なぜセブ島にIT企業が集まるのか。ビジネスハブとしての可能性と魅力

なぜセブ島にIT企業が集まるのか。ビジネスハブとしての可能性と魅力。

「セブ島」と聞いて、真っ先に思い浮かべる映像は何か。青い海、白い砂浜、マンゴーシェイク。多くの日本人にとって、そこは「安近短の南国リゾート」だろう。しかし、その牧歌的なイメージだけでこの島を捉えているなら、あなたのビジネス感度は鈍っていると言わざるを得ない。

今、セブ島は東南アジアでも屈指の「ITビジネスの激戦区」へと変貌を遂げている。

Google、Amazon、J.P. Morgan、Accentureといった世界的な巨大企業がひっそりと拠点を構え、24時間眠らないビル群の中で、膨大なコードとデータ、そして資本が飛び交っている。なぜ彼らは、東京でもシンガポールでもなく、この「セブ」を選ぶのか。そこには、リゾート気分とは無縁の、極めて冷徹で合理的な経営判断(ロジック)が存在する。

今回は、アクトハウスが拠点を構えるこの地が、なぜ世界中のIT企業を惹きつけ、ビジネスハブとしての地位を確立しているのか。その構造的な強みと、ここに身を置くことの戦略的優位性について解説する。

観光地という「皮」を被った、裏テック都市

空港を降り立ち、リゾートエリアであるマクタン島を抜けてセブシティの中心部に入ると「ITパーク(Cebu IT Park)」と呼ばれる経済特区がある。

決して広大ではないエリアに高層ビルが林立し、スターバックスにはMacBookを開いたエンジニアやクリエイターが作業に勤しんでいる。まだまだ、周辺はのどかで雑多な空気にこそ包まれているものの、その横顔は、途上国の島とは少し異なる。爆発前のシリコンバレーの熱気をアジア風に煮詰めたような、テック都市の一面を持ち始めている。

「ITパーク」という経済特区

セブ州政府は、国策としてIT産業の誘致(BPO産業の育成)に命を懸けてきた。その象徴が「ITパーク」だ。フィリピン経済区庁(PEZA)の認定を受けたこのエリアに進出する企業には、法人税の免除や輸入関税の免税といった、強烈なインセンティブが付与される。

この優遇措置に釣られ、世界中のテック企業やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業が雪崩れ込んだ。結果として、ここには高速な光ファイバー網や、24時間稼働を前提とした治安維持システム、そして24時間営業の飲食店といった、ITワーカーのためのインフラが整備されることとなった。

しかし、単なるビル街と言えばそれまでの殺風景な一面を持つITパークには「面白み」は逆にない。例えばそれは、日本に住んでいて「オフィスビル群が林立した中に暮らしたい」と思う方は多くないのと同じだ。オフィス街にはたいてい、ファーストフードやカフェくらいしかないのも理由だろう。

アクトハウスの生徒たちが学ぶ環境は、このITパークからはあえて離れた徒歩圏内。セブ島らしいローカルで平和なエリアにあり、また同時に富裕層が多く居住する便利なエリアにある。つまり、ITパークからも近く、他のモールも近く、セブ島のローカルフードやローカルカフェも味わえる立地をチョイスしている。

いずれにしろ、そろそろ「インフラが弱い途上国」という古い認識は、セブ島の特化エリアにおいては似合わなくなってきている。台風などの天災直後の復旧も中心部は早いもしくはノーダメージだ。ITパークやアクトハウスのエリアは、決して広大なエリアではなく、どちらかというと周囲からは浮いているエリアながら、そのポテンシャルは見た目以上に高くなってきた。

第2の都市ゆえの「最適化されたコスト」

なぜ首都マニラではなく、第2の都市セブなのか。答えは「コストパフォーマンスの最適化」にある。マニラはすでに経済成長に伴い、地価も人件費も高騰し、交通渋滞(トラフィック)は経済損失レベルで深刻化している。

対してセブは、都市機能とコストのバランスが絶妙だ。マニラに比べてオフィス賃料や生活コストは依然として安く、それでいて優秀な大学や教育機関が集中しているため、質の高い人材確保が容易だ。スタートアップや、コスト競争力を重視するオフショア開発拠点にとって、セブは「脂の乗った」一番おいしい時期にある市場なのだ。

世界第3位の英語公用語国という「人的インフラ」

ITビジネスにおいて、プログラミング言語(Logic Prompt)と並んで重要なプロトコル、それが「英語」だ。フィリピンは世界第3位の英語公用語国であり、ビジネス英語指数(BEI)においても常に高いスコアを叩き出す。この「英語力」こそが、セブ島最大の資源である。

訛りのない「ビジネス英語」の価値

「フィリピン人の英語は訛りがあるのでは?」と懸念する日本人は多いが、それは杞憂だ。セブの主要産業であるBPO(コールセンター等)では、アメリカの顧客対応を主とするため、極めてニュートラルで聞き取りやすいアメリカンイングリッシュが徹底されている。

IT開発の現場においても、仕様書(ドキュメント)の読み書きから、チーム内でのコミュニケーションまで、すべてが英語で行われる。インドのような独特のアクセントも少なく、欧米クライアントとの親和性が極めて高い。つまり、セブ島で確保できるエンジニアは、単にコードが書けるだけでなく、「英語でグローバル案件を回せる」即戦力なのだ。この人材プールがあるからこそ、外資系IT企業はこぞって拠点を置く。

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欧米文化との「高い親和性」

言語だけではない。長きにわたるスペインとアメリカの統治下にあったフィリピンは、アジアの中で最も「欧米化」されたメンタリティを持つ国だ。キリスト教徒が9割を占め、ハリウッド映画やアメリカ音楽が日常に溶け込んでいる。

これはビジネスにおいて「阿吽の呼吸」を生む。UI/UXデザインの感性や、マーケティングの文脈において、欧米のクライアントと感覚を共有しやすいのだ。日本のようなハイコンテクスト(察する文化)とは異なるが、グローバルスタンダードなコミュニケーションコストの低さは、ビジネスの速度を加速させる。

日本企業にとっての「地政学的」メリット

ここまではグローバルな視点だったが、特に「日本企業」がセブを選ぶ理由には、地理的・時間的な必然性がある。北米や欧州へのアウトソーシングと比較した際、セブ島の優位性は圧倒的だ。

わずか1時間の「時差」が生産性を決める

オフショア開発において最大の敵は「時差」だ。日本の裏側にある国に発注すれば、日本が昼の時に向こうは夜。質問の返信が来るのは翌日となり、開発スピードは半減する。しかし、日本とフィリピンの時差はわずか「1時間」。ほぼリアルタイムで稼働できる。

朝のミーティング(朝会)を同時に行い、Slackで投げた質問が即座に返ってくる。この「同期性」は、アジャイル開発のようなスピード感を重視する現代のITプロジェクトにおいて必須条件だ。ベトナム(2時間)やタイ(2時間)、インド(3.5時間)と比較しても、この1時間の差は、ボディブローのようにプロジェクトの生産性に効いてくる。

物理的な距離感と心理的な距離感

東京からセブ島までは、直行便で約4〜5時間。これは国内出張と大差ない感覚だ。トラブルがあればすぐに現地へ飛べるし、現地のスタッフを日本に招聘して研修を行うことも容易だ。

この「物理的な近さ」は、経営者やプロジェクトマネージャーにとって巨大な安心材料となる。画面越しの関係だけでなく、膝を突き合わせて議論できる距離感。これが信頼関係(ラポール)を強固にし、プロジェクトの成功率を高める。セブ島は、心理的にも「隣のオフィス」感覚で付き合える、稀有な海外拠点なのだ。

若さが生む「ハングリー精神」と「吸収力」

セブ島に集まるIT人材の多くは20代だ。彼らは日本の若者のように「安定」を求めていない。貧困から脱出し、家族を養い、成功するために、貪欲にスキルを吸収しようとする強烈なハングリー精神を持っている。

新しい技術への抵抗感がない

彼らはレガシー(過去の遺産)を持たないがゆえに、新しい技術への順応が異常に早い。AI、ブロックチェーン、NoCodeなど、新しいトレンドが出れば、即座にキャッチアップして使いこなそうとする。日本のように「前例がない」「セキュリティが」といった保守的な議論で足踏みすることは少ない。

この「技術的新陳代謝」の良さは、IT企業にとって最大の魅力だ。アクトハウスの生徒たちが、現地のエンジニアやクリエイターと交流する際、最も刺激を受けるのがこの姿勢だ。「知らないことを恥じず、すぐに学び、自分の武器にする」。このシンプルな生存本能に触れることは、日本の停滞した空気に慣れた脳にとって、強烈なショック療法となる。

アクトハウスが「セブ島」である必然

我々がセブ島を選んだのは、単に「コストが安いから」でも「海が綺麗だから」でもない。ここが、これからのITビジネスの最前線であり、熱量とロジックが交差する特異点だからだ。

生徒たちは、ITパークの摩天楼を見上げながらコードを書き、現地のハングリーな若者たちと英語で議論を交わす。教室の中だけでなく、街全体が「ビジネスの教科書」であり「戦場」なのだ。この環境に身を置くことで、「日本でしか働けない人材」から「どこでも戦えるグローバル人材」へと視座が強制的に引き上げられる。

リゾートの顔をした「ビジネス虎の穴」

週末になれば、確かにセブ島は世界屈指のリゾートだ。ジンベイザメと泳ぎ、透明度の高い海でダイビングを楽しむことができる。しかし、それはあくまで「戦士の休息」に過ぎない。

月曜の朝が来れば、水着を脱ぎ捨て、再び高層ビルの中へと吸い込まれていく。オンとオフの切り替えが明確で、どちらも全力で楽しむ。このライフスタイル自体が、現代のクリエイティブクラス(知的労働者階級)の理想形でもある。

ダラダラと残業する日本の悪習とは無縁の、生産性を極限まで高めるためのメリハリ。セブ島で働く人々は、仕事も遊びも「ガチ」だ。この空気感の中で半年間を過ごすことは、あなたのワークスタイルそのものをアップデートする契機になるだろう。

未来のシリコンバレーで、最初の種を蒔け

セブ島のIT産業は、まだ完成されていない。今まさに成長のJカーブを描いている最中だ。シリコンバレーがそうであったように、カオスとチャンスが混在するこの時期にこそ、大きな果実を得る機会が眠っている。

ここで人脈を作り、現地の商習慣を学び、ビジネスの種を蒔く。それは、数年後に大きなリターンとなってあなたに返ってくるはずだ。アクトハウスは、そのための「前線基地」だ。

もしあなたが、安定した日本でくすぶっている自分に嫌気が差しているなら。そして、世界中から企業と人材が集まるこの「台風の目」の中で、自分の実力を試してみたいと願うなら。セブ島に来い。ここは、本気でビジネスと人生に向き合う人間にとって、世界で最も刺激的な場所の一つであることは間違いない。

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著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

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