自分の「時給」を知っているか? 稼働時間と収益を管理する経営者視点

フリーランスやクリエイターとして独立を志す際、多くの人が「月収」や「年収」を目標に掲げます。「月収50万円を目指す」「年商1000万円を超えたい」。その野心自体は否定しません。しかし、そこに「時間」という概念が欠落しているならば、それは経営者ではなく、単なる労働者の発想です。
残酷な問いを投げかけます。あなたのその月収50万円は、何時間の労働によって生み出されたものですか?
もし、土日も休まず、毎日12時間働き、睡眠時間を削ってようやく手にした50万円だとしたら、あなたの時給は約1,300円です。これは都内のコンビニエンスストアの深夜バイトと大差ありません。リスクを背負い、スキルを磨き、孤独に耐えて得た対価が、誰にでもできるアルバイトと同じ水準であるという事実。この不都合な真実から目を背けている限り、あなたはいつまで経っても「自由」にはなれません。
アクトハウスが育成するのは、ただ手を動かす作業員ではなく、自分自身を一つの企業としてマネジメントできる「ビジネステック人材」です。本稿では、クリエイターが陥りがちな「低時給の罠」と、そこから脱却し、投下した時間に対して最大のリターンを得るための経営者視点について論じます。
「見えない労働時間」を可視化せよ
初心者のフリーランスが時給計算を誤る最大の原因は、制作にかかった時間(実稼働)しかカウントしていない点にあります。
Webサイト制作を例に挙げましょう。「デザインとコーディングで20時間かかった。報酬は10万円だから、時給5,000円だ。悪くない」。これは大きな間違いです。
その案件を獲得するための営業活動、ヒアリング、見積書の作成、メールのやり取り、修正対応、請求書の発行、そして入金確認。これら「直接お金を生まないが、ビジネスを回すために不可欠な時間(バックオフィス業務やコミュニケーションコスト)」を分母に含めていないのです。
さらに言えば、そのスキルを習得するために費やした学習時間や、PC・ソフト代といった経費回収も考慮に入れるべきです。これら全てを精緻に計算した時、多くの人は自分の「実質時給」の低さに愕然とします。
アクトハウスの後半3ヶ月、「稼ぐ100日の実務」では、この現実を嫌というほど突きつけられます。チームで案件を回す中で、要件定義が甘かったために発生した手戻りや、クライアントとの認識祖語を埋めるための長時間のミーティング。これらが容赦なく時給を削り取っていきます。「手を動かすだけが仕事ではない」という痛感こそが、生産性への執着を生む第一歩です。
時給を高める2つのアプローチ:単価向上と工数削減
時給(利益率)を高めるための方程式はシンプルです。「単価を上げる」か「時間を減らす」か。このどちらか、あるいは両方を実現する必要があります。
まず「単価を上げる」について。ここで必要になるのが、アクトハウスのカリキュラムにある「Marketing/Strategy(ビジネス)」と「Art&Science(デザイン)」です。
単に「Webサイトが作れます」という機能的価値だけでは、価格競争に巻き込まれ、単価は下落する一方です。しかし、「御社の集客課題を解決するために、このデザインと導線設計が必要です」という提案ができれば、それは制作代行ではなく「コンサルティング」の領域に入ります。クライアントは、作業ではなく「成果(売上向上)」に対して金を払うからです。ビジネス視点を持つことで、商流の上流に食い込み、高単価案件を獲得する。これが王道です。
次に「時間を減らす」について。ここで威力を発揮するのが「Logic Prompt(プログラミングとAI活用)」です。
AI時代において、ゼロからコードを書いたり、アイデア出しに何時間も悩んだりするのは、時間の浪費です。ChatGPTやCopilotを使いこなし、ベースとなるコードや文章を瞬時に生成させ、人間は微調整と最終判断に徹する。あるいは、定型的なメール返信やタスク管理を自動化する。
アクトハウスがAIを「上位概念」と位置づける理由はここにあります。AIを部下として使いこなし、10時間かかっていた作業を1時間で終わらせることができれば、あなたの時給は理論上10倍になります。
自分のスキル不足を「長時間労働」でカバーしようとするのは、アマチュアの発想です。プロは、テクノロジーと戦略を駆使して、涼しい顔で短時間に成果を出します。もしあなたが、今の働き方に限界を感じ、もっとスマートに稼ぎたいと渇望しているなら、アクトハウスでそのための武器を手に入れてください。
努力の方向性を変えるだけで、景色は一変します。
「機会損失(オポチュニティ・コスト)」という経営判断
経営者視点を持つということは、「やらないことを決める」ことでもあります。
例えば、5,000円のバナー制作案件の依頼が来たとします。作成に2時間かかるとすれば、時給2,500円です。これを受けるべきか、断るべきか。
生活費に困っている段階なら受けるべきでしょう。しかし、もしその2時間を、単価20万円のLP制作案件を獲得するための営業活動や、将来の資産となるポートフォリオのブラッシュアップに使った方が、長期的リターンが大きいと判断できるなら、その5,000円は断る勇気が必要。
これを「機会損失(オポチュニティ・コスト)」の概念で捉えられるかが重要です。「目の前の小銭を拾うために、背後の大金を逃していないか」。常にこの問いを自問自答しなければなりません。
アクトハウスの生活でも同様です。週末をただの休息に使うのか、それとも次の週のパフォーマンスを最大化するためのインプットに使うのか。あるいは、苦手な分野を克服するための勉強に充てるのか。時間は有限な「在庫」です。その在庫をどこに投資すれば、最もリターン(成長)が大きいか。参加者たちは、常に投資対効果(ROI)を考えながら180日間を過ごしています。
自分という会社の「損益分岐点」を知る
あなたは、自分が月にいくら稼げば黒字になるか、正確な数字を把握していますか?
家賃、食費、通信費、保険料、税金。これら「固定費」と「変動費」を算出し、自分の損益分岐点を明確にしてください。
多くのフリーランス志望者は、この損益分岐点を「生活できる最低ライン」に設定しがちです。しかし、それでは不十分です。PCはいずれ壊れます。病気で働けない月があるかもしれません。将来への投資も必要です。
経営者視点で考えるなら、減価償却費や内部留保(貯金)も含めた金額を損益分岐点とし、そこから逆算して「必要な時給」と「必要な稼働時間」を割り出す必要があります。
「なんとなく20万円あれば暮らせる」というどんぶり勘定では、突発的なトラブルで即座に破綻します。数字に強くあること。これもクリエイターが生き残るための必須条件です。アクトハウスでは、実務を通じて請求書や見積書を扱う中で、こうした金銭感覚も養っていきます。
時間の切り売りから、価値の提供へ
最終的に目指すべきは、「時給思考」からの脱却。
時給いくらで働いているうちは、あなたの収入の上限は「24時間」という物理的な壁に阻まれます。どれだけ単価を上げても、自分が動かなければ収益が生まれない労働集約型のモデルには限界があります。
真の経営者視点とは、自分が動かなくても価値が生まれる仕組みを作ること。
例えば、Webサービスやアプリを開発し、サブスクリプションで収益を得る。あるいは、デザインのテンプレートを販売する。ブログやYouTubeで情報発信し、広告収入やアフィリエイトを得る。
アクトハウスで学ぶプログラミングやデザインは、こうした「資産(ストック)」を作るためのツールでもあります。
最初はクライアントワーク(フロー型ビジネス)で実績と資金を作り、徐々にストック型ビジネスへと比重を移していく。あるいは、チームを作ってディレクション側に回り、他人の時間をレバレッジする。
そうしたキャリアのロードマップを描くためにも、まずは足元の「時給」をシビアに管理し、自分の市場価値を客観視することから始めなければなりません。
アクトハウスでの半年間は、あなたの人生における「時間単価」を劇的に上げるための投資期間です。
今、目の前の仕事に忙殺され、未来への投資ができていないと感じるなら、一度立ち止まる必要があります。
あなたの時間は、安売りしていいような代物ではありません。
自分の価値を正当に評価し、それに見合った対価を得るための実力とマインドセット。それを手に入れる覚悟があるなら、私たちはあなたを歓迎します。
自分を経営する面白さと厳しさを、セブ島で学びませんか。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















