帰国後のキャリア。留学経験を思い出にせず「実績」としてアピールする方法

「留学に行ってきました。英語が少し話せるようになりました。視野が広がりました」
面接官はこの言葉を何千回と聞いています。そして、その度に心の中でこう呟いています。「で、あなたは何ができるの?」と。
残酷な現実を突きつけますが、単なる語学留学やワーキングホリデーの経験は、今の日本の採用市場において、ほとんど評価されません。むしろ、「キャリアの空白期間」としてネガティブに捉えられるリスクすらあります。多くの帰国者が、「英語を使った仕事」に就けず、留学前と同じような職種や、あるいはそれ以下の条件で妥協せざるを得ないのは、留学を「体験(思い出)」として消費してしまったからです。
ビジネスの世界で評価されるのは「何を感じたか」ではありません。「何を生み出したか」という実績のみです。
アクトハウスが提供する180日間の「ビジネステック留学」は、思い出作りのための場所ではありません。履歴書(Resume)ではなく、ポートフォリオ(作品集)と職務経歴書(Curriculum Vitae)を分厚くするための「実績構築の場」です。
本稿では、留学経験を単なる「楽しかった過去」で終わらせず、帰国後のキャリアを垂直に立ち上げるための強力な「実績」としてアピールする戦略、そしてそのために現地で何をすべきかを論じます。
採用担当者は「視野の広さ」など求めていない
まず、企業の採用ロジックを理解する必要があります。多くの留学生がアピールしたがる「異文化コミュニケーション能力」や「グローバルな視野」といった定性的な要素は、企業にとって「あればいいけれど、なくてもいい」程度のものです。
「語学力」はコモディティ化している
かつて、英語が話せるだけで重宝された時代がありました。しかし今は違います。帰国子女、海外大学卒、そして安価なオンライン英会話で英語力をつけた国内人材。ライバルは山ほどいます。単に「日常会話ができます」レベルの英語力は、もはや希少価値のないコモディティ(一般化した商品)です。
企業が求めているのは、英語「を」話せる人ではなく、英語「で」利益を生み出せる人です。この違いは決定的です。「英語の勉強を頑張りました」というスタンスは、学生気分が抜けていない証拠として、かえってマイナス評価に繋がります。ビジネスマンとして対峙するなら、「英語を使って御社の課題をどう解決できるか」を語れなければなりません。
評価されるのは「再現性」のあるスキルだけ
面接官が見ているのは、あなたの過去ではなく未来です。「この人を採用したら、ウチの会社で同じように成果を出してくれるか?」という再現性を探っています。
「現地で友達をたくさん作りました」というエピソードには再現性がありません。しかし、「現地のカフェのWebサイトをリニューアルし、集客を20%アップさせました」という実績には、強烈な再現性があります。日本に帰っても、同じようにWebスキルとマーケティング思考を使って貢献してくれるだろう、と容易に想像できるからです。
留学中に注力すべきは、思い出作りではなく、この「再現可能な成果」を積み上げること一点に尽きます。
履歴書を捨てろ、ポートフォリオを見せろ
言葉だけで自分を証明しようとするから、薄っぺらくなるのです。実績をアピールする最短の方法は、実際に作った「モノ」を見せることです。
ITとクリエイティブは「嘘をつかない」実績になる
アクトハウスがプログラミング(Logic)とデザイン(Art)を必修にしている理由は、これらが「可視化できるスキル」だからです。
「プログラミングを勉強しました」と言う必要はありません。あなたが作ったWebアプリのURLを送ればいいのです。「デザインセンスがあります」と語る必要はありません。制作したバナーやWebサイトのデザインカンプを見せれば一発です。
百の言葉よりも一つのURL。これがIT・クリエイティブ職における真理です。ポートフォリオという客観的な証拠(エビデンス)があれば、採用担当者はあなたの実力を疑う余地がなくなります。また、未経験からの転職であっても、ポートフォリオのクオリティが高ければ、実務経験者と同等、あるいはそれ以上の評価を得ることが可能です。
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プロセス自体をコンテンツ化する
また、成果物そのものだけでなく、そこに至るプロセスも重要なアピール材料になります。
アクトハウスのカリキュラムでは、Git(バージョン管理ツール)を使用したチーム開発を行います。GitHub(ソースコードの共有サービス)上のコミット履歴(作業記録)は、あなたがどれだけコードを書き、どのようにチームメンバーと連携し、どうやってバグを修正したかという「努力の痕跡」を雄弁に語ります。
エンジニア採用の現場では、このGitHubのアカウントが「裏の履歴書」として機能します。口下手であっても、コードが美しく、コミットが活発であれば、それだけで「ガチ勢」として認定されます。留学期間中に、この「デジタルの足跡」をどれだけ濃く残せるかが、帰国後の勝負を分けます。
「実務経験」という最強のカードを切る
ポートフォリオに加えて、アクトハウス卒業生が持つ最大の武器。それは「在学中に、自分の腕で金を稼いだ」という事実です。
多くのスクール卒業生が「未経験」というタグを外せずに苦しむ中、アクトハウス生は「実務経験あり」の即戦力として扱われます。なぜなら、コース後半の「稼ぐ100日の実務」において、実際にクライアントから案件を受注し、納品し、報酬を受け取るプロセスを完遂しているからです。
「勉強」と「仕事」の決定的な違い
採用担当者は、「スクールの課題で作った架空のWebサイト」と、「実際のクライアントのために作り、商用利用されているWebサイト」の天と地ほどの差を知っています。
前者は、誰にも迷惑をかけない自己満足の世界です。しかし後者は、納期へのプレッシャー、仕様変更への対応、クライアントとの折衝、そして品質責任が伴います。この「ヒリヒリする現場」を経験しているかどうか。それが、ビジネスマンとしての基礎体力がついているかの判断基準になります。
面接で「留学中に、現地の企業からWeb制作の案件を獲得し、英語で要件定義を行い、納品して〇〇ドルの報酬を得ました」と語れる候補者を、企業が放っておくはずがありません。それはもはや「留学生」ではなく、一人の自立した「事業者」としての実績だからです。
数字で語れる人材になれ
さらに、アクトハウスではマーケティングやビジネス戦略も学びます。そのため、単に「作りました」で終わらせず、「数字(KPI)」で成果を語ることが可能になります。
「Webサイトをリニューアルした結果、問い合わせ数が前月比で150%に増加しました」
「SNSマーケティングを運用し、CPA(顧客獲得単価)を30%削減しました」
このように、定性的な努力ではなく、定量的なビジネスインパクト(結果)を提示してください。ビジネスの世界共通言語は「数字」です。数字で語れるクリエイターやエンジニアは、経営層やマーケターとも対等に会話ができる希少人材として、高い年収で迎え入れられます。
面接で語るべきは「苦闘のストーリー」
実績(What)と同じくらい重要なのが、その背景にあるストーリー(How & Why)です。順風満帆な留学生活を語っても、相手の心には響きません。人は、困難を乗り越えた物語に共感し、信頼を寄せるからです。
STAR法でロジカルにアピールする
面接でのアピールは、STAR法というフレームワークを使うと効果的です。
■S (Situation):
どのような困難な状況だったか(例:英語が通じず、仕様の認識齟齬が発生した)
■T (Task):
何が課題だったか(例:納期が迫る中、大幅な修正が必要になった)
■A (Action):
どう行動したか(例:図解やプロトタイプを用いて視覚的に再提案し、チームを鼓舞して徹夜で実装した)
■R (Result):
その結果どうなったか(例:無事納品し、クライアントから追加案件をもらえた)
アクトハウスの180日間は、まさにこの「S」と「T」の連続です。トラブルこそが、あなたを魅力的に見せるための最高の素材になります。失敗を隠すのではなく、そこからどうリカバリーしたかという「レジリエンス(回復力)」をアピールしてください。それこそが、変化の激しい現代ビジネスで最も求められる資質です。
留学は「逃げ」ではなく「攻め」の期間だ
「今の仕事が嫌だから」「なんとなく海外に行きたいから」。そんな動機で留学する人を否定はしません。しかし、それでは帰国後も同じ場所に戻るだけです。
キャリアをリセットするのではなく、リブート(再起動)し、アップグレードさせる。そのためには、留学期間を「モラトリアム(猶予期間)」ではなく、「ブートキャンプ(訓練期間)」と定義し直す必要があります。
アクトハウスに来るということは、半年間、南国でバカンスを楽しむ権利を放棄し、PCと向き合い、脳に汗をかく日々を選ぶということです。しかし、その代償として得られるのは、語学力という「ソフト」だけでなく、ITスキルという「ハード」、そして実務経験という「信頼」です。
未来の自分が感謝する半年間に
帰国後の面接会場で、あなたは自信に満ちた顔で座っているはずです。
手元には分厚いポートフォリオ。口をついて出るのは、現地のクライアントと戦った熱いエピソード。そして、英語とITを武器に、御社のビジネスを加速させることができるという確信に満ちた提案。
そんな未来を手に入れたいなら、ただ飛行機に乗るだけでは足りません。戦略を持ち、武器を磨き、実績を作る覚悟を持って海を渡ってください。
アクトハウスは、留学を「思い出」で終わらせたくない、あなたのための場所です。
さあ、履歴書に書ける「伝説」を作りに行きましょう。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















