違うものなのだろう。
今後の仮想通貨市場が健全な市場へと発展することで同時にCoins.phも爆発的な伸びを魅せるかもしれない。
フィリピンでユニコーン企業は誕生するか?
以上がフィリピンで注目のスタートアップ企業であったが、このようにフィリピンから世界へ、そしてフィリピン初のユニコーン企業へ成り上がろうとどの企業も切磋琢磨している。
ユニコーン企業とは企業の評価額が10億ドルを超える非上場のスタートアップ企業のことだが、まだフィリピンではユニコーン企業が誕生していない。
日本でも最近になって「メルカリ」が10億ドル以上の評価額を付けるようになったが、世界的に見るとその数字もインパクトに欠ける数字となっており、最近の中国では企業価値100億ドルを超えるユニコーンが何社も存在している。
このように世界ではどんどんと魅力的な企業が経済を押し上げており、日本経済が安泰だとも言い難くなってしまった。
そんな中、日本のメルカリを超えて新たに活躍する「フィリピン発」のユニコーン企業が登場する日は近いかもしれない。
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著者:Kenta Fujii
アクトハウス卒業生。大手金融機関に新卒で入社するも11ヶ月で退職。その後はフリーランスのライターとして独立し、新規立ち上げのメディアに複数携わりながらキャリアを積んでいる。▶ セブ島のIT留学「アクトハウス」を詳しく見る