スキルがあれば稼げるという誤解。フリーランスに必要なのは「売る技術」

「プログラミングスクールに通ってスキルを身につければ、フリーランスとして高収入が得られる」。この甘美な謳い文句を信じてIT業界に飛び込み、そして静かに消えていく人々が後を絶ちません。彼らの多くは、決して不真面目だったわけでも、学習を怠ったわけでもありません。ただ一つ、残酷なまでの「誤解」を抱えたまま市場に出てしまったのです。
それは、「技術力と収入は比例する」という幻想です。
断言しますが、現代のビジネスフィールドにおいて、単なる「技術(Skill)」はコモディティです。特にAIの進化により、コードを書く、デザインを整えるといった作業レベルの価値は、かつてないスピードで暴落しています。どれほど美しいコードが書けても、どれほど洗練されたデザインができても、それを顧客に届け、対価として現金を回収する「売る技術(Sales & Marketing)」がなければ、あなたの口座残高は1円も増えません。
アクトハウスは、単なる技術者を育てる場所ではありません。技術を武器に、ビジネスという戦場で勝ち残る「事業家」を育てる場所です。本稿では、多くのクリエイターが陥る「職人気質」の罠を暴き、フリーランスとして生存するために不可欠なマーケティングと戦略の視点を、アクトハウスの「Marketing/Strategy」および「Logic Prompt」のカリキュラム哲学に基づいて解説します。
「いいモノを作れば売れる」は、クリエイター最大の幻想である
職人気質のエンジニアやデザイナーほど、「良いモノを作っていれば、いつか誰かが気づいて評価してくれる」と信じがちです。しかし、これはビジネスの世界では怠慢と呼びます。砂漠の真ん中で世界一美味しいラーメンを作っても、誰にも知られなければ客は来ないのと同じです。
フリーランス市場には、技術力はそこそこでも年収1000万円を超えるエンジニアと、技術力は高いのに年収300万円で疲弊するエンジニアが存在します。この差を生むのは、間違いなく「自分を売り込む力」です。前者は自分のスキルを「顧客の利益」に変換して伝える術を知っており、後者は「私はJavaが書けます」と、機能スペックしか語れないのです。
AI時代において、この傾向はさらに加速します。技術的な正解を出すだけならAIの方が速く、正確です。人間が介在する価値は、技術そのものではなく、「その技術を使って、クライアントのどんな悩みを解決するのか」という提案の部分に移行しています。つまり、マーケティング視点を持たないエンジニアは、早晩AIに置き換えられる運命にあるということです。だからこそアクトハウスでは、技術(Logic Prompt / Art & Science)と同等の比重で、ビジネス(Marketing/Strategy)を学ぶのです。
フリーランスの年収を決めるのは「技術レベル」ではなく「商流」
あなたが受け取る報酬額は、あなたのスキルの高さではなく、あなたが身を置く「商流(Commercial Flow)」の位置で決まります。これは資本主義の厳格なルールです。
商流とは、仕事とお金の流れのことです。エンドクライアント(発注元)から直接仕事を受ける「直請け」と、広告代理店や制作会社、さらにはその下請け会社を経由して仕事を受ける「三次請け、四次請け」とでは、同じ作業をしていても報酬は数倍、時には10倍以上異なります。
多くの駆け出しフリーランスは、この商流の概念を理解せず、クラウドソーシングサイトなどの安価な案件に飛びつきます。そこは価格競争のレッドオーシャンであり、どんなにスキルを磨いても単価は上がりません。必要なのは、コードを書く速度を上げることではなく、より上流のポジションを取りに行くための戦略です。
自分の市場価値を正しく把握し、適切な顧客層にアプローチする。これは独学で身につくものではなく、ビジネスのセオリーとして学ぶべき領域です。
もしあなたが、低単価のループから抜け出し、正当な対価を得られるエンジニアになりたいなら、技術以外の「武器」を手に入れる必要があります。
営業とは「売り込み」ではなく「価値の翻訳」である
「営業」や「売り込み」という言葉にアレルギーを持つエンジニアは少なくありません。「ペコペコ頭を下げて仕事をもらうなんてごめんだ」と。しかし、アクトハウスが定義する「売る技術」は、そのような卑屈なものではありません。
私たちが教えるのは、クライアント自身も気づいていない課題を発見し、それを解決するための手段として技術を提案する「コンサルティング・セールス」です。クライアントは「Webサイトを作りたい」と言いますが、本質的な欲求は「売上を上げたい」や「採用を強化したい」です。この真のニーズを汲み取り、「Webサイトを作ることで、御社の売上はこれだけ伸びます」と、技術をビジネスの言葉に「翻訳」して伝えること。これこそが、フリーランスに求められる真の営業です。
このプロセスにおいて、アクトハウスで学ぶ「English Dialogue(英語)」の思考法も役立ちます。ハイコンテクストな日本的な「察する」文化ではなく、論理的に相手のメリットを提示し、Win-Winの関係を構築するコミュニケーション能力。これがあれば、営業は「お願い」ではなく「対等なパートナーシップの提案」へと昇華します。売る技術とは、顧客の未来を創造するクリエイティブな行為なのです。
座学のマーケティング論は役に立たない。「100日の実務」で金を稼ぐ意味
マーケティングや営業の重要性を頭では理解していても、それを実践できるかどうかは別問題です。本や動画で学んだ「営業テクニック」や「マーケティング概論」は、実際の現場ではほとんど役に立ちません。なぜなら、リアルのビジネスでは、予期せぬトラブル、理不尽な値引き要求、競合とのコンペなど、教科書には載っていない変数が無数に存在するからです。
だからこそ、アクトハウスは「ごっこ遊び」を許しません。カリキュラムの後半に組み込まれた「稼ぐ100日の実務」は、メンターが用意した安全なサンドボックスではなく、受講生自身が市場に飛び込み、本物のクライアントから案件を獲得し、納品して報酬を得るまでの全プロセスを体験する場です。
ここでは、技術力不足で失注する悔しさも、見積もりの甘さで時給が数百円になってしまう絶望も、そして自分の提案が通り、初めて自分の腕で稼いだお金が口座に振り込まれる歓喜も、すべてがリアルです。この「痛み」と「成功体験」を伴う学習こそが、フリーランスとしての血肉となります。
多くのスクールが、卒業制作や架空の課題でポートフォリオを作らせて終わりにする中で、アクトハウスが泥臭い実務にこだわる理由。それは、技術(Logic Prompt / Art & Science)を習得しただけでは、ビジネスという荒野で生き残るための「生存本能」が養われないと知っているからです。「売る技術」は、安全な教室の中ではなく、ヒリヒリするような実戦の中でしか磨かれません。
AI時代、エンジニアは「実装者」から「提案者」へ進化せよ
ChatGPTやClaudeなどのAI技術の爆発的な進化は、エンジニアに求められる資質を根底から変えました。仕様書通りにコードを書く「実装者」としてのエンジニアは、これから急速に価値を失います。AIが人間よりも速く、正確にコードを生成できるようになった今、人間が担うべき役割は、AIに何をさせるかを設計し、ビジネスの成果に結びつける「提案者」のポジションです。
ここで再び、「売る技術」の重要性が浮き彫りになります。提案とは、すなわち営業であり、マーケティングです。クライアントのビジネスモデルを理解し、「AIを使ってこの業務を自動化すれば、コストをこれだけ削減できます」「最新のWeb技術を使えば、ユーザー体験が向上し、CVRが改善します」といった、経営視点での提案ができるエンジニアだけが、高単価な案件を独占します。
アクトハウスが提唱する「+180 ビジネステック留学」は、まさにこの「提案者」を育成するためのプログラムです。プログラミングやデザインといった「制作スキル」と、ビジネスや英語といった「対人・戦略スキル」をクロスオーバーさせることで、単なる作業員ではなく、クライアントのパートナーとして対等に渡り合える人材を輩出します。
AIを脅威と感じるか、強力な部下として使いこなすか。その分かれ道は、あなたがビジネスの主導権を握るための「売る技術」を持っているかどうかにかかっています。技術の殻に閉じこもることは、AI時代においては緩やかな死を意味します。
結論:逃げずに「売る」ことから始めた者だけが勝つ
「営業や交渉が苦手だから、技術職を選んだ」という人は少なくありません。しかし、フリーランスや起業家として独立を目指すなら、その苦手意識こそが最大のボトルネックとなります。技術への逃避は、一時的な安らぎを与えるかもしれませんが、長期的なキャリアの安定をもたらすことはありません。
厳しいことを言いますが、スキルさえあれば誰かが拾ってくれるという「待ちの姿勢」は捨ててください。泥臭く自分を売り込み、信頼を勝ち取り、商流の上流へと這い上がる。その覚悟を持った者だけが、真の自由と、技術に見合った正当な報酬を手にすることができます。
アクトハウスでの180日間は、その覚悟を試す期間でもあります。技術を学ぶのは当たり前。その上で、ビジネスの厳しさと面白さを肌で感じ、自分自身の市場価値を極限まで高めるための挑戦です。
もしあなたが、単なる「腕のいい職人」で終わるつもりがないなら。
技術とビジネスの両輪を回し、自分の人生を自分でコントロールする「事業家」としてのエンジニアを目指すなら。
私たちは、その野心に応える環境とノウハウを用意して待っています。
あなたのキャリアを、単なる労働から、クリエイティブなビジネスへと変えるための戦略を、ここで話し合いましょう。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















