2026.01.19

英語が苦手でもグローバルに働ける? IT業界で求められる「書く英語」の力

English Dialogue

英語が苦手でもグローバルに働ける? IT業界で求められる「書く英語」の力

「英語が話せないから、海外就職は無理だ」
「英語が苦手なので、グローバルな仕事はあきらめる」

そう考える人は少なくありません。

確かに、英語を流暢に話せることは今でも大きな武器です。一方で、AI翻訳やリモートワークが当たり前になった現在、グローバルな仕事で評価されるコミュニケーション能力は以前とは少し変わってきました。

特にIT業界では、「話す英語」だけではなく、

☑️テキストで正確に伝える力

☑️読みやすいドキュメントを書く力

☑️非同期で仕事を進める力

こうした能力が以前にも増して重要になっています。
世界中の開発者が集うグローバルチームにおいて、なぜ書くことによるコミュニケーションが重要視されるのか。アクトハウスが提唱する「English Dialogue(英語での対話・実践)」の視点から、その本質を解説します。

時差という壁を越える「非同期コミュニケーション」

グローバルチームにおける最大の障壁は「時差」です。地球の裏側にいるメンバーと円滑にプロジェクトを進めるため、先進的なテック企業では独自のコミュニケーション文化が生まれています。その主な特徴は以下の2点です。

①世界中のメンバーと働くからこそ、リアルタイムを求めない

グローバルチームでは、日本、ヨーロッパ、北米、東南アジアなど、異なるタイムゾーンで働くメンバーが珍しくありません。全員が同じ時間に集まって会議を開くことは難しく、そのたびに誰かが深夜や早朝に参加することになります。

そのため、多くのテック企業では、必要以上の会議を減らし、チャットやドキュメントを中心とした「非同期コミュニケーション」を採用しています。

②世界的テック企業が実践するテキスト文化

実際に、GitHub、GitLab、Automattic(WordPress.com)、Basecampなど、フルリモートワークを前提とした世界的な企業では、チャットやドキュメントを中心に仕事を進める文化が深く定着しています。

Slack、GitHub、Jira、Notionなどで情報を残し、相手は都合の良い時間に確認・返信する。この働き方では、「あとから読んだ人が一度で理解できる文章」が高く評価されます。

もちろん英語を話せることはプラスですが、それ以上に、誤解なく情報を伝えられる文章が重視される場面も少なくありません。求められるのは、論理的で、誤解の余地がない、クリアな英語のテキストです。

【参考】なぜ英語のライティングは聞くより10倍疲れるのか?日本語脳のバグの謎

非ネイティブの日本人こそ「テキスト」で生き残る

リアルタイムの英会話でネイティブと対等に渡り合うのは容易ではありません。しかし、コミュニケーションの主軸が「テキスト」に移ることで、非ネイティブである日本人には主に以下のようなメリットが生まれます。

①送信前に「時間をかけて磨き上げる」メリット

リアルタイムの英会話では、聞き返せない、言葉がすぐに出ないという場面もあります。しかしテキストであれば、送信前に内容をじっくり整理できます。

AI翻訳やChatGPTで表現を確認し、辞書で単語を調べ、誤解のない文章に整えてから送信できます。近年では、AIによる英文チェックや翻訳を日常的に活用する開発チームも増えています。

②現場で本当に評価される人材とは?

重要なのは「ネイティブのような英語を書くこと」ではありません。必要な情報を、誰でも理解できるように整理して伝えることです。

「口数は少ないが、彼がGitHubに残すコメントはいつも的確で、プロジェクトを前に進めてくれる」

グローバルチームにおいて、このような信頼を得ることは、非常に大きな価値を持ちます。テキストコミュニケーションこそ、非ネイティブが対等に仕事を進めるための現実的なフィールドなのです。

グローバルチームで必須となる「ローコンテクスト」の作法

テキストでの非同期コミュニケーションには、守るべき厳格なルールが存在します。異なる文化背景を持つメンバー同士が誤解なく働くための、世界標準の書き方について具体的に見ていきましょう。

①「行間を読む」文化を捨て、言語化を徹底する

テキストコミュニケーションを円滑にするためには、明確なルールがあります。それは「ハイコンテクスト(阿吽の呼吸)」を避け、「ローコンテクスト(言語化の徹底)」に徹することです。

日本的な「行間を読む」「よしなにやっておく」は、文化背景の異なるメンバーが集まるチームでは、認識のズレを招く原因になりかねません。

✕ 悪い例

I fixed the bug.”
(バグを直しました)

◎ 良い例

I fixed the login error (Issue #123) by updating the API endpoint. I verified it on the staging environment. Please review the PR link below.”
(ログインエラー#123をAPIエンドポイントの更新により修正しました。ステージング環境で検証済みです。以下のPRリンクを確認してください)

②必要なのは英語力よりも「論理的思考力」

このように、主語、目的語、背景、根拠を明確に記述することが求められます。情報を網羅し、後続のやり取りを減らせるほど、ドキュメントとしての完成度は高くなります。

これは英語力だけの問題ではありません。相手が知りたい情報を整理し、論理的な順番で伝える力です。英語であっても日本語であっても、この力がある人ほど仕事はスムーズに進みます。

【参考】英語初心者がすぐできる勉強法。効率インプット「4つのステップ」

クリエイターの「Deep Work(深い集中)」へのリスペクト

グローバル企業がテキスト文化を好む理由は、単に時差があるからだけではありません。ものづくりに携わるプロフェッショナルとして、お互いの価値ある時間を守るために以下のような配慮が根底にあります。

テキスト中心のコミュニケーションが生産性を生む

エンジニアやデザイナーなど、集中して考える仕事では、一度中断されるだけでも生産性が大きく落ちると言われています。

だからこそ、多くのチームでは急ぎでない内容をチャットで送り、相手が都合の良いタイミングで返信できるよう配慮します。これは効率化だけではなく、お互いの集中時間を尊重する文化でもあります。

テキスト中心のコミュニケーションは、お互いの集中時間を守りながら仕事を進められるため、結果として生産性の向上にもつながります。

【参考】“読める”錯覚。日本人が「英語のリーディング」で見落とす大事なこと

最後に:喋る練習の前に、まずは「書く練習」から

英語を話せるようになる努力は、これからも重要です。ただ、それだけがグローバルで働く条件ではありません。

AI翻訳や生成AIを活用しながら、正確なテキストを書き、論理的に情報を整理し、非同期で仕事を進める。こうした働き方は、すでに多くのIT企業で日常になっています。英語が苦手だからといって、最初から世界をあきらめる必要はありません。

まずは「書く英語」の小さな積み重ねから始めてみるのがおすすめです。

☑️GitHubにコメントを書く

☑️Slackで状況を報告する

☑️ドキュメントを英語でまとめる

アクトハウスでは、英語を学ぶだけでなく、実際の開発現場を意識したチャット、ドキュメント、GitHubでのコミュニケーションも重視しています。セブ島での実践を通じて、実際の英語案件に挑戦するような「非同期の訓練」を積むことが、キャリアを世界へと広げる一歩になります。

「話す英語」と「働く英語」は、必ずしも同じではありません。世界で仕事をするために求められる英語は、あなたが思っているよりもずっと実践的で、身につけやすいものになりつつあります。

少なくともIT業界では、英語を流暢に話せることだけが評価される時代ではなくなりつつあります。AIを活用しながら、論理的に書き、正確に伝えられる人材の価値が高まっています。

英語を話せるようになることを目標にするのではなく、英語を使って仕事ができるようになることを目標にする。その第一歩は、流暢に話すことではなく、相手に伝わる文章を書くことかもしれません。

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著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成=「+180 ビジネステック留学」の戦略・運営を主導。

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