留学中に日本人の友達を作るな? 極端な環境作りよりも大切な「目的意識」

「留学中は日本人と一切話すな」「日本人を見かけたら逃げろ」。留学エージェントや、意識の高いブログで擦り倒されてきたこのアドバイス。確かに、一理ある。せっかく海外に来たのに、日本人同士で固まって、日本語で愚痴を言い合い、居酒屋のようなノリで半年を過ごす。これでは何のために海を渡ったのかわからない。資金と時間のドブ捨てだ。
しかし、だからといって「日本人との接触を完全に断つこと」が、必ずしも正解だとは限らない。特に、アクトハウスが対象とするような「ビジネススキル」や「IT技術」を習得しようとするフェーズにおいては、この「日本人禁止ルール」は時に成長の阻害要因にすらなり得る。
重要なのは、パスポートの色ではない。「誰と」「何について」話すかだ。目的意識のない外国人と中身のない世間話を100時間するよりも、志の高い日本人とビジネスモデルやコードの設計について1時間激論を交わす方が、あなたの市場価値を高める場合がある。今回は、留学業界に蔓延る「極端な日本人排除論」にメスを入れ、真に成果を出すための人間関係の築き方について論じる。
「英語漬け」という手段の目的化
多くの留学生が陥る罠。それは「英語を話すこと」自体が目的になってしまうことだ。もちろん、語学留学であればそれでもいいだろう。しかし、アクトハウスに来るような層のゴールは「英語が話せる人になること」ではないはずだ。「英語を使って、ビジネスで成果を出せる人になること」が真の目的であるはずだ。
この違いは決定的だ。もしあなたがプログラミングやデザインといった高度な専門スキルを学んでいる最中なら、母国語である日本語での情報交換や議論は、学習効率を爆発的に高める「ブースト装置」になる。複雑なアルゴリズムの挙動や、マーケティングの微妙なニュアンスを、拙い英語だけで理解し合おうとするのは、時に非効率極まりない。
思考の深さは言語に依存する
人間は言葉で思考する。そして、その思考の深さは、操れる言語のレベルに依存する。英語力が未熟な段階で、英語だけで深い思考をしようとすれば、どうしても思考そのものが浅くなる。幼児レベルの英語しか話せなければ、幼児レベルのことしか考えられなくなるのだ。
技術的な壁にぶつかった時、あるいはビジネスのアイデアをブラッシュアップしたい時、同じ志を持つ日本人の仲間と、母国語の解像度で徹底的に議論する。そこで得た「深い理解」を、今度は英語という「ツール」を使ってアウトプットする。このサイクルこそが、最短でプロフェッショナルになるための道筋だ。「日本語だからダメ」という思考停止は、あなたの知的な成長を止める足枷になりかねない。
傷の舐め合いか、切磋琢磨か
「日本人とつるむな」というアドバイスの真意は、「低いレベルで同調し合うな」ということだ。「授業ダルいよね」「日本のラーメン食べたい」といった、生産性ゼロの会話で傷を舐め合う関係なら、確かに百害あって一利なしだ。即刻切るべきである。
しかし、アクトハウスに集まるのは、安くない費用を払い、会社を辞め、あるいは休学してまで人生を変えに来ている「ガチ勢」だ。彼らとの会話は、愚痴ではない。「どうすればこのエラーを解決できるか」「この案件の単価を上げるにはどう交渉すべきか」「将来どんなサービスを立ち上げるか」。こうした前向きで建設的な議論ができる相手なら、それは単なる「日本人の友達」ではなく、一生の財産となる「戦友」だ。国籍という属性だけで彼らを遠ざけるのは、あまりにも愚かな機会損失である。
もしあなたが、質の高いコミュニティに身を置き、互いに高め合える環境を求めているなら、アクトハウスはその期待に応えられる場所だ。ここには、馴れ合いを嫌い、本気で未来を掴み取ろうとする人間しかいない。
孤独は美徳ではない、情報は武器だ
「孤高の留学生」を気取って、誰とも話さず黙々と勉強する。一見ストイックでカッコよく見えるが、ビジネスの視点から見れば、それは「情報遮断」というリスク行動だ。現代の学習やビジネスにおいて、情報は命綱である。
集合知を利用せよ
一人で悩んで3日かかったバグが、仲間に聞けば3分で解決することはザラにある。逆に、自分が知っているハックを共有することで、相手から別の有益な情報を得られることもある。この「ギブアンドテイク」のサイクルを回せるコミュニティを持っているかどうかで、180日間の総学習量は桁違いに変わる。
アクトハウスでは、シェアハウス生活の中で自然とこの「集合知」が形成される。リビングに行けば誰かがコードを書いていて、食堂に行けば誰かがデザインのレビューをしている。そこにあるのは、日本語での馴れ合いではなく、プロフェッショナルを目指す者同士の高度な情報交換だ。これを活用しない手はない。
「言語の使い分け」という知性
結局のところ、問われているのは「オンとオフの切り替え」であり、TPO(時・場所・場合)に応じた最適なツール(言語)を選択できるかという「知性」だ。
アクトハウスのカリキュラムにある「English Dialogue」の時間は、当然ながら日本語禁止だ。そこは英語というツールを磨くためのトレーニングジムだからだ。しかし、プログラミングの複雑な仕様策定や、ビジネスモデルの収益構造を議論する際に、あえて拙い英語でコミュニケーションを取る必要はない。それは包丁で木を切ろうとするようなもので、道具の選択ミスだ。
教室は戦場、リビングは作戦会議室
賢い学習者は、場所によってモードを切り替える。教室や外国人講師との時間は「戦場」として、冷や汗をかきながら英語だけでサバイブする。一方で、シェアハウスのリビングやコワーキングスペースは「作戦会議室」として、日本人同士で高度な技術論や戦略論を戦わせる。
このメリハリこそが重要だ。「四六時中英語でなければならない」という強迫観念は捨てろ。それは思考停止だ。「今は英語力を伸ばす時間」「今は技術的理解を深める時間」と、目的を細分化し、その都度最適な言語を選択する。それが、限られた180日間で複数の専門スキル(Logic Prompt / Art & Science / Marketing/Strategy)を同時並行で習得するための唯一の戦略だ。
英語で「逃げる」な、日本語で「深める」な
逆に言えば、英語で話すべき時に「恥ずかしいから」と日本語に逃げるのは論外だ。同様に、日本語で議論すべき時に「英語の勉強だから」と中身のない英会話に終始するのも時間の無駄だ。
基準は常に「そのコミュニケーションは、目的達成に対して最短距離か?」にある。アクトハウスの参加者は、この基準を共有しているため、無駄な馴れ合いもなければ、意味のない縛りプレイもしない。極めて合理的な空気がそこには流れている。
卒業後の「資産」としての日本人ネットワーク
「留学中に日本人と関わらない」ことの最大のデメリットは、帰国後のビジネスチャンスをドブに捨てることだ。アクトハウスに集まるのは、起業志向の強い人間や、フリーランスとして独立を目指す人間たちだ。彼らは数年後、どこかの企業の経営者や、有力なクリエイターになっている可能性が高い。
クラスメイトは未来のビジネスパートナー
想像してみてほしい。あなたが帰国後に起業しようとした時、あるいは大きな案件を受注して人手が足りなくなった時、誰に声をかけるか。信頼できるスキルと、同じ釜の飯を食ったという絆がある「かつての同期」だろう。
実際にアクトハウスの卒業生同士で会社を設立したり、案件を回し合ったりするケースは後を絶たない。この「信頼できるビジネスネットワーク」は、金では買えない資産だ。もしあなたが「日本人とは話さない」という謎のルールを守り、誰とも深く関わらずに帰国したとしたら、この莫大な将来の利益を放棄したことになる。それはあまりにもビジネスセンスがない。
視座の高いコミュニティに所属し続けろ
人は環境の生き物だ。日本に帰国すれば、また元の「ぬるい日常」が待っている。会社や地元の友人と飲みに行けば、また愚痴大会が始まるかもしれない。その時、セブ島で共に戦った仲間との繋がりがあれば、あなたは「あちら側」に引き戻されずに済む。
SNSで同期の活躍を見れば、「自分も負けていられない」と奮い立つ。困った時には相談できる。この「視座の高いコミュニティ」に所属し続けることこそが、モチベーション維持の鍵だ。質の高い日本人の友人は、あなたの人生の防波堤になる。
一人より、連携を学べ
フリーランスや起業家を目指す人ほど、独力で何とかしようとしがちだ。しかし、大きな仕事ほどチーム戦になる。デザインはAさん、バックエンドはBさん、マーケティングは自分、といった具合に、専門性を持った人間同士が連携してプロジェクトを動かす。
アクトハウスの後半で行う実務案件は、まさにこの「チームビルディング」の予行演習だ。日本人同士であっても、意見が対立し、衝突することはある。それを乗り越え、一つの成果物を納品する経験。これこそが社会で通用する「協調性」であり「リーダーシップ」だ。孤独に勉強しているだけでは、このスキルは一生身につかない。
目的さえあれば、ノイズは消える
結局のところ、「日本人と付き合うべきか否か」という議論自体がレベルの低い話なのだ。あなたの中に強烈な「目的意識」さえあれば、付き合う人間は自然と選別される。
あなたの時間を奪うだけの「テイカー(奪う人)」からは自然と距離を置くようになるし、刺激を与え合える「ギバー(与える人)」とは自然と深く繋がるようになる。そこに国籍は関係ない。重要なのは、その相手があなたの未来にとってプラスになるかどうか、そしてあなた自身が相手にとってプラスの存在であれるかどうかだ。
極端なルールで自分を縛る必要はない。必要なのは、自分の目標に向かって、使えるリソース(人間関係含む)を全て使い倒すという、貪欲で冷静なマインドセットだけだ。
アクトハウスは、そんな自律した大人のための場所だ。ここには、無駄なルールはない。あるのは「結果を出せ」というシンプルなミッションと、それを支える仲間たちだけだ。
もしあなたが、上辺だけの「国際交流」ではなく、本音でぶつかり合える「同志」を求めているなら、ここに来ればいい。その出会いは、あなたのキャリアを一生支える財産になるはずだ。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















