メディアによる「若者像」の押し付けに負けないで。大丈夫だろけど。

定番の報道「若者は夢ない」「やる気ない」「◯◯離れ」

肩を組んでいる若者

今日もSNSやテレビの切り抜き動画で、いやほんとにさっきも、

「若い世代は物欲がない」
「お金にもさほど興味はない」
「モノもいらない」

という「若者◯◯離れ報道」というか、ニュースがよく出ている。

数字取れたり、異論反論などコメントもつくから、とりあえずやってませんかね、アレ。

むしろ若者いじめ、若者決めつけな感じがして違和感。

どこで取ったのかわからないアンケートで「そういった若者が多い」「やる気のない、そういった世代」「あきらめている」「彼らは人生楽しくないんだ」と連打連呼。

そして最後は「でもそんな社会を作ってきた大人たちにも責任が…」という謎のバランスを取ろうとして終了。

若い人も、もっと怒ったほうがいいと思う。そういうの決めないでよ、と。まあ、見てないかそもそも。

そんな報道を普段からタップもしないだろうし、しないから自分のタイムラインにも流れてこないのかもね。もっとそもそもを言えば、ああいうニュースは、全国の「とある一定の年代や層」が「まったく最近の若者は…」と、居酒屋で談義を咲かせるための報道であるのかもしれません。単にウケるからやっている。「最近の若者論」はもはや伝統芸能かもしれません。

こういう「若者やる気ない」動画や報道には、ちょっと反論らしきコメントも付いているけど「いや、若者はお金がないだけなんだ」「ずっと給与上がらないんだから当たり前だ」「日本が衰退しているんだからそう考えるしかないんだ」というのも、お約束のやりとり。これ、反論しているようで、激しくこの世論を応援しているようにしか見えないっていう。

若者の特権こそ「失望」と「渇き」

孤独な若者

えっとまず、雑に整理したいんですが。

若者って20年も30年も前から、

「お金なく」(若いんだから当たり前)
「だから自由もなく」(そりゃそう)
「だけど自由を渇望し」(当たり前)
「大人たちが嫌い」(というてい。無関心なだけ)
「何にも興味ないことにしている」

もんです。時代のせいじゃない。だからこそキラキラしている。

人生にあせりながらも、心のどこかでそういう反骨心的な、「おとなこども」な感じを楽しんでいたり。たまに急激にあせってしまう夜もあったりするのが若者。その若者の特権でもある「失望」と「渇き」を大人たちが”こんだけアカンやつらなんです、日本終わってます”と報道するのは、なかなか厳しいものがある。

ついでに言えば、

「仕事に興味ない」
「自分の人生が豊かになればいい」
「できれば17時以降は帰宅して」
「飲み会も行きたくない」

なんてのは、別に「令和の若者」だけじゃない。

人類生まれて史上、若者ってずっとそう。類人猿の頃から「先輩の狩り」について行くのはダルかったろうし、狩りのあとは早く遊びたかったはず。

でも心の炎は消してないし、誰にも言ってない「なにか」が心の中でうごめいている。もちろん、できればハッピーになりたいし、自分が納得できるような人生も歩みたい。知らないことも多いから怖いけど、なんかやりたい。親も喜ばせたい。

スマホばっかやって何が悪い

スマホする若者

かつて、渋谷のセンター街にたむろしていた若者たちはスマホを持っていなかっただけで、マインドはこの2024年に漫画喫茶で一晩を過ごしたりゲームに没頭する世代と何も「失望」と「渇き」は変わってない。

スマホばかりやって何が悪いって話で、別のスマホの中に考えられないほど多くの世界が存在するんだからそこに集まって当たり前。大人だってそうなのにね。

渋谷的な中心街に行かなくても会えるし会話できるんだし、終電気にしながら遠くこっそり上京する必要もないんだから、スマホやるでしょ。別にこれは逃避じゃない、クソ便利なだけ。

センター街がインターネットに変わっただけで「どこかに集まって」「くだを巻いている」「モヤっている」本質は同じ温度感。それが楽しくもあり、寂しくもあり、いつこの時間や若さが終わってしまうのかの危機感もあるのが、10代〜20代ならではの刹那的な尊さとも思う。もちろん、当人たちは「いま、自分は刹那的な尊さの真っ最中」なんて思う余裕も客観性も持たないけど、だからこそ、いい。ここでいろんな遠回りしたり、失敗したり、八方塞がりになったりする。二度とない時間。学生でもない大人でもない「初めての魔界」に突入している人もいる。

こういった若者世代の葛藤や一見冷めて何もやる気ないように見える”挙動”は、大昔にパンクバンドの元祖のひとつSEX PISTOLSがイギリスから出てきた理由もこんな温度感だし、その10年後とかにグランジロックでNIRVANAが出てきたときもそう。

そのあとのエミネムだって。

そのはるか前からずっと続いている”公の敵”を狙っているHIP HOPも。

物事の表層から本質は見えない

音楽もインディペンデントな映画も、乱暴にまとめると「俺達には未来なんてないんだ」「お金なんていらない」「何にも興味ないんだ」「◯んじまえ」と。ずっと言ってきた。いまはビートに乗せて喧嘩する。

一部「ブレイキングダウン」のようなヤンチャ坊主たちの殴り合いの喧嘩はあるけれど、基本あれも「エピソードや前フリ」が人気で、視聴者層は格闘自体にはさほどの興味はない、むしろ素人の殴り合いは見苦しい。それよりも「背景のドラマ」に注目が集まっている、実に平和な”乱暴”だ。

そんな、ノーフューチャーな「ごくごく一部分の葛藤」を切り取って「いまの若い子たちは夢も希望もない」「お金も興味ない」「それは一部、大人たちの責任」なんて言われても、まあまあな数の若者が、

「あのー、お金とか、普通にあると嬉しいし」
「ほしいもんあるし」
「言わないけど夢もあるけど」
「なんかしたいなって思う」
「普通に海外行きたい」

って思ってる。だって、昔から乾いている若者って、そうだったから。時間はあるけど金なかったり、やりたいことの探し方とかもまだ定まってなかったり。でも腹の下あたりは、なんか時々メラメラしている。

時代は変わって、スウィフティーズと呼ばれるテイラー・スウィフトのファンたちは、せっかくの青春にコロナ禍が直撃した方も多く、ただでさえ多感な時期に世界のカオスを目の当たりにした世代でもある。

でもテイラー・スウィフトがガラスの天井を破るべく、自分の夢に向かって大きくなっていく姿を、決して冷めた目線で見ていない。

抱き合っているテイラー・スウィフトのファン

感情と共感の分散型ネットワーク

彼らは、単に歌手を応援しているというより、そこには「私だって」「俺だって」という、素直に楽しく、今を乗り越えようという空気さえもある。テイラー・スウィフトという巨大な”メデイア”を通して、励まし合っているのが本質的な動きにも見える。

何等か象徴的なアイコンを通し共感を彷徨いわかちあう姿は、実に現代的な分散型ネットワークにも見え、一方で”誰も殺さない”ポジティブなクーデターにも見える。争いのないかたちで、でもちゃんとパンクな一面も持っている。いわば伝統的に受け継がれてきた「若者のすべて」を実にスマートに継承してくれている。むしろ感謝をしないといけない。

さらに、テイラー・スウィフトがコンサートで彼氏を登場させる公私混同な演出をされても「しゃあねえ」「見なかったことにしてやる」「ほっこり」なんて感じで許してしまうような、寛大すぎる心も持っている。昔のように生意気や破壊的一辺倒でない、この余裕感は地味に新しい。優しいってかっこいい。

こういうのが新世代、次世代の動きなんだから、そこもっと報道して、褒めて欲しい。

確かに夢も希望もないような世の中に見えるけど、彼らはつながり、そして急に離れ、一生懸命生きている。それを横から「あいつらは何も興味ないらしい」さらに「だから結婚しないんだ」とか飛躍してみたり、無駄に分析したり、普通に多様性の真っ向否定かよって思う。

もういいよって。「車を欲しがらない世代」とか。決めるな。

例えば東京を見れば、別に大人だっていらない人多いだろって。

どーせ答えはない。だから自分の生き方でいい。

スケボーの帰り道の少年たち

「わたしたちは人生をあきらめているわけじゃない」

「ただ迷っていたり、まだちょっと勇気もお金もないだけだ」

人生をよく振り返る大人や、まだ大人になりきれてない大人ほど、そういう若者の「感じ」には理解がある人もいる。なぜなら、自分もまだ、何十分の一かは、そうだから。

ひとまとめにすると怒られそうだけど、いつの時代の若者にもある「失望」と「渇き」。ないほうがおかしい。あせらないほうがおかしい。

そしてこのモヤモヤ、失望と渇きをどっかでエネルギーに変えれたら、ちょっと人生がまた少しちがう方向に動き始める。いろいろ失敗した数だけ、まあまあなところにいけたりする。

タトゥーを入れている人も、後悔しないで。音楽やお笑いで20代を使った人も、後悔しないで。中途半端な学歴や職歴でなんだか自分が馬鹿らしくなってきた人も。変な教材買って後悔した人も。とりあえず、みんな正解。客観的に見れば、輝いているし、偉いし、がんばってるから色々ある。夢も希望もある。夢と希望しかない存在。

10代の人や20代の人はもちろん、そして30代の人だって自分を「こじらせ」なんて揶揄しないで。

今は悩んで悩んで、いろんなこと否定したり肯定したり、やる気ないように見せたりあるように見せたりしながら。自分なりのあり方を見つけて欲しいと思う。

乾いて乾いて乾いて、失望したぶんだけ、未来は明るくなる。

著者:清宮 雄(アクトハウス代表)

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