30代からのキャリアチェンジ。「年下の上司」に使われるプライドの捨て方

30代からのキャリアチェンジ。「年下の上司」に使われるプライドの捨て方
「30代未経験からのIT転職」。
この言葉を聞いたとき、多くの人が真っ先に不安視するのは「記憶力の低下」や「学習時間の確保」です。しかし、実際に現場で最も高いハードルとなるのは、そんな能力的な問題ではありません。
最大の敵は「プライド」です。
前職でマネージャーだった、営業成績でトップを取った、部下が何人もいた。そんな「過去の栄光」という名の鎧をまとったまま、Tシャツにサンダル姿の20代の若者に指図される現実に耐えられるか。
ここで「なんであんな若造に」と唇を噛むのか、それとも「教えてください」と頭を下げられるのか。このマインドセットの差が、キャリアチェンジの成否を100%決定づけます。
今回は、アクトハウスという「再挑戦の現場」を見てきた視点から、30代が新しいフィールドで生き残るための「戦略的なプライドの捨て方」について、綺麗事抜きで語ります。
IT業界における「年齢」の無意味さ
まず、残酷な事実を認識する必要があります。ITやクリエイティブの世界において、年齢は権威ではありません。権威は「コード」であり「デザイン」であり、そして「数字(成果)」だけです。
あなたが前職でどれだけ偉かったとしても、GitHubのコミットログが白紙なら、エンジニアとしての価値はゼロです。一方、社会人経験がゼロでも、モダンな技術を使いこなし、エラーを瞬時に解決できる22歳は、現場では「神」に等しい存在となります。
この完全実力主義(メリトクラシー)の構造を、肌感覚で理解できるでしょうか。「年下の上司」は、単にあなたより先にスタートし、あなたより多くの時間を技術に投資してきた「先輩」に過ぎません。そこに年齢という物差しを持ち込むこと自体が、あなたの成長を阻害するノイズとなります。
捨てていいプライド、守るべきプライド
しかし、全てのプライドを捨てろと言うわけではありません。捨てるべきは「過去の肩書き」や「無駄な自尊心」です。一方で、30代だからこそ守るべき、そして武器にすべきプライドがあります。
それは「プロフェッショナルとしての振る舞い」です。
20代の若手エンジニアは、技術力は高くても、ビジネスコミュニケーションや納期管理、クライアントとの折衝において未熟なケースが多々あります。連絡が遅い、言葉遣いが稚拙、体調管理が甘い。
ここで30代の出番が回ってきます。
技術では彼らに教えを請い、その代わりにビジネスの所作や、プロジェクトを円滑に進めるための泥臭い調整役を担う。
「技術は君の方が上だが、ビジネスの進行は私に任せてくれ」。このスタンスを取れた時、あなたは「扱いにくいおじさん」から「頼れるパートナー」へと昇格します。プライドを捨てるのではなく、戦う土俵を変えるのです。
アクトハウスという「年齢混合の戦場」
アクトハウスの参加者は20代から30代後半まで様々です。ここには、会社のような年功序列は存在しません。
後半の「実務カリキュラム」では、チームで案件に取り組みますが、リーダーが最年少の大学生で、メンバーが30代の元営業マンという構成になることも珍しくありません。
ここで多くの30代が洗礼を浴びます。
自分の意見が通らない。若手の発想についていけない。あるいは、PC操作のスピードで圧倒的な差を見せつけられる。
しかし、この「屈辱」こそが、最高のワクチンとなります。
守られた教室の中ではなく、実際の商流の中で、年下に指示され、修正を命じられる経験。これを留学期間中(180日間)に済ませておくことで、帰国後の就職や独立において、無駄なプライドが邪魔をすることがなくなります。
「恥をかくなら、早いうちがいい」。アクトハウスは、安全に、しかし強烈に恥をかける最後の場所かもしれません。
「可愛げ」と「素直さ」は最強の生存スキル
30代の未経験者が現場で愛される条件。それは技術力以上に「可愛げ」です。
わからないことを「わからない」と素直に言えるか。指摘された時に、言い訳せずに「ありがとうございます」と言えるか。
「そんなことか」と思うかもしれませんが、30年以上生きて形成された自我は、想像以上に頑固、こびりついています。無意識のうちに「でも」「だって」という言葉が口をついて出たり、腕組みをして話を聞いたりしてしまう。
年下の上司たちは、そんなあなたの態度を敏感に察知し、「あ、この人は面倒くさいな」と心のシャッターを下ろします。一度シャッターが下りれば、もう情報は回ってきません。成長の機会は閉ざされます。
新しいことを学ぶ時は、赤子になる。永遠に続くわけじゃない、こんな”体験”もしておくと、将来、人間性の厚みも段違い。
このアンラーニング(学習棄却)の姿勢を持てる人だけが、30代からでも指数関数的に成長できます。一時的にもかかわらず、多くの人はこれができず、散っていきます。
当たり前のように書いていますが、筆者自身も数年はこの経験をしたことがあります。だからこそ、年上の部下ができた際の言葉のマナーや立ち回り、かといって指示出しに遠慮はしないなどの精度は高くキープでき、信頼関係を築くことができました。
ビジネステックだからこそ輝く「30代の年輪」
技術一本で20代と勝負しようとすれば、体力と吸収力の差で苦戦するでしょう。
しかし、アクトハウスが提唱する「ビジネステック(ビジネス×IT×英語)」の領域なら、勝算は十分にあります。
ビジネスの現場では、コードが書けるだけでは解決できない問題が山のようにあるからです。
クライアントの業界構造を理解する力、組織の力学を読み解く力、トラブル発生時の謝罪の作法。これらは、あなたが30代まで積み上げてきた「年輪(キャリア)」そのものです。
最新のITスキルという「武器」を手に入れれば、あなたの過去の経験は「荷物」から「資産」へと変わります。
若手には描けない、ビジネスの深みを持った提案ができるようになる。これこそが、30代からのキャリアチェンジにおける勝ち筋です。
覚悟を決めた大人たちへ
「年下に使われるなんて、惨めだ」
そう思ううちは、まだスタートラインに立っていません。
本当のプライドとは、過去の自分を守ることではなく、未来の自分のために、今の自分を変化させ続けられることではないでしょうか。
泥水をすするような時期があるかもしれません。しかし、その先には、年齢や組織に縛られず、自分の腕一本で生きていける自由が待っています。
アクトハウスは、そんな「大人の本気の挑戦」を支える場所です。
ここにあるのは、慰めや甘い言葉ではなく、現実を変えるための「実務」と「環境」だけ。
もしあなたが、つまらないプライドを捨てて、人生をリセットする覚悟があるなら。
私たちはいつでも、その挑戦を受け入れます。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















