2020年度、小学校の義務教育科目にプログラミングが導入?
「新学習指導要領」改訂のポイント
2017年3月に発表された新学習指導要領には、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化される、という内容が盛り込まれました。
このニュースは、プログラミング教育がついに小学校教育に導入されると大々的にメディア報じられましたし、賛否を含め大きな反響を巻き起こしました。
▶新学習指導要領の改訂のポイントから一部引用します。
◎コンピュータ等を活用した学習活動の充実(各教科等)
◎コンピュータでの文字入力等の習得、プログラミング的思考の育成(小:総則、各教科等(算数、理科、総合的な学習の時間など))
また、いわゆる「グローバル人材」の育成を大目標とし、小学校教育においても英語を教科として取り扱うことがそれ以前から決まっていました。ですから、2020年度から実施される予定の新学習指導要領は、このようになります。
「プログラミングと英語が、どちらも教科として小学校教育の現場で取り上げられる」
次世代を担う小学生が、グローバルで通じるスキルの基礎教育を義務許育として受けられるというのは、とても大きな変革といえるでしょう。
小学校における、IT教育の現実
ここで少し、現時点の小学校教育におけるITの扱いをご紹介します。
突然、私事恐縮ではございますが・・・・実例を挙げてご説明したほうがわかりやすいかと思いますので、筆者の息子の状況でご説明しようかと存じます。
息子はいま小学校3年生。東京都23区の区立小学校に通っています。学校には「ITルーム」があり、某国産メーカーのノートパソコン(Windows 7)が置いてあるそうです。セキュリティ上の問題なのか、インターネットにはつながっていない、とのこと。
そのパソコンを使って、絵を書いたり、チラシのようなものを作ったり、と、街角のパソコン教室のようなことをやっているようです。
多くのご家庭でも似たような状況かと思いますが、筆者の息子はおさがりのiPhoneを幼稚園年少期から触っていました。
※空き時間にスマホをいじる筆者の息子。
幼稚園年中の夏くらいになると、親とメッセージのやり取りをしたり、ブラウザで動画を探して閲覧したり、アプリでひらがなや数字の書き方を学習したりと、大人とほぼ同様に使いこなせるようになっていました。
※息子から「早く帰ってこい」と怒られる筆者(笑)
親も知らなかった機能を見つけて、興奮気味に「こんなことできるよ!」と教えてくれたこともありました。IT業界で仕事をしている親の知らない機能を見つけてくるとは・・・。親バカのように聞こえてしまったら恐縮ですが、子どもの発想力となんでも触って覚えていく姿に、純粋に畏敬の念を持ったものです。
・・・などと息子を記事に登場させていたら、息子から連絡が。どうやら「ホームシェアリングがONにならない」と困った様子。こうやって、すぐにデジタルデバイスを触るクセも、デジタル・ネイティブならではなんでしょうか。
※親としては、まず宿題をやってほしいんですけどね。。。
そういうわけで、筆者の息子はまさにデジタル・ネイティブの世代になるわけですが、そんな息子が学校のIT教育について発した言葉が印象的でした。
👦「学校のパソコンの授業、カンタンだよ!」
👦「みんな先生よりできるよ!」
こんなことを明るく言い切ったのです。
先生すみません・・・。
もはや、デジタル・ネイティブにとっては、パソコンを使った授業は遊んでいるのと同じ、学習するという畏まったものではないのでしょう。遊んでるのに、大人たちから勉強してるって思ってくれてラッキー、くらいに本人たちは思っているのでしょう。
遊びながら楽しく身につける。勉強=苦行だと考えがちな子どもたちのことを考えれば、楽しく勉強できていることを手放しに喜んでもいいようにも思えますが・・・。
文部科学省の方針と不安
新学習指導要領を読み取ると
2020年度施行の新学習指導要領、よく読んでみると、文部科学省の方針はプログラマーの育成ではないのです。
あくまでも「プログラミング的思考」と表現し、プログラミングを小学校教育で取り扱うことで、プログラミングに対する資質や能力といった素養を身に着けさせるというあたりが狙いのようです。
現場の不安
こうなってくると、デジタル・ネイティブたちを指導する教師たちの大変さが目に浮かびます。
小学校では、ただでさえ全教科を担任の教師がたった一人で教えているわけですから、日々の授業の準備だけでも膨大なはず。そこに加えて、プログラミング的思考を身に着けさせるという、少々アバウトな指導要領が策定されたのです。
指針に従い、実際の授業内容を考えるのは小学校教育の最前線にいる教師たちです。しかも、前例のないプログラミング教育をしなければならない。ベストプラクティスもわからない。
教師の労働時間の長さや過労が問題として取り上げられている状況で、教師自身がスキルを高め、授業の準備に時間を掛ける必要性がある、ITと英語の教科としての取り扱いが開始されるわけですが、現場は本当にうまく回っていくのでしょうか。
学習指導要領が変わっても、現場がそこにきちんとついていくには、どうしても年単位で時間がかかってくるものと思います。まして今回のように抽象的な概念が指針として定められたのであれば、実際の指導内容(コンテンツ)として試行錯誤して正解を見つけ出していくのに長い時間がかかってしまうのは間違いありません。
サービスとしての教育の品質を上げていく努力や覚悟は並大抵のものではできません。実際、私たちが企画・運営しているアクトハウスでも、カリキュラムの見直し・改訂には多くの時間を要します。これで完成と一度は思っても、いざ実施してみると不備があったり改善項目が見えてきたり・・・。
だから、PDCAを常に回し、日々改善改善しています。その効果がどれくらいのものなのか、測定するにも時間がかかります。小学校教育ともなれば、児童が卒業してから数年経過しないことには、人材としてどうなっていったという効果測定ができないでしょう。
IT・英語が小学校で扱われることに対する筆者の見解
筆者は、小学校教育においてITや英語が扱われること自体は賛成です。
幼少期から、グローバルで通じるスキル要素であるITと英語に親しむことは、教育を受ける側である若年層の人材の視野を広め、将来の可能性をより大きくできるからです。
一方、文部科学省が打ち出した、プログラミング的思考を身に着けさせる、という方針がそのまま、即戦力であるIT人材やグローバル人材が育つことには繋がらないだろう、とも感じています。すなわち、即戦力人材が育ってくると、過度に期待してはいけない、と考えています。
ITを扱うオルタナティブ・スクールの必要性とアクトハウス
学校教育だけでは足りないからこそ、巷には学習塾という教育サービスが成り立つのです。ITで言えばプログラミングスクール、英語で言えば英会話学校となるでしょうか。
こうした教育サービスも、2つのモデルに分けられるかと思います。一つは、専門分野としてそれぞれのスキルを伸ばすことだけに特化したモデル。もう一つは、オルタナティブ・スクールとして、学校教育の補完か、それ以上の存在を目指すモデルです。
アクトハウスでは、スキル領域として扱っていることは前者のモデルでありながら、育てたい人間像は後者のモデルになっています。ハイブリッド型といったところでしょうか。
ITと英語をそれぞれに専門スキルとして別個に見るのではなく、総合的に必要なスキルとして捉えているのです。ですから、現場で使えるスキルを身につけていただくのは当たり前のこととしつつ、それらの要素スキルの背景を含めた統合的な理解を深めていただき、人間としての総合力を養っていただこうと考えています。
つまり、総合的にスキルが高い人間を目指していただきたいのです。だから、講義として取り扱う範囲が、群を抜いて圧倒的に多いのです。
小学校教育にIT・英語というカリキュラムが取り入れられようとしている今こそ、私たちアクトハウスがご提供する育成サービスが、世の中の役に立つような存在であり続けたいと考えています。
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著者:新村 繁行
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