デザインはセンスではない。ロジックで積むWebデザインの法則と思考法

「私には絵心がないから、デザイナーにはなれない」

「おしゃれなセンスがないから、Web制作は向いていない」。

この言葉を何度聞いてきただろうか。その度に私は、哀れみにも似た感情と共に、即座に、冷徹に否定する。「それは違う。あなたがデザインできないのは、天賦の才がないからではない。単に『思考』の手法を知らないだけだ」と。

世の中の9割の人は、デザインを「生まれ持った感性による魔法」だと思い込んでいる。キャンバスに向かい、天から降りてきたインスピレーションを形にする芸術活動だと。だが、断言しよう。ビジネスにおけるWebデザインにおいて、そんな曖昧な「センス」など1ミリも必要ない。必要なのは、ユーザーの行動を予測し、情報を整理し、意図したゴールへと誘導するための、極めて数学的で冷徹な「ロジック(論理)」だけだ。

今回は、デザインという営みを「感性の聖域」から引きずり下ろし、誰もが習得可能な「知的な技術」として再定義する。アクトハウスがなぜ、エンジニア志望者やビジネス志望者にも「Art & Science(デザイン)」を必修として叩き込むのか。その理由は、デザインこそがビジネスの勝敗を分ける「設計図」そのものだからだ。

「センス」という言葉への逃げを許さない

「センスがない」という言葉は便利だ。それを口にした瞬間、努力しなくていい理由ができるからだ。「自分には才能がないから仕方ない」と、勝負の土俵から降りることができる。しかし、プロの世界において、その言い訳は通用しない。なぜなら、商業デザインとは「自己表現(アート)」ではなく「課題解決(ソリューション)」だからだ。

アートとデザインの決定的な乖離

まず、この二つを明確に区別することから始めよう。アートは、アーティストの内面にある情熱や問いを表現するものであり、他人の理解を必ずしも必要としない。受け手がどう感じるかは自由だ。対してデザインは、クライアントの課題(売上アップ、認知拡大など)を解決するために存在する。そこには明確な「正解」に近い最適解が存在し、受け手(ユーザー)に「特定の行動」を起こさせなければ失敗だ。

自分がどう作りたいか、ではない。ユーザーがどう見るか、どう感じるか、どう動くか。その視点の転換ができていないうちは、どんなにPhotoshopやFigmaの操作を覚えても、一生デザイナーにはなれない。アクトハウスの生徒たちが最初に叩き込まれるのは、ツールの使い方ではなく、この「視点の強制転換」である。

「なんとなく」はプロの仕事ではない

初心者が作ったデザインを見せてもらうと、「なぜこの青色にしたの?」「なぜ余白をここに入れたの?」という質問に答えられない。「なんとなく綺麗だったから」「寂しかったから」という答えが返ってくる。これが「センス」に頼ったデザインの正体だ。

プロのデザイナーは、1ピクセルの余白、配色の彩度ひとつに至るまで、すべてに論理的な説明を持っている。「ターゲット層が30代男性で信頼感を求めているため、寒色系のネイビーを採用し、彩度を落として落ち着きを出しました」「視線の流れを阻害しないよう、ここのマージンは他よりも広く取り、セクションの区切りを明確にしました」。このように、すべての要素がロジックで裏付けられているからこそ、クライアントを説得でき、成果が出るWebサイトを作ることができる。再現性のない「感覚」で仕事をしてはいけない。それはギャンブルと同じだ。

デザインとは高度な「情報建築」である

Webサイトを作る行為は、ビルを建てることに似ている。外装のペンキを塗る前に、強固な骨組みと、人がスムーズに移動できる動線を設計しなければならない。美しい装飾は、機能的な構造の上に初めて成り立つ。つまり、デザインの本質は「情報の交通整理」にある。

迷子を生まないための導線設計

ユーザーは、Webサイトを隅から隅まで読んでくれるわけではない。必要な情報を求めて、斜め読み(スキャン)をする。その時、情報の優先順位が整理されていないサイトは、ユーザーを混乱させ、即座に離脱させる。

「Zの法則」や「Fの法則」といった視線移動のパターンを知っているか。人間が無意識に重要だと感じる「コントラスト(対比)」や「近接(グルーピング)」の心理効果を理解しているか。これらはセンスではなく、心理学と統計学に基づいたルールだ。このルールに従って情報を配置すれば、誰が作っても「見やすく、伝わる」デザインの7割は完成する。残りの3割の装飾で差をつける前に、まずはこの土台をロジックで組み上げること。それがデザイン学習の第一歩だ。

あなたがもし、デザインを「絵を描くこと」だと勘違いしているなら、今すぐその認識を改めてほしい。それは「情報を設計する」知的なパズルだ。パズルの解き方(ロジック)さえ学べば、センスの有無に関わらず、必ずプロレベルのアウトプットは出せる。

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さて、ここからはさらに具体的に、デザインを構成するロジックの深層へと潜っていこう。

美しさは「数学」で作られる

古代ギリシャのパルテノン神殿から、Appleのプロダクトデザインに至るまで、人類が普遍的に「美しい」と感じる造形には、必ず数学的な裏付けがある。黄金比(1:1.618)や白銀比といった比率は、神の気まぐれではなく、自然界の法則だ。Webデザインにおいても、この法則は絶対的な効力を持つ。

つまり、美しいレイアウトを作るために必要なのは、天性の勘ではなく、定規と計算機を持って画面に向き合う姿勢なのだ。

グリッドシステムという「規律」

プロとアマチュアのデザインを見分ける最も簡単な方法は、「見えない線」が見えているかどうかだ。プロのデザインには、画面全体を規則的な格子状に分割した「グリッドシステム」が存在する。すべての画像、テキスト、ボタンは、このグリッドの線に合わせて配置されている。

これにより、画面に「秩序」と「リズム」が生まれる。人間の脳は、無秩序な情報を処理することにストレスを感じるが、整列された情報には安心感を抱く。あなたが「なんか綺麗だな」と感じるサイトは、例外なくこのグリッドという規律によって統制されている。ここにセンスの入り込む余地はない。あるのは「揃えるか、揃えないか」という二択の論理だけだ。

タイポグラフィは情報の「声色」

文字(フォント)選びを、単なる好みの問題だと思っていないだろうか。それは大きな間違いだ。タイポグラフィは、Webサイトにおける「声色」を決める重要なロジックだ。

明朝体(セリフ体)は「信頼、伝統、高級感」という声を出し、ゴシック体(サンセリフ体)は「親しみ、現代的、機能美」という声を出す。ターゲットが富裕層向けの金融サービスなら、ポップな手書きフォントを使うのは論理的に誤りだ。それは葬儀にアロハシャツで行くようなもので、TPO(時・場所・場合)の欠如、すなわちコミュニケーションの設計ミスである。

さらに、行間(line-height)や文字間(letter-spacing)も、数値によって制御される。読みやすさを最大化するための黄金比率が存在し、プロはそれをピクセル単位で調整する。これもまた、感覚ではなく計算の世界だ。

デザインは「コスト」ではなく「投資」である

視点をビジネスサイドに移そう。なぜ企業は、Webサイトやロゴの制作に数百万、数千万という大金を払うのか。それはデザインが「飾り」ではなく、利益を生み出すための「機能」だからだ。

アクトハウスでビジネス(Marketing/Strategy)を学ぶ生徒は、デザインを「ROI(投資対効果)」の観点から捉えるようになる。「かっこいいサイトを作りました」では三流。「ユーザーの離脱率を改善し、問い合わせ数を20%向上させるUIを設計しました」と言えるのが一流だ。

UI/UXが売上を支配する

ボタンの色を「なんとなく」決めてはいけない。緑にするか赤にするか、立体的にするかフラットにするか。そのわずかな差が、クリック率(CTR)を数パーセント変え、年間の売上で見れば数千万円の差を生むことがある。これをA/Bテストなどで検証し、数値に基づいて改善していくプロセスこそがWebデザインの本丸だ。

ユーザー体験(UX)の設計も同様だ。ユーザーがどの順番で情報を知りたがり、どこで不安を感じ、どのタイミングで背中を押してほしいか。これを論理的に組み立て、デザインに落とし込む。そこにあるのは、心理学に基づいた冷徹な計算だ。論理なきデザインは、ただのお絵かきであり、ビジネスの現場では無価値どころか、機会損失を生む「負債」になりかねない。

信頼という名の非言語コミュニケーション

人間は出会って数秒で第一印象を決めるが、Webサイトは「0.05秒」で判断されると言われている。ファーストビュー(最初に表示される画面)のデザインが崩れていたり、素人くさかったりすれば、ユーザーは瞬時に「この会社は怪しい」「プロではない」と判断し、ブラウザを閉じる。

どんなに素晴らしいサービスや商品を持っていても、デザインという「身だしなみ」が整っていなければ、話すら聞いてもらえない。デザインは、顧客からの信頼を勝ち取り、土俵に上がるための参加チケットなのだ。だからこそ、経営者や起業家を目指す人間ほど、デザインのロジックを理解していなければならない。デザイナーに的確な指示を出し、上がってきた成果物を評価する「目」を持つためだ。

「ロジカルなクリエイター」だけが生き残る

生成AIの進化により、Midjourneyなどが美しい画像を瞬時に生成できるようになった。しかし、だからといってデザイナーの仕事がなくなるわけではない。なくなるのは「雰囲気でなんとなく作っていたオペレーター」の仕事だけだ。

AIは「平均的な正解」を出すのは得意だが、「なぜそのデザインにするのか」という戦略までは立案できない。ビジネスの課題を理解し、ターゲットを分析し、それを解決するための最適な構成を論理的に導き出す。その「設計図」を描く能力こそが、これからの人間に求められるクリエイティビティだ。

左脳で構築し、右脳で感動させる

最高のクリエイティブは、左脳(ロジック)と右脳(センス・感情)の高度な融合から生まれる。しかし、順番を間違えてはいけない。まずはロジックだ。徹底的に情報を整理し、構造を組み上げ、ユーザビリティを確保する。その強固な土台があって初めて、配色や写真選びといった「感性」の要素が輝き出す。

アクトハウスのカリキュラムが、「Logic Prompt(技術・AI)」と「Art & Science(デザイン)」、そして「Marketing/Strategy(ビジネス)」を並列で扱っているのは、この融合を個人の内部で完結させるためだ。エンジニアであってもデザインのロジックを知り、デザイナーであってもビジネスのロジックを知る。この「越境」ができる人材だけが、AI時代においても代替不可能な価値を発揮できる。

アクトハウスで「再現性」を手に入れろ

「今日はインスピレーションが湧かないから作れません」。そんな言い訳は通用しない。プロフェッショナルとは、体調や気分別に関わらず、常に一定以上のクオリティ(80点以上)を叩き出せる人間のことだ。その安定感を支えるのが「ロジック」である。

ロジックは裏切らない。手順と法則を守れば、誰でも必ず「伝わるデザイン」を作ることができる。アクトハウスは、あなたに「一瞬の閃き」ではなく、一生使える「再現性のある技術」を授ける。180日後、あなたは画面上のすべての要素に対し、「なぜそれがそこにあるのか」を論理的に説明できるクリエイターになっているはずだ。

「センスがない」と嘆く前に、まずはその手にある定規とコンパスの使い方を学ぼう。デザインは、学ぶ価値のある最高の教養であり、強力なビジネススキルだ。

もし、感覚だけのあやふやな世界から脱し、論理に裏打ちされた本物のスキルを身につけたいなら、我々の門を叩いてほしい。ここでは、あなたの「思考」を鍛え上げる準備ができている。

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著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

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