2026.05.14
英会話が劇的に成長する「三人称」の表現で話す。「I」だけ文法からの卒業
英会話・英語のレベルを1段上げるコツは「三人称」
英語を学び始めた人が、いつまでも「初級者」の壁を超えられない決定的な理由。
それは、すべての思考が「I(私)」から始まってしまうことにあります。
日常会話でも、日記でも、ビジネスの場でも、私たちは無意識に自分の視点からしか言葉を紡ぎません。
「私は〜だと思う」
「私は〜をした」
しかし、この「自分語り」のループの中にいる限り、英語の引き出しは一向に増えず、表現は稚拙なまま停滞します。
英語力を一段上のステージに引き上げる唯一の、そして最も効果的なトレーニング。
それは、「あえて無理にでも”三人称”を主語にして事象を表現する」ことです。
なぜ「I」ばかりでは上達しないのか
「I play tennis.」
「I like this coffee.」
これらの文章は、主語が常に自分であるため、動詞の活用を気にする必要がありません。文法的な負荷が低く、思考が短絡的になりがちです。
一方で、三人称(He, She, It, That, This, もしくは特定の固有名詞)を主語に据えると、脳には心地よい「負荷」がかかります。
☑️三単現の「s」や「does / doesn’t」の処理が出てくる
☑️客観的な事実として事象を捉え直す視点が必須に
☑️動詞のバリエーションの拡大が発生
これらは、英語を話す・書く際の「引き出し」にほどよい成長痛を与えます。
この痛みこそが、あなたの英語を「子供の言葉」から「知的な大人の言葉」へと変えてくれます。
【実例】三人称への「言い換え」ビフォア・アフター
では、具体的な事例を通して、視点を切り替えることでどれだけ表現の解像度が上がるかを見ていきましょう。
パターン①「自分の感想」を「客観的な事実」に変換する(It / That)
初心者は、何かを説明するときに「I think it’s fun.(楽しいと思う)」のように、すべて自分の感情(I)をフィルターにして話しがちです。
これを「物(It / That)」を主語にした三人称の表現に切り替えてみましょう。
■ビフォア (Iで表現)
I think this movie is good.
(この映画、良いと思うよ。)
■アフター (三人称で表現)
That movie makes me happy.
(その映画は、私を幸せな気分にさせるよ。)
■■解説■■
「私が好きだ」という主観的な動詞から一歩引き、「映画(That movie)」を主語にする。主語が三人称に変わることで、動詞に makes(三単現のs)を乗せるという、英語特有の「論理の型」が脳に強制される。
「It / That makes me…」の形を日常的に使うようになると、感情だけでなく「何が、私をどうさせるのか」という因果関係を英語で捉える癖がつく。この視点シフトこそが、幼稚な自分語りから脱却し、表現に深みを持たせる第一歩。
パターン②「自分の感情」を「状況の説明」に変換する(It)
疲れた、忙しい、といった自分の状態を伝えるとき、私たちはつい「I am busy.」や「I am tired.」と口にしてしまいます。
これを「状況(It)」を主語にして言い換えることで、英語の表現力は一気に具体性を帯びていきます。
■ビフォア (Iで表現)
I am busy today.
(今日は忙しい。)
■アフター (三人称で表現)
It takes a lot of time to finish this task.
(このタスクを終わらせるには、多くの時間がかかる。)
■■解説■■
単に「私が忙しい」と言うのではなく、何が原因で時間が奪われているのかを「It takes…(時間がかかる)」という三人称の構文で表現する。
「It takes…」や「It works…(うまくいく)」といった三人称の主語を使いこなすには、動詞に s をつける意識が欠かせない。この「ほどよい成長痛」を伴う言い換えを繰り返すことで、英語の引き出しは確実に増え、状況を客観的に説明する「大人の英語」へと近づいていく。
パターン③「人物」の行動を多角的に捉える(He / She)
誰かの話をする際、初心者は「He is kind.」や「He helps me.」といった単純な動詞の羅列で終わらせがちです。
ここをあえて、その人の「具体的な行動」や「性質」を三人称の主語にして多角的に捉え直してみましょう。
■ビフォア (Iで表現)
I think he is a good teacher because he speaks slowly.
(彼はゆっくり話してくれるから、良い先生だと思います。)
■アフター (三人称で表現)
His English sounds very clear to me.
(彼の英語は、私にとって非常にクリアに聞こえる。)
■■解説■■
「私が思う」というフィルターを外し、「彼の英語(His English)」を主語に据える。これにより、主語が三人称単数になり、動詞に sounds(三単現のs)を乗せるという文法的な緊張感が生まれる。
また、「He is…(彼は〜だ)」という単調な説明から、「His [Noun] sounds…(彼の〜は…に聞こえる)」という構造にシフトすることで、表現の解像度が一段上がる。この「s」を落とさずに、より具体的な主語を選ぶトレーニングこそが、英会話の停滞期を打破する鍵となる。
「三単現のs」という、最高の脳トレ
三人称を頻繁に使うようになると、嫌でも向き合わなければならないのが「三単現のs」の壁です。
☑️It makes sense.
☑️That doesn’t work for me.
☑️He seems busy.
これらは、知識としては知っていても、いざ会話の中で自然に出すのは意外と難しいもの。
否定文になれば doesn’t が現れ、疑問文なら Does it…? となる。この「s」を常に意識し、口と頭を同期させるプロセスは、英語脳を鍛えるための最も効率的な筋トレです。
「I」で話していれば避けて通れるこの成長痛を、あえて自分に課すこと。それが、単なる「単語の羅列」から「構造的な英語」へと脱皮するための唯一の道です。
三人称視点がもたらす「知的な会話」
三人称を主語にする能力は、ビジネスや議論の場において致命的な差となります。
自分の意見を「I want…」で突き通すのではなく、「The data suggests that…(データが示唆しているのは…)」や「This strategy aims to…(この戦略が狙いとしているのは…)」と言い換える。これだけで、あなたの言葉には「客観性」と「説得力」が宿ります。
事象を自分の外側に置き、それを三人称の主語として記述する。このマインドセットが定着したとき、あなたの英語の引き出しは、以前とは比べものにならないほど豊かになっているはずです。
さいごに:今日から「私」を主語にするのを「半分」に減らそう
今すぐ、メモ帳や英会話のレッスンで試してみてください。
「I think…」と言いそうになったら、一度止まる。
そして、目の前のモノ、その場の状況、あるいは特定の誰かを主語にして文章を組み立て直してみる。
最初は詰まるかもしれません。
三単現の「s」を忘れるかもしれません。
しかし、その「言えそうで言えない」もどかしさこそが、あなたの英語力が一段上のステージへと押し上げられている瞬間なのです。
自分という狭い視点を捨て、三人称で世界を描写すること。
それが、AI時代においても揺るがない、あなたの「言語化能力」を磨く本質的なトレーニングになります。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。