「喋らない」英語術。世界標準の「非同期コミュニケーション」とは

「英語が話せないから、海外就職は無理だ」
「英語が苦手なので、グローバルな仕事はあきらめる」
もしあなたがそう思い込んでいるなら、それは7割は正解で、3割は誤解だ。そして今後、この差はだんだんと50/50、40/60と、逆転してくるだろう。
確かに現代において、流暢なスピーキング能力は最強の武器になる。しかし、AIとIT化の一途を猛進するグローバルな開発現場、特にテック企業のリモートワーク環境において、最も評価されるコミュニケーション能力は「喋りのうまさ」ではなくなってきた。
それは「テキストベースで、非同期(Asynchronous)に、的確な情報を伝える力」。
実は、このスタイルこそが、スピーキングに劣等感を持つ日本人エンジニアにとっての「勝ち筋」となる。 世界中の開発者が集うグローバルチームにおいて、なぜ「無言」の時間、つまり書くことによるコミュニケーションが最強なのか。アクトハウスが提唱する「English Dialogue」の視点から、その本質を解説する。
時差という壁が「会議」を殺した
グローバルチームで働くということは、地球の裏側にいる同僚と協働するということ。
東京、ロンドン、ニューヨーク、セブ。時差がバラバラなメンバー全員の時間を合わせ、Zoomで会議を行うことは、物理的に困難であり、生産性を著しく低下させる。
そのため、先進的なテック企業ほど「同期コミュニケーション(会議)」を極限まで減らし、「非同期コミュニケーション(チャットやドキュメント)」を推奨する。
Slack、Jira、GitHub、Notion。 これらのツール上で、自分の好きな時間に情報を書き込み、相手も自分のタイミングで確認して返信する。このスタイルでは、即座にレスポンスすることよりも、**「後から読んだ人が、質問なしで理解できる文章を残すこと」**が何より重要視される。
ここでは、流暢な発音も、気の利いたジョークも必要ない。必要なのは、論理的で、誤解の余地がない、クリスタルクリアな英語のテキストだ。
非ネイティブこそ「テキスト」で殴れ
これは日本人にとって朗報だ。 リアルタイムの英会話では、リスニングの瞬発力や発音の壁に阻まれ、本来の知性を発揮できないことが多い。しかし、テキストであれば話は別だ。
送信ボタンを押す前に、じっくりと構成を練ることができる。Google翻訳、もちろん辞書を引いてもいいし、ChatGPTに文法チェックをさせてもいい。時間をかけて磨き上げた「完璧なロジック」を相手に届ける努力とクセをつける。
「口数は少ないが、彼がGitHubに残すコメントはいつも的確で、プロジェクトを前に進めてくれる」
グローバルチームにおいて、この評価は「会議でよく喋るが、中身のない人」よりも遥かに価値が高い。
沈黙(サイレンス)の中で行われるテキストコミュニケーションこそ、非ネイティブが対等に戦うための最強のフィールドなのである。
「察して」は通用しない。ローコンテクストの作法
ただし、テキストコミュニケーションには厳しいルールがある。それは「ハイコンテクスト(阿吽の呼吸)」を捨て、「ローコンテクスト(言語化の徹底)」に徹することだ。
日本的な「行間を読む」「よしなにやっておく」は、文化背景の異なるグローバルチームではバグの原因にしかならない。
■Bad■
“I fixed the bug.”(バグを直しました)
■Good■
“I fixed the login error (Issue #123) by updating the API endpoint. I verified it on the staging environment. Please review the PR link below.”(ログインエラー#123をAPIエンドポイントの更新により修正しました。ステージング環境で検証済みです。以下のPRリンクを確認してください)
このように、主語、目的語、背景、根拠を執拗なまでに明確にする。 「無言」であるということは、情報が不足しているということではない。むしろ、言葉にしなくていい部分がないほどに、ドキュメントが雄弁である状態を指す。
この「説明し切る力」は、英語力というよりは、論理的思考力(Logic Prompt)の問題だ。だからこそ、アクトハウスでは英語とプログラミングをセットで学ぶ。コードの論理構造と、英語の論理構造は驚くほど似ているから。
Deep Work(深い集中)へのリスペクト
もう一つ、グローバルチームが「無言」を好む理由がある。それはエンジニアやクリエイターの「集中時間(Deep Work)」を守るためだ。
「ちょっといい?」と肩を叩いたり、突然電話をかけたりすることは、他人の生産性を奪うテロ行為と見なされる。 テキストで情報を投げ、相手の集中が切れたタイミングで返信をもらう。この「相手の時間を奪わない配慮」こそが、プロフェッショナルのマナーだ。
静かなオフィス(あるいは自宅)で、誰にも邪魔されず、深い思考の海に潜る。 その静寂の中で交わされるテキストの応酬は、騒がしい会議室でのブレインストーミングよりも、遥かに高密度な知的生産活動となる。
喋る練習の前に、書く練習を
もちろん、最低限のスピーキング力は必要だ。とても大事で、ここができる人は「もっともっと上にいける」のは間違いない。
しかし、もしあなたが「英語がペラペラにならなければ」という強迫観念で足が止まっているなら、視点を変えてほしい。
まずは、DeepLやAIを駆使してもいいから、誤解のないテキストを書くこと。 GitHubのイシューを英語で立てること。 Slackで簡潔に状況報告をすること。
この「書く英語(Written English)」のスキルさえあれば、あなたはグローバルプロジェクトに貢献できる。 セブ島という環境は、そのための実験場だ。セブでの100日実践にて「英語案件」に挑戦する。そんな小さな「非同期の訓練」が、あなたのキャリアを世界へと接続していく。小さな挑戦が、大きな自信になる。
「英語が苦手」でも、それは無能ではない。
Googlel翻訳その他のサービスを駆使することが、世界標準の知的なワークスタイルとなっている。
少なくともIT業界においては、英語ペラペラが高付加価値でなくなる時代に突入している。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成=「+180 ビジネステック留学」の戦略・運営を主導。

















