安売りは捨てる勇気。クラウドソーシングに頼らず仕事を勝ち取る営業戦略

「未経験からフリーランスへ」という甘い言葉に誘われ、多くの初心者がクラウドソーシングサイト(クラウドワークスやランサーズなど)に登録します。
そこで彼らを待ち受けているのは、自由で優雅なノマド生活ではありません。ロゴ制作1案1,000円、コーディング1ページ3,000円といった、最低賃金を遥かに下回る価格競争の泥沼です。
デジタルノマドの修行時やスタートアップには有効な手段であり、決して頭から否定するものではありません。
しかし、特定のプラットフォームに依存し、顔の見えない相手から安い仕事を請け負い続け、手数料を引かれ、評価システムに怯えながら消耗していく。それは「独立」ではなく、実際にそれだけで成り立っている人は数少ない。ただの「オンライン下請け労働者」にならないように注意が必要。
アクトハウスが目指すのは、そのような代替可能な労働力ではありません。自分自身で顧客を見つけ、価格を決定し、対等なパートナーとしてビジネスができる「ビジネステック人材」です。
そのためには、早い段階でクラウドソーシングという温室(あるいは搾取構造)から抜け出し、「直契約」という荒野へ飛び出す必要があります。本稿では、安売り案件を捨てる勇気の根拠と、実績ゼロからでも高単価な直契約を勝ち取るための具体的な営業戦略について論じます。
クラウドソーシングが「構造的に」稼げない理由
まず、なぜクラウドソーシングでは稼げないのか。そのメカニズムを理解する必要があります。それは、あなたのスキル不足のせいだけではありません。「構造」の問題です。
クラウドソーシングは、基本的に「比較検討」の場。クライアントは「誰でもいいから安くやってほしい」という動機で発注しているケースが多く、そこでは「価格」が唯一の判断基準になりがち。
1つの案件に50人が群がり、「私はもっと安くやります」と手を挙げる。これは「逆オークション」であり、参加した時点であなたの市場価値は暴落しています。
さらに、プラットフォーム手数料として報酬の約20%が天引きされます。消費税や源泉徴収も含めれば、手元に残るのは微々たる金額です。
この環境で生き残るには、品質を犠牲にして数をこなすか、いつまでも低単価に甘んじるかしかありません。ここに未来へのキャリアパスは存在しません。
「捨てる」ことから戦略は始まる
直契約を勝ち取るための最初のステップは、新しいスキルを覚えることではなく、「安売り案件を捨てる」と決断すること。
「まだ自信がないから、安くても実績を作りたい」。その気持ちは分かります。しかし、5,000円の案件に3日かけているその時間は、本来であれば「20万円の案件を獲得するための営業活動」や「自分のスキルを高めるための学習」に使えたはずの時間です。
これを経済学では「機会損失(オポチュニティ・コスト)」と呼びます。安い仕事を受けることは、未来の利益を捨てているのと同じなのです。
また、価格はブランディングそのものです。「格安でやります」と宣言するクリエイターには、「安く使い倒したい」という質の低いクライアントしか集まりません。逆に、適正価格を提示するクリエイターには、「価値を理解し、対価を払う」良質なクライアントが集まります。
アクトハウスの参加者は、後半の「稼ぐ100日の実務」において、この恐怖と戦います。目の前の小銭を拾いたい誘惑を断ち切り、自分を安売りしない覚悟を持つ。そのマインドセットの転換こそが、プロへの入り口です。
直契約を勝ち取る3つの営業ルート
では、プラットフォームを使わずに、どこに営業すればいいのか。アクトハウスで実践している、再現性の高い3つのルートを紹介します。
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ローカルビジネスへの「足」を使った営業(地域密着型DX)
灯台下暗しです。あなたの住んでいる街、行きつけの美容室、近所の飲食店を見てください。スマホ対応していない古いサイト、更新が止まったブログ、存在しないGoogleマップの登録。課題は山積みです。彼らは「Web制作会社に頼むと高い(数十万〜数百万)」と思い込み、放置しています。そこにあなたが「近所の専門家」としてアプローチします。
「いつも利用させていただいています。御社のサイト、ここを直せばもっと予約が増えると思うのですが、お手伝いできませんか?」
クラウドソーシング上の顔の見えない「ワーカー」ではなく、実在する「隣人」としての信頼は最強の武器です。ここから月額保守契約に繋げれば、安定収入の基盤となります。 -
制作会社への「パートナー」営業
エンドクライアント(直客)だけでなく、Web制作会社や広告代理店への営業も有効です。彼らは常にリソース不足に悩んでいます。
ここで重要なのは「何でもやります」ではなく、「御社の苦手な部分を埋めます」という提案です。
「デザインに強い会社なら、コーディングを引き受けます」
「開発メインの会社なら、デザイン部分を担当します」
アクトハウスで学ぶ「Logic Prompt(プログラミング)」や「Art&Science(デザイン)」の掛け合わせは、ここで活きます。片方しかできない専門特化型の人材よりも、両方の言語が分かる人材は、ディレクションコストがかからないため重宝されます。 -
「発信」によるインバウンド営業
営業メールを送るのが苦手なら、見つけてもらうしかありません。ブログ、SNS、YouTube。これらを「個人の日記」ではなく「専門家のメディア」として運用します。
「Web制作の技術情報」ではなく、「クライアントのビジネス課題をどう解決したか」という事例やノウハウを発信するのです。
「集客に困っている経営者」は、技術記事を読みません。解決策を探しています。検索意図(インサイト)を読んだコンテンツマーケティングは、寝ている間も営業してくれる優秀な営業マンとなります。
もし、あなたが「営業=押し売り」だと思っているなら、その認識を改める必要があります。営業とは「困っている人に解決策を届ける親切な行為」です。自信を持って提案するためのスキルと論理的思考力があれば、営業は感謝される仕事に変わります。
自分の価値を正しく伝える言葉を持っていますか?
「ビジネス視点」が単価を10倍にする
直契約の最大のメリットは、価格決定権が自分にあることです。しかし、ただ「高くしてください」と言っても通りません。価格を上げるには、提供価値の定義を変える必要があります。
「Webサイトを作ります:5万円」
これでは労働の対価です。
「Webサイトを通じて、御社の採用コストを年間100万円削減します:30万円」
これは投資への対価です。
クライアントは、Webサイトやデザインそのものが欲しいのではありません。その先にある「売上アップ」や「コスト削減」「採用成功」が欲しいのです。
アクトハウスのカリキュラムに「Marketing/Strategy」が含まれているのは、この視点を持つためです。クライアントのビジネスモデルを理解し、利益が出るロジックを提案書に落とし込む。それができれば、制作費が30万円でも50万円でも「安い」と判断されます。
クラウドソーシングでは、この「提案の余地」がありません。仕様書通りに作ることが求められるからです。しかし直契約なら、仕様そのものを提案できます。
「そもそもWebサイトを作る前に、SNSの運用を見直すべきです」といった本質的な提案ができるようになれば、あなたは単なる制作者から「コンサルタント」へと昇華します。コンサルタントの時給は、作業員の10倍、20倍になります。
契約書と請求書は「自立」の証
直契約にはリスクもあります。未払いや契約トラブルのリスクです。クラウドソーシングは手数料が高い分、この金銭授受の仲介をしてくれていました。
直契約では、自分で契約書を作成し、締結し、請求書を発行し、入金を確認しなければなりません。
アクトハウスでは、この法務・税務の実務もアドバイスを卒業生から受けることもあります。
「業務委託契約書」のリーガルチェックのポイント、「着手金」をもらう交渉術、支払サイトの調整。これらは地味ですが、自分の身を守るための必須スキルです。
面倒だと思うでしょうか。しかし、この面倒な手続きを全て自分でコントロールできることこそが、本当の意味での「独立」です。誰かに守られた箱庭の中で小銭を稼ぐのではなく、自分の足で荒野に立ち、自分のルールでビジネスをする。そのヒリヒリするような自由と責任を楽しめる人だけが、フリーランスとして生き残れます。
結論:あなたは「何屋」になるのか
クラウドソーシングで消耗している人は、「作業屋」です。
直契約で稼いでいる人は、「商売人」です。
アクトハウスは、商売人を育てる。
AIが進化し、単純なコーディングやデザインが自動化されていく未来において、作業屋の席はありません。しかし、クライアントの顔を見て、悩みを聞き、テクノロジーとクリエイティブを組み合わせて解決策を提示し、契約をまとめ上げる商売人の価値は、むしろ高まります。
安売り案件を捨ててください。
それは、過去の自分への決別であり、プロフェッショナルとしての誇りを取り戻すための儀式です。
勇気を出して、プラットフォームの外へ。
そこには、あなたが想像しているよりも遥かに広く、豊かで、人間味のあるビジネスの世界が広がっています。
その世界で戦うための武器と地図は、アクトハウスが用意しています。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















