TOEIC高得点でも喋れない理由。試験勉強とコミュニケーションの決定的な違い

TOEIC高得点でも喋れない理由。テスト勉強と「コミュニケーション」の決定的な違い。
履歴書には「TOEIC 800点」と誇らしげに書かれている。文法問題は完璧、長文読解も苦にしない。しかし、いざフィリピン人の講師を前にし、あるいは海外のクライアントとZoomをつないだ瞬間、頭が真っ白になり、中学1年生レベルの単語すら出てこない。
この「高得点者の沈黙」は、日本中で繰り返されている悲劇です。
厳しい現実を突きつけますが、TOEIC(特にL&Rテスト)のスコアと、ビジネス現場での英会話能力には、ほとんど相関関係がありません。TOEIC満点でも、現地のカフェでコーヒー一杯すらまともに注文できない人は山ほどいます。
なぜ、これほどの乖離が生まれるのか。それは、あなたがこれまでやってきたことが「英語学習」ではなく、「マークシート処理ゲームの攻略」だったからです。
アクトハウスの英語カリキュラム「English Dialogue」は、スコアアップを目的としません。ビジネスという戦場で、自分の意思を伝え、交渉し、権利を勝ち取るための「武器としての英語」を叩き込みます。本稿では、テスト勉強の弊害と、真のコミュニケーション能力を獲得するための思考転換について論じます。
「受信」と「発信」は、脳の回路が異なる
TOEIC Listening & Reading Testの本質は、「受信(Receptive Skills)」のテストです。
与えられた音声を聞き、書かれた文章を読み、正解を選ぶ。これは、情報は常に「外から内へ」流れています。あなたは受動的な受け手であり、情報を処理(Processing)する能力が問われています。
一方、英会話(コミュニケーション)の本質は、「発信(Productive Skills)」です。
自分の頭の中にある抽象的な思考や感情を、英語という言語コードに変換し、声に出して相手に届ける。情報は「内から外へ」流れます。これは情報を生成(Generating)する能力です。
「読む・聞く」と「話す・書く」。この2つは、脳の使用領域が全く異なります。
料理に例えるなら、TOEIC学習は「レシピ本を完璧に暗記すること」です。しかし、どれだけレシピを覚えても、実際にキッチンに立ち、包丁を握り、火加減を調整しながら料理を作らなければ、シェフにはなれません。
多くの日本人は、レシピ(文法・単語)だけを頭に詰め込み、一度もキッチン(会話の現場)に立ったことがない状態です。それで「料理ができない(喋れない)」と嘆くのは、あまりにも滑稽です。必要なのは知識の量ではなく、知識を筋肉に変えるトレーニングです。
「正解探し」の呪縛が口を塞ぐ
テスト勉強の最大の弊害は、「たった一つの正解がある」というマインドセットを植え付けられることです。
(A) (B) (C) (D) の中に必ず正解があり、それ以外は間違い。この訓練を繰り返すと、脳は「間違えること」を極端に恐れるようになります。
「三単現のSが抜けていないか?」
「ここは過去完了形を使うべきか?」
「前置詞はatで合っているか?」
会話の最中に、脳内でこうした「校閲作業」が始まってしまうのです。その結果、処理速度が会話のスピードに追いつかず、沈黙が生まれます。
しかし、実際のビジネスコミュニケーションにおいて、文法的な正しさの優先順位は高くありません。
重要なのは「意図が伝わるか」「目的を達成できるか」です。
“Client angry. Deadline tomorrow. Need help.”
この英語は文法的には破綻していますが、緊急性と要件は100%伝わります。
逆に、完璧な文法で “It is remarkably significant for us to consider the possibility of…” と長々と話して中身がないよりも、ブロークンでも核心を突く言葉の方が、ビジネスでは価値があります。
アクトハウスでは、この「正解主義」を破壊します。講師はあなたの文法ミスを指摘することよりも、「で、結局何が言いたいの?」とロジックを問います。恥をかき、冷や汗を流しながら、「伝われば正義」という泥臭い感覚をインストールしていきます。
ITと英語の掛け合わせ:ドキュメントを読む力と、仕様を語る力
アクトハウスが「ビジネステック留学」である以上、英語もまたITスキルと密接にリンクしています。
エンジニアやデザイナーにとって、英語力は「インプットの質」と「アウトプットの幅」を左右します。
最新の技術ドキュメント、ライブラリの仕様書、GitHub上の議論、エラーの解決策。これら一次情報の9割は英語です。翻訳ツールを使えば読めるかもしれませんが、それではスピード感が足りません。ここで役立つのが、TOEIC的な「速読力」です。
一方で、アウトプットの場面ではどうでしょうか。
あなたが作ったデザインの意図を、外国籍のエンジニアに伝える。あるいは、海外のクライアントに対して、システムの仕様変更を提案する。
ここでは、単なる日常会話ではなく、論理的かつ説得力のある「ビジネス英語」が求められます。
「I think…(〜と思う)」ではなく「Based on the data…(データに基づくと)」で語り始める。
「Change color(色を変えて)」ではなく「Improve visibility(視認性を向上させて)」と表現する。
こうした「専門性」を乗せた英語力は、一般的な語学学校では身につきません。ITと英語を同時に学ぶ環境だからこそ、相乗効果で習得できるスキルです。もしあなたが、単なる語学留学ではなく、キャリアに直結する英語力を求めているなら、学習環境の選定を見直すべきです。
英語は「教科」ではなく、ビジネスを動かすための「ツール」です。
「瞬発力」を鍛えるカランメソッド的アプローチ
では、どうすれば「英語脳」を作れるのか。
アクトハウスのカリキュラムの一部や、推奨される学習法には、脳の翻訳プロセスを強制的にショートカットする手法が含まれています。
日本人の脳内では、通常以下のプロセスが行われています。
①相手の英語を聞く
②日本語に翻訳して理解する
③言いたいことを日本語で考える
④英語に翻訳する
⑤口に出す
これでは遅すぎます。会話のテンポについていけません。
目指すべきは、
■相手の英語を聞く(英語のまま理解)
■英語で思考し、口に出す
この「直結回路」を作るためには、日本語が介入する隙を与えないほどのスピードで、大量のQ&Aを繰り返す反復練習が必要です。スポーツの素振りのように、口の筋肉と脳の反射神経を鍛える。
アクトハウスの1日は、インプットとアウトプットの嵐です。朝起きてから寝るまで、英語を「勉強する」のではなく「使い倒す」環境が、あなたの脳を強制的に英語モードへと書き換えます。
TOEICスコアは「足切り」回避のためのパスポート
誤解のないように言っておきますが、TOEICスコアが無駄だと言っているわけではありません。
日本の就職活動や昇進において、TOEICは依然として強力な「フィルター(足切り基準)」として機能しています。書類選考を通過するために、ハイスコアを持っておくことは戦略として正しいです。
しかし、それはあくまで「入場券」です。
入場した後のダンスフロアで、実際に踊れるかどうか(仕事ができるかどうか)は、全く別のスキルです。
アクトハウスの参加者は、この「入場券」と「ダンススキル」の両方を狙います。
半年間の留学中、英語漬けの日々を送れば、帰国後にTOEICを受けた際、特に対策をしなくてもリスニングスコアが爆上がりしていることに気づくでしょう。生きた英語のシャワーを浴びていれば、TOEICの音声などスローモーションのように聞こえるからです。
結論:沈黙を破れ。間違える権利を行使せよ
英語が喋れない最大の理由は、能力不足ではなく「恐怖心」です。
間違ったら恥ずかしい。発音が悪いと笑われる。その自意識過剰なプライドが、あなたの口を重くしています。
アクトハウスは、そのプライドをへし折る場所でもあります。
ここには、失敗を笑う人はいません。全員が「チャレンジャー」だからです。
講師もメンターも、あなたの拙い英語を必死に汲み取ろうとします。その安心感(心理的安全性)の中で、赤ん坊のように言葉を発し、失敗し、修正する。
そのプロセスの先にしか、本当のコミュニケーション能力はありません。
机上の空論としての900点よりも、現場で汗をかいて勝ち取った「伝わる英語」を。
あなたは、テストの点数を自慢したいのですか?
それとも、世界中の人々とビジネスをし、人生の可能性を広げたいのですか?
もし後者なら、マークシートを捨てて、対話のリングに上がってください。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















