コピペエンジニアからの脱却。AIが書いたコードを「読み解く力」の重要性

「ChatGPTに頼めば、コードなんて一瞬で書ける」。そう思っていませんか。

確かに、生成AIは優秀です。あなたが欲しい機能を伝えれば、それらしいコードを数秒で吐き出してくれます。しかし、そのコードを「理解」せずに、ただコピー&ペーストして動かしているだけの人間を、現場では何と呼ぶか知っていますか。

「コピペエンジニア」。あるいは「AIの劣化コピー」。

厳しい言い方ですが、これは市場価値ゼロの烙印です。AIが進化すればするほど、コードを「書く」作業の価値は下がります。その反動として、爆発的に重要性を増しているのが、AIが書いたコードを「読み解く力(リーディングスキル)」と「真贋を見極める目」です。

動けばいい、という思考停止は、プロの現場では「時限爆弾」を埋め込むのと同じこと。

本記事では、AI時代におけるエンジニアの真の役割と、コピペ地獄から脱却して「技術を支配する側」に回るための学習論を、アクトハウスの視点から解説します。

動くコードが「正しいコード」とは限らない

プログラミング初学者が最も陥りやすい罠。それは「エラーが出ずに画面が動いた=成功」と短絡的に捉えてしまうことです。しかし、システム開発の本質は、正常動作のその奥にあります。

AIが生成する「スパゲッティコード」の恐怖

ChatGPTやClaudeは、あなたの指示(プロンプト)に対して、その場しのぎの最適解を出そうとします。文脈(コンテキスト)が十分に共有されていない場合、彼らは既存のコードとの整合性を無視し、メンテナンス性が皆無な、つぎはぎだらけの記述(スパゲッティコード)を平気で生成します。

これをコピペして実装した場合、どうなるか。

今は動くでしょう。しかし、1ヶ月後に機能追加をする際、あるいはバグが発生した際、そのコードは解読不能な迷宮と化しています。変数のスコープが無茶苦茶だったり、非効率なループ処理が走っていたり。

「AIが書いたので分かりません」という言い訳は、クライアントには通用しません。そのコードを納品した瞬間、すべての責任は「実装者であるあなた」が負うのです。中身の分からないブラックボックスを商用プロダクトに組み込む行為は、エンジニアリングではなく、ただのギャンブルです。

セキュリティホールという名の地雷

さらに恐ろしいのが、セキュリティリスクです。AIは、学習データの中に含まれる「古い書き方」や「脆弱性のある記述」をそのまま引用することがあります。

SQLインジェクションやXSS(クロスサイトスクリプティング)の対策がなされていないコードを、そのまま認証画面にコピペしたらどうなるか。最悪の場合、個人情報の漏洩やデータの改ざんを招き、損害賠償問題に発展します。

「読み解く力」がないエンジニアは、この地雷が見えません。笑顔で地雷原を歩き、爆発して初めて事の重大さに気づく。それでは遅すぎるのです。プロフェッショナルとは、AIの出力結果に対し「ここに脆弱性の懸念がある」「この処理は冗長だ」と即座に赤ペンを入れられる人間のことを指します。

あなたは「編集長」になれ。AIは「新人ライター」だ

これからのエンジニアの役割は、自ら筆を執る「作家」から、優秀だが危なっかしい部下(AI)を監督する「編集長」へとシフトします。

文法を知らない編集者はいない

編集長になるためには、新人ライター以上に言葉を知っていなければなりません。

「ここのロジックがおかしい」「この変数の命名規則はプロジェクトの規約に反している」。これらを指摘し、AIに修正指示(リテイク)を出すためには、JavaScriptやPHPといったプログラミング言語の基礎文法(Logic)を、空で書けるレベルまで身体化しておく必要があります。

英語のスペルチェックをAIに任せるとしても、あなた自身に英語力がなければ、AIが「微妙にニュアンスの違う単語」を使っていることに気づけないのと同じ理屈です。

アクトハウスのカリキュラムが、AI全盛の今もなお、基礎的なコーディング技術の習得に時間を割く理由はここにあります。基礎という「定規」を持っていない人間は、AIという「直線の善し悪し」を測ることができないからです。

もしあなたが、AIに使われるだけのオペレーターではなく、AIを統制し品質を担保できる「技術責任者(CTO)」クラスの視座を持ちたいと願うなら、まずは盤石な基礎を固めることから逃げてはいけません。

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次は、具体的にどうすれば「読み解く力」を鍛えられるのか、その実践論に入ります。

リーディングスキルを鍛える唯一の「王道」

では、どうすればAIが生成した複雑なコードを瞬時に理解し、修正できる力を養えるのでしょうか。残念ながら、これに「裏技」はありません。遠回りに見える「泥臭い学習」こそが、最短のルートです。

あえて「手書き」する。脳と指にロジックを刻む

AI時代だからこそ、アクトハウスでは初期段階において「写経(サンプルコードを自分の手で打ち込むこと)」を軽視しません。

なぜか。コードを目で追うだけと、実際に指を動かして打つのでは、脳への定着率が桁違いだからです。「ここでカッコが閉じる」「ここで変数が呼び出される」というリズムを身体で覚える。この身体感覚(センス)がない人は、AIが出力したコードの「違和感」に気づけません。

一流の編集者が、膨大な量の読書と執筆を経て言葉の感覚を研ぎ澄ますように、エンジニアもまた、良質なコードを大量に書き、読むことでしか、AIを審査する審美眼(コードレビュー力)は身につかないのです。

デバッグこそが最強の読解演習

コードが動かない時こそ、成長のチャンスです。

AIに「直して」と投げるのは簡単ですが、それでは一生「読み解く力」は育ちません。まずはエラーログを読み、該当箇所のコードを一行ずつ追う(トレースする)。変数の値がどこで変化し、どこでロジックが破綻しているのかを推論する。

この「デバッグ」のプロセスこそが、プログラムの構造を深く理解する最高の演習です。アクトハウスのメンターは、安易に答えを教えません。「どこまで追った?」「仮説は?」と問いかけます。その苦しい思考の時間だけが、あなたを「コピペエンジニア」から「解決できるエンジニア」へと進化させます。

技術的負債は、ビジネスを殺す

視座をもう少し高く、「ビジネス(Marketing / Strategy)」の観点からコード品質を見てみましょう。

なぜ、汚いコード(スパゲッティコード)ではいけないのか。それは、ビジネスの成長スピードを殺すからです。

拡張性のないシステムは「資産」ではなく「負債」

スタートアップや新規事業において、仕様変更は日常茶飯事です。「やっぱりこの機能を追加したい」「ここを修正したい」となった時、AIのコピペで継ぎ接ぎされたシステムは、どこを触ればいいか誰にも分かりません。

修正するたびに別の場所が壊れる。新しい機能を足すのに、通常の3倍の時間がかかる。これを「技術的負債」と呼びます。

負債が膨らむと、エンジニアはバグ対応に忙殺され、新しい価値を生み出せなくなります。結果、競合に追い抜かれ、サービスは死に至る。

アクトハウスが「Art & Science(デザインと技術)」だけでなく、ビジネス戦略を教えるのは、この全体像を理解させるためです。「読みやすく、拡張性のあるコードを書くこと」は、単なるマナーではなく、事業を生存させるための経営戦略なのです。

180日の実務で「責任」を学ぶ

アクトハウスの後半戦である実務案件では、あなたが書いた(あるいはAIに書かせた)コードが、実際の商用環境で稼働します。

もしバグを出せば、クライアントのビジネスに損害を与えます。深夜に叩き起こされて修正対応に追われることもあるでしょう。

このヒリつくような「責任」の重さを肌で感じることで、甘い考えは吹き飛びます。「AIが書いたから」などという言い訳が通用しない現場で、必死にコードを読み解き、品質を担保しようとする姿勢。その経験が、あなたを本物のプロフェッショナルに変えます。

結論。AIは「エンジン」、あなたは「ドライバー」

AIは、爆発的な推進力を持つエンジンです。しかし、そのエンジンの構造を理解せず、メンテナンスもできないドライバーが、F1レース(起業やフリーランスの競争)で勝てるでしょうか。

マシントラブルが起きた瞬間、リタイアです。

エンジン(AI)の性能を極限まで引き出し、トラブルがあれば自らボンネットを開けて修理し、ゴールまでマシンを運び切る。それが、これからの時代に求められる「AIネイティブ」なエンジニアの姿。

コードを書く作業はAIに譲りましょう。

しかし、コードを理解し、設計し、責任を持つ権限までは譲ってはいけません。そこを手放した瞬間、あなたはクリエイターであることを辞めることになります。

「魔法使い」になりたいなら、魔法の仕組み(ロジック)を学びに来てください。

アクトハウスは、AIという強力な力を、正しく使いこなすための知性と胆力を授けます。

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著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

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