フィリピンはIT大国に!? 今後期待のIT産業とその潜在能力。
IT分野で活躍をみせるフィリピン
近年東南アジアの経済成長は拡大しており、特にその中の一国であるフィリピンは年6%を超える経済成長率をみせている。
そこにはあらゆる潜在能力と可能性があり、製造業の分野に関しても依然として大きな成長率を誇るフィリピンだが、同時に非製造業である「IT分野」の活躍が目立っている。
特に、今話題のIoT、FinTechの分野はフィリピンでも注目を浴びているのだ。現在はGDPの5割強を占めるようになったフィリピンの第3次産業だが、今後のフィリピンのIT産業は如何なるものだろうか。
では以下より、今後成長に期待したいフィリピン注目のIT産業をピックアップしていく。
オフショア開発
まず、著しいフィリピンの経済成長を後押ししているのがオフショア開発だ。
オフショア開発とは、システム開発等の業務を人件費の安い海外の企業へ委託することである。
フィリピン国内の労働環境は、1億人を超える人口の多さと平均年齢23歳という若さから、若い働き手が多く、中々賃料が上がり難い環境となっている。このようなインフラは現地人にとってはあまり雇用環境が良いとは言えず、失業率も高く海外へ出稼ぎに出てしまう人が多い。
しかし、現地で事業展開する雇用側は安価なコストで労働者を雇うことができるというメリットがあるのだ。
このように、人件費を安価に抑える為の外部委託産業がフィリピンでは発展しており、最近では日本の富士通がセブ島にオフショア開発の為の拠点を新設した。
さて、オフショア開発のメリットは海外企業が低賃金で流暢な英語を話す人材を使用することができる点であり、それによって人件費の高い自国の人材を使用せずに開発ができるのだ。
しかしデメリットもあり、低賃金とはいってもその生産性やクリエイティビティの点が相対的に不十分である点だ。
自国の人材よりも工数が掛かりクオリティも落ちてしまうのでは、安価に雇う意味が無くなってしまい、それに英語でしっかりとコミュニケーションが取れなければ良いものを生み出すことはできない。なので、安価なコストが全てではないという点は抑えておかなければならない。
なお、このオフショア開発は安く人材を使用できる点が魅力なのだが、フィリピンが経済成長するに連れてコストは上がってくるだろう。現地の人にとっても、賃金相場の低いフィリピンで自分の市場価値を高めるチャンスがあるからだ。
そして、以前筆者が述べた「グローバリゼーション」が働くことよって同一賃金同一労働が進めば、人的コストは世界中で効率化し、このような海外への委託の魅力は減少していくと考えられる。オフショア開発は今後も注目の産業である反面、その経済成長と共に賃金は世界的に効率化していくだろう。
そのような状況において、グローバリゼーションを生き抜く為には安い開発者に代替えされない、クリエイティブかつハイクオリティな付加価値がついた人材にならなければならないだろう。
スマートフォン市場
フィリピンではスマートフォン市場も強く成長を遂げている。
実際にフィリピンへ訪れると、そこら中でスマートフォンを片手にFacebookを見たり、ゲームをしたり動画を見て笑っている人が多く、特にゲームアプリは飲食店の店員が業務中にやっていることもあるくらいだ。
下記図の通り、フィリピンのスマートフォンユーザーは年々増加しており、2022年頃にはおよそ4,600万人となる見通しである。
(引用:statista)
Facebookアカウント普及率
なお、フィリピンはアジア屈指のFacebookアカウント普及率を魅せており、下記のグラフはフィリピンにおけるFacebookのユーザー数の推移を表している。
(引用:statista)
以上のスマートフォン市場、そしてFacebookアカウント普及率の2図を見ると分かるが、スマートフォンのユーザー数とFacebookのユーザー数はほぼ一致しており、スマートフォンを持つ国民であればほぼ全員がFacebookを活用していることになる。
このFacebook利用率を国民全体ベースで見ると現在およそ30%を超える水準であり、実名ネットワークの濃いフィリピンの国民性を物語っている。
このようにフィリピン人の生活の一部となっているスマートフォンやSNSによるネットワーク効果は高く、テキスト(SMS)の使用率はフィリピンがかなり高くなっているのだ。その環境から、スマートフォンにおけるゲーム市場や動画市場は今後フィリピンで大きく伸びるのではないかと筆者は考えている。
東京の地下鉄ではサラリーマンが常に早歩きして行動しているのに比べ、フィリピン人は時間の感覚が相対的に遅く、だらだらとスマートフォンを眺める時間が多く見受けられる。
だが一方で、ゲームや動画といったエンタメコンテンツの消費や拡散力は強いのではないだろか。それも英語が堪能な国民性が故に、世界中のあらゆるゲームや動画を見たり、共有したりすることができるからだ。
今後も増えるであろうフィリピンでのスマートフォンユーザーは、その密度の濃いネットワークを使って世界へと拡散していく可能性が高く、フィリピンマーケットの潜在能力は高いだろう。
今話題のFinTech産業
そして、今最も話題となっているのが金融と情報技術を組み合わせた「FinTech」である。
元々、私達が使用している「お金」とは、世界のお金のおよそ90%が現金ではなく数字のみのデータで移動している。なので、本質的にお金は「物理的な紙幣」だけではないと言えるはずだ。よってこのお金もテクノロジーを駆使すればインターネットのように速く、安く移動させられる事は可能である。
フィリピンではクレジットカードの普及率がグローバル環境の中ではまだ低いが、スマホを介した決済を普及させる事で、今後「キャッシュレス」が大きく伸びる可能性を秘めているだろう。
それはフィリピン人の銀行口座の保有率がおよそ30%であるものの、スマートフォンの普及率は上述した通りそこまで低い水準ではない為だ。銀行口座が無くても、スマートフォンが一つでミリ単位でお金のやり取りができるようになれば、フィリピンの経済も更に勢いづくはずだ。
eコマース(EC)市場
フィリピンでは上述したスマートフォンや決済のデジタル化の普及が強まる環境から、同時にeコマース市場も発展の可能性も持っている。
ECのマーケットプレイスはアジアで全体的に成長していると言えるが、このフィリピンでも高い成長率を魅せている。
まずはその市場環境だが、下記図の通り2020年にはおよそ6,000億円の規模へと成長する予測が立てられている。
(引用:JETRO)
図を見ると規模自体は他のアジア諸国と比べると劣るが、その成長率はインドネシアやマレーシアに次いで高く予想されている。
現在フィリピンの主要ECサイトは、大手のAmazonをはじめ、東南アジアのアマゾンと呼ばれる「LAZADA」や、ヤフオクに似たオークションサイト「OLX」などとなっている。
フィリピン人の特徴として、給料を稼ぐとそれを全て使ってしまうという消費傾向があるのだが、その購買行動がEC市場にとってのメリットにもなり、それぞれ興味のある商品がインターネットを利用して積極的に購入されるようになるのではないだろうか。
なお、上述したがフィリピンではSNSなどを利用したネットワークが強く、これによってSNSとeコマースを利用して商品を販売する「ソーシャルコマース」の市場拡大も期待できるだろう。
フィリピン人のネット上での仲間意識から、「良い商品」が拡散される可能性が高いからだ。
さいごに
以上がフィリピン注目のIT産業であったが、課題もまだまだ残っている。
ネット環境の弱さもまだまだ目立ち、eコマースに関しては物流インフラも十分とは言えないだろう。だが、課題がたくさんあるからこそ潜在能力にも期待できる。
スマートフォンというプラットフォームから、コンテンツ、金融、ECへと大きな広がりを魅せるであろう期待だ。
それらの市場は、筆者も想像ができない程の可能性があると感じている。
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著者:Kenta Fujii
アクトハウス卒業生。大手金融機関に新卒で入社するも11ヶ月で退職。その後はフリーランスのライターとして独立し、新規立ち上げのメディアに複数携わりながらキャリアを積んでいる。▶ セブ島のIT留学「アクトハウス」を詳しく見る