トンマナとは「経営判断」。Web制作を脇役に追いやるブランディングの正体

「トンマナ(トーン&マナー)」という言葉を、単なる「デザインの統一感」や「Webサイトの配色のルール」だと思っていませんか?

もしそうなら、その認識はビジネスにおいて致命的に遅れています。

Web制作は、もはや主役ではありません。それはブランドという巨大な思想を表現するための、単なる「一手段」であり、脇役に過ぎないのです。

トンマナの本質とは、クリエイティブ領域の話ではなく、経営戦略そのものです。

「我々は何者であり、何者ではないか」を定義し、市場における立ち位置(ポジショニング)を確定させるための「憲法」。それがトンマナの正体です。

アクトハウスが「Web制作クリエイター」という古臭い枠組みを超え、「ビジネステック人材」を育成するのは、この上流工程(Marketing/Strategy)を支配できる人間こそが、AI時代に生き残ると確信しているからです。

本稿では、Web制作という狭い視座を捨て、ビジネスを成功に導くための「ブランディングとしてのトンマナ論」を展開します。

信頼は「一貫した人格」に宿る

なぜ、企業にはトンマナが必要なのか。それは「信頼コスト」を最小化するためです。

人間関係で考えてみてください。会うたびに性格が変わり、発言内容がコロコロ変わり、服装の趣味も定まらない人物を、あなたは信用できるでしょうか? 「この人は何をしでかすか分からない」という不安は、ビジネスにおいて最大の障壁となります。

企業も同じです。

Webサイトは高級ホテルような佇まいなのに、SNSでは安っぽい居酒屋のようなノリで発信し、営業資料は小学生の作文のよう。このようにタッチポイントごとに人格が分裂している企業に対し、顧客は無意識に「不気味さ」を感じ、財布の紐を固くします。

逆に、いつ、どこで接しても、期待通りの「そのブランドらしさ」が返ってくる。この「予測可能性」こそが安心感を生み、やがて強固な信頼(ブランド・エクイティ)へと変わります。

AppleやStarbucksが強いのは、Webサイトが綺麗だからではありません。店舗、接客、パッケージ、広告、すべての顧客接点において、トンマナという名の「人格」が徹底的に統制されているからです。トンマナとは、顧客の脳内にブランドの居場所を作るための、極めて論理的な経営投資なのです。

Webサイトは「下流」のアウトプットに過ぎない

多くのWeb制作者や初心者は、「Webサイトを作ること」をゴールにしがちです。しかし、ブランディングの視点では、Webサイトはトンマナという憲法に基づいた「一つの法律(アウトプット)」に過ぎません。

順序を間違えてはいけません。

 

× Webサイトのデザインに合わせて、ブランドの雰囲気を決める。

○ ブランドのトンマナ(憲法)があり、それに従ってWebサイトを設計する。

 

もしトンマナが確立されていれば、Webサイトだけでなく、パンフレットも、名刺も、YouTube動画も、オフィスデザインも、すべて自動的に決まります。「このブランドなら、この色は使わない」「このフォントは選ばない」という判断基準が明確だからです。

アクトハウスのカリキュラムにおいて、Web制作技術(Logic Prompt / Art&Science)を学ぶ前に、徹底的なマーケティング戦略(Strategy)を叩き込むのはこのためです。

「誰に、何を、どう伝えるか」という戦略がないままFigmaを開くのは、地図を持たずに航海に出るようなものです。Web制作スキルは、戦略を具現化するための「道具」であって、それ自体が目的ではありません。

トンマナを構成する「視覚」と「言語」

では、経営判断としてのトンマナは、具体的に何で構成されるのか。大きく分けて「Visual(視覚)」と「Verbal(言語)」の2つです。

①Visual Identity(視覚的統一)

ロゴ、カラーパレット、タイポグラフィ、写真のトーン、余白の扱い。

これらは単なる装飾ではありません。「我々は革新的である」「我々は伝統を重んじる」といった非言語のメッセージを、0.1秒で脳に届けるためのシグナルです。

「青なら何でもいい」のではなく、「信頼と知性を表す特定のカラーコードの青(#XXXXXX)」でなければならない。この厳密さがブランドの解像度を高めます。

②Verbal Identity(言語的統一)

キャッチコピー、タグライン、文体、語彙の選び方。

「〜です、〜ます」調なのか、「〜だ、〜である」調なのか。専門用語を使うのか、平易な言葉で語るのか。

アクトハウスの記事が常に「インテリジェンスで硬派」な文体で統一されているのも、ターゲットである「本気で人生を変えたいガチ勢」を選別し、彼らに刺さるための意図的なトンマナ戦略です。言葉選び一つで、集まる顧客層は劇的に変わります。

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「捨てる」勇気がブランドを作る

トンマナを定義することは、何かを選ぶこと以上に、「何かを捨てる」ことの連続です。

「親しみやすさ」を選ぶなら、「高級感」や「権威性」はある程度捨てなければなりません。「安さ」を売りにするなら、「上質なサービス」というイメージは捨てざるを得ません。

最悪なのは、八方美人になろうとして「あれもこれも」詰め込むことです。結果、何の特徴もない「無難な」ブランドになり、価格競争の波に飲み込まれます。

「私たちは、これではない」

「私たちは、こういう顧客とは付き合わない」

この「Not」を明確に定義すること。勇気を持って捨てること。この引き算の美学が、鋭利なトンマナを生み出し、ターゲットの心に深く突き刺さる「代替不可能」なブランドを創り上げます。経営とは、捨てることと同義です。

AI時代こそ「ブランド・ガーディアン」が必要

生成AIの登場により、画像や文章の生成コストはゼロになりました。しかし、これはブランディングにとって諸刃の剣です。

AIは放っておくと、毎回微妙に違うテイストのアウトプットを出してきます。ある時はアニメ調、ある時は写実的。これを無自覚に使い続ければ、ブランドの人格は崩壊し、顧客は離れていきます。

だからこそ、AI時代には「作る人(Creator)」以上に、「守る人(Guardian)」の価値が高まります。

AIが出してきた無数のアウトプットの中から、自社のトンマナに合致するものだけを厳選する「審美眼」。あるいは、プロンプトを制御して、ブランドの世界観から逸脱させない「統率力」。

アクトハウスが育成するのは、自ら手を動かすだけの作業員ではありません。AIという強力なエンジンを使いこなしながらも、ハンドリングを誤らず、ブランドという車体をゴールへ導く「ドライバー(設計者・評価者)」です。

Webサイトは古びるが、トンマナは資産になる

Webのデザインにはトレンドがあります。3年もすれば技術は古くなり、リニューアルが必要になるでしょう。Webサイトという「容器」は、消費される運命にあります。

しかし、その根底にあるトンマナ(ブランドの魂)は、10年、20年と積み重なり、企業の資産(ブランド・エクイティ)となります。

NikeのWebサイトが変わっても、Nikeの「Just Do It」の精神性が変わらないように。

あなたがこれから目指すべきは、使い捨てられるWebサイトを作る「下請け業者」ですか?

それとも、企業の永続的な価値を設計し、ビジネスを成長させる「ブランディング・パートナー」ですか?

もし後者を目指すなら、小手先のコーディングテクニックよりも先に、ビジネスの背骨となるトンマナを設計する力を身につけてください。

アクトハウスは、そのための戦略眼と技術を、半年間で徹底的にインストールします。

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著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

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