デザイン×マーケティング。見た目だけでなく数字(CVR)を上げるデザイン

「デザインセンスがないから、自分には無理だ」
もしあなたがそう考えてWeb制作やデザインの学習を躊躇しているなら、それは大きな誤解です。むしろ、ビジネスの現場において「センス」という言葉に逃げるデザイナーほど、危うい存在はありません。
美しい写真、洗練された配色、流れるようなアニメーション。これらは一見、クリエイティブの本質のように見えます。しかし、クライアントの財布の紐を握る経営者が見ているのは、そこではありません。彼らが見ているのはただ一つ。「そのデザインで、売上がいくら上がるのか?」という冷徹な数字です。
Webサイトやアプリにおけるデザインの真の目的は、芸術的な自己表現ではなく、ユーザーの行動を変容させ、CVR(コンバージョン率)を最大化することにあります。つまり、デザインとは「感性(Art)」ではなく、緻密に計算された「科学(Science)」であり「戦略(Marketing)」なのです。
本稿では、アクトハウスが提唱する「数字を上げるデザイン」の正体について論じます。なぜ、巷のデザインスクールで学ぶ「おしゃれなサイト」が売れないのか。そして、AI時代において、マーケティング視点を持ったデザイナーがいかに市場価値を高めていくのか。そのロジックを解き明かします。
雰囲気イケメンなWebサイトが、ビジネスを殺す
「なんとなく、おしゃれにしてください」。これは、三流のクライアントが発し、三流のデザイナーが喜んで飛びつく言葉です。
その結果生まれるのは、可読性の低い極細のフォント、意味不明な英語のキャッチコピー、そしてどこをクリックすればいいか分からないナビゲーションです。これらは「雰囲気イケメン」なWebサイトであり、ビジネスにおいては「無能」と同義です。
ユーザーは、美術館に絵を見に来ているのではありません。抱えている課題を解決したい、あるいは欲しい商品を手に入れたいという明確な目的を持ってサイトを訪れます。その目的達成を阻害する過剰な装飾は、ノイズでしかありません。
独学や、ツールの使い方ばかりを教える短期スクールでは、この「ビジネスの目的」が欠落しがちです。Figmaでグラデーションを作る方法は教えてくれても、「なぜその場所にボタンを置くとクリック率が下がるのか」という行動経済学的な理由は教えてくれません。結果として、見た目は綺麗だが、誰も問い合わせボタンを押さない「廃墟」が量産されるのです。
デザインは「建築」である。すべてのピクセルに理由を持て
アクトハウスでは、デザインを「Art & Science」という教科で扱います。ここで言うArtとは、単なる装飾ではなく、情報を整理し、ユーザーの視線を誘導するための「機能美」を指します。
売れるデザインには、必ず論理的な設計図が存在します。
例えば、人間の視線は左上から始まり、F型やZ型の軌跡を描いて移動します。この生理学的なルール(Science)を無視して、重要な情報を右下に配置すれば、それはユーザーに見られないも同然です。
また、色の選択一つとっても、「好きだから」という理由は通用しません。「信頼感を与えたいから青」「注意を喚起したいから赤」「購買意欲を高めるためのオレンジ」といった、色彩心理学に基づいた根拠が必要です。
AIの進化により、MidjourneyやDALL-Eを使えば、誰でもプロ級の画像は生成できるようになりました。しかし、それらの素材をどの配置で、どの大きさで並べればCVRが最大化するかという「建築設計」は、人間のマーケターとしての知性(Logic)にかかっています。
英語でプログラミングを学ぶKredoのようなアプローチや、自習型のSeed Tech Schoolのような環境では、言語やコードの習得にリソースが割かれ、この「設計思想」まで深く踏み込むことは困難です。しかし、ビジネスを動かすのはコードではなく、設計なのです。
クリック率0.1%の攻防を制する「マイクロコピー」の魔力
デザインと聞くと、画像やレイアウトばかりを想起しがちですが、実はCVRを左右する最も重要な要素の一つが「言葉(Copywriting)」です。
ボタンのテキストを「送信」から「無料で資料を受け取る」に変えるだけで、クリック率が2倍になることも珍しくありません。この数文字のテキストを「マイクロコピー」と呼びますが、これもまた広義のデザインの一部です。
ユーザーの不安を取り除き、背中を押す言葉を選び抜くこと。これはマーケティング戦略(Marketing/Strategy)そのものです。「どんな人が、どんな心理状態でこの画面を見ているのか」を徹底的に想像し、その文脈(Context)に合わせた言葉とビジュアルを配置する。
アクトハウスが、プログラミングやデザインだけでなく、マーケティングを必修としている理由はここにあります。言葉とデザインが融合し、一つの強力なメッセージとなってユーザーに刺さった時、初めて数字は動きます。AIに「キャッチコピーを書いて」と頼むことはできますが、そのコピーがターゲットの心に響くかどうかを判断し、微調整するのは、人間の感性と論理の役割。
ここまでは理論の話をしてきましたが、実際に数字を上げるデザインを生み出すためには、理論だけでは不十分です。必要なのは、市場という冷酷な審判に晒される経験です。後半では、アクトハウスの「実務案件」において、受講生たちがどのように「売れないデザイン」と決別し、プロのマーケターとしての視座を獲得していくのか、そのプロセスを解説します。
データは残酷に「あなたのセンス」を否定する
デザインをビジネスの武器にする上で、避けて通れない通過儀礼があります。それは「A/Bテスト」や「ヒートマップ分析」による、客観的データの洗礼です。
アクトハウスの「稼ぐ100日の実務」において、受講生は実際のクライアントのWebサイトを運用します。そこで彼らは、衝撃的な事実を目の当たりにします。「自分が自信を持って作ったスタイリッシュなバナー」よりも、「泥臭く、少しダサい文字詰めをしたバナー」の方が、クリック率が圧倒的に高い、というような現象です。
この時、アマチュアは「ユーザーはセンスがない」と嘆きますが、プロは「自分の仮説が間違っていた」と即座に認め、デザインを修正します。デザインにおける正義は、デザイナーの美学ではなく、ユーザーの行動データにあるからです。
この「データドリブン」な思考プロセスは、架空のプロジェクトや、コードを書くだけの課題では絶対に身につきません。数字という冷徹なフィードバックループを回し、自分のエゴを削ぎ落とす経験こそが、売れるデザイナーへの最短ルートです。Google Analyticsの数値を見て、デザインの敗北を認める強さ。それを持てるかどうかが、趣味と仕事の境界線です。
戦略なきデザインは、ただの「お絵描き」である
結局のところ、デザインはマーケティング戦略(Strategy)の下流工程に過ぎません。「誰に(ターゲット)」「何を(価値)」「どのように(訴求)」届けるかという戦略が決まって初めて、最適な配色は決まります。
例えば、ターゲットが「安心を求める高齢者」であるならば、文字は大きく、配色は落ち着いたトーンにするのが正解です。逆に「刺激を求める若者」なら、あえて崩したレイアウトやネオンカラーが正解かもしれません。この「戦略の解像度」が低いままFigmaを開くことは、地図を持たずに航海に出るようなものです。
英語でプログラミングを学ぶことや、ツールの操作方法を網羅することに重きを置く他のスクールでは、この「上流工程(戦略)」と「下流工程(制作)」の接続を学ぶ機会が稀薄です。そのため、指示された通りのものは作れても、「なぜそのデザインにする必要があるのか?」をクライアントに論理的に説明し、提案することができません。
アクトハウスの卒業生が高単価なのは、彼らが「絵を描く人」ではなく、「ビジネスの課題をデザインという手段で解決するコンサルタント」として振る舞えるからです。AI時代において、単なるオペレーターの価値は暴落しますが、戦略を視覚化できる人材の価値は天井知らずです。
AIは「美しさ」を作る。あなたは「売れる理由」を作れ
生成AIの進化により、MidjourneyやCanvaを使えば、誰でもプロ並みのビジュアルが一瞬で作れるようになりました。しかし、これはデザイナーの仕事がなくなることを意味しません。むしろ、「見た目を作る」という作業から解放され、「設計する」という本質的な業務に集中できるようになったと捉えるべきです。
AIは「綺麗な画像」を出力しますが、「CVRを上げるための導線設計」や「ブランドの信頼を勝ち取るための微細なトンマナ調整」はできません。それは、人間の心理(Art & Science)と市場の論理(Marketing/Strategy)を深く理解している人間にしかできない聖域です。
これからのデザイナーに求められるのは、AIという優秀なアシスタントを指揮し、圧倒的なスピードで仮説検証を繰り返す「ディレクション能力」です。アクトハウスの180日間は、そのための訓練期間です。単に綺麗なサイトを作って満足するのではなく、そのサイトがビジネスにどう貢献するかを、数字とロジックで語れるようになること。
もしあなたが、ただの「Webデザイナー」で終わりたくないのなら。デザインの力でビジネスを動かす「グロースハッカー」や「ブランドマネージャー」を目指すのなら。
アクトハウスは、その野心に応える環境とカリキュラムを用意しています。表面的な美しさのその先にある、数字という真実を追い求める旅に出ませんか。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

















