ノーコードツール(Studio/Wix)の台頭。Web制作の民主化とプロの価値

「Webサイトを作る」という行為の特権性は、完全に崩壊しました。

かつてはHTMLやCSS、サーバーの知識を持つ一部の技術者だけが立ち入れた聖域でしたが、StudioやWix、Shopifyといったノーコードツールの進化により、その壁は消滅。今や、デザインの知識・経験がない学生でも、あるいはITに疎い経営者でも、テンプレートを選んでドラッグ&ドロップすれば、そこそこ見栄えの良いWebサイトを数時間で公開できます。

この「Web制作の民主化」は、クリエイターを目指す人々にとって、一見すると絶望的なニュースに思えるかもしれません。「誰でも作れるなら、プロに頼む必要はないじゃないか」「単価が暴落して食っていけないのではないか」。

しかし、アクトハウスの認識は異なります。この状況は、真のプロフェッショナルにとっては「好機」でしかありません。なぜなら、ツールが普及すればするほど、「ツールを使えるだけの人(オペレーター)」と、「ツールを使ってビジネスの結果を出せる人(ビジネステック人材)」の格差が残酷なまでに拡大するからです。

本稿では、ノーコード全盛時代における「プロの存在意義」と、アクトハウスが育成する「選ばれるクリエイター」の条件について論じます。

「デジタルゴミ」の量産と、漂流するクライアント

誰でもWebサイトが作れるようになった結果、世界に何が溢れたか。それは、機能しない「デジタルゴミ」の山です。

「とりあえずWixで作ってみたけれど、誰も見てくれない」

「Studioで綺麗なサイトはできたが、問い合わせが一件も来ない」

「テンプレート通りのデザインで、自社のブランドの強みが伝わらない」

これが、Web制作の民主化が生んだ副作用です。包丁を買えば誰でも料理はできますが、プロのシェフになれるわけではありません。同様に、ノーコードツールを手に入れても、それは「箱」を作る手段を得たに過ぎません。その箱をどう設計し、何を入れ、どう届けるかという「戦略」がなければ、Webサイトはただの電子データの塊です。

クライアントもそのことに気づき始めています。「安く作れる」ことと「売れる」ことは別次元の問題だと。だからこそ、彼らは今、単にサイトを作れる人ではなく、「なぜサイトが必要で、どうすれば成果が出るか」を語れるパートナーを探して漂流しているのです。

ノーコードの限界を突破する「技術的裏付け」

ここで重要になるのが、アクトハウスが重視する「Logic Prompt(プログラミング)」の知見です。「ノーコードだからコードは不要」というのは素人の発想です。プロは「ノーコードの限界」を知っているからこそ、コードの知識を武器にします。

例えば、Studioで標準機能では実装できない複雑なアニメーションや、外部データベースとの特殊な連携を求められた時。コードを知らない制作者は「できません」と断るか、代替案でお茶を濁すしかありません。

しかし、HTML/CSSやJavaScriptの構造(ロジック)を理解しているアクトハウス生であれば、「Google Tag Managerとカスタムコードを組み合わせれば実装可能です」と解決策を提示できます。

また、ドメイン設定やDNSのトラブル、SEO(検索エンジン最適化)の内部構造といったインフラ周りの知識も、プロの領域です。見た目はノーコードで作れても、裏側の配管(インフラ)が正しく接続されていなければ、サイトは正常に機能しません。

トラブルが起きた時に、ツールの仕様のせいにして諦めるのか、技術的知見を総動員してねじ伏せるのか。この「対応力」の差が、プロとしての信頼度を決定づけます。

「作る」ことの価値はゼロに近づいている

厳しいことを言いますが、「言われた通りのデザインを、言われた通りにWebサイトにする」だけの仕事は、今後限りなくゼロ円に近づいていきます。それはAIやノーコードツールが最も得意とする領域だからです。

これからのプロの価値は、「Making(制作)」ではなく「Thinking(思考)」と「Direction(指揮)」に移行します。

クライアント:「Webサイトを作りたいんだけど」

アマチュア:「分かりました。WixとStudioどちらがいいですか? どんなデザインにしますか?」

プロ(アクトハウス生):「そもそも、なぜWebサイトが必要なのですか? 御社の課題が『採用』にあるなら、Webサイトをリニューアルするよりも、Instagram広告とLP(ランディングページ)の連携に予算を割くべきかもしれません」

このように、手段(Web制作)の前段階にある「目的(Marketing/Strategy)」に踏み込み、最適なソリューションを提案する。その結果として、スピード重視ならStudioを選び、拡張性重視ならWordPressを選び、あるいはWebサイトを作らないという選択肢さえ提示する。

ツールはあくまで「選択肢の一つ」に過ぎません。特定のツールしか使えない人は、そのツールの枠内でしか発想できませんが、技術とビジネスの両方を知る人間は、あらゆる手段を組み合わせて最短ルートを描くことができます。

もしあなたが、ツールの操作方法を覚えることだけに必死になっているなら、それはコモディティ(代替可能な部品)への道を歩んでいることになります。ツールに使われるのではなく、ビジネスを動かす側へシフトしましょう。

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ノーコードは「ビジネス速度」を最大化する武器

アクトハウスでは、ノーコードツールを否定しません。むしろ、積極的に活用を推奨しています。それは「楽をするため」ではなく、「ビジネスの速度(Velocity)を上げるため」です。

かつて2ヶ月かかっていたコーディング期間を、Studioを使って1週間に短縮できれば、残りの期間をマーケティング施策のテストや、コンテンツのブラッシュアップに充てることができます。クライアントにとって、納品までのスピードはそのまま利益に直結します。

アクトハウスの実務カリキュラムでも、予算や納期がタイトな案件では、あえてノーコードを選定し、浮いたリソースをSEO対策やコピーライティングに投下するといった戦略的な判断が行われます。

ここでも求められるのは「Reader/Reviewer(設計者・評価者)」としての視点です。

「この案件の規模と将来性を考えると、今はStudioでスモールスタートし、軌道に乗ったらフルスクラッチで作り直すのが合理的だ」

このようなロードマップを描けるのは、ノーコードとコード、双方のメリット・デメリットを深く理解している人間だけです。

結論:民主化は「本物」を際立たせる

Web制作の民主化は、クリエイターの淘汰を加速させます。

中途半端なスキルしか持たない「なんちゃってクリエイター」は、ノーコードツールとAIに仕事を奪われ、市場から退場することになるでしょう。

しかし、それは悲観すべきことではありません。

誰でも作れる時代になったからこそ、「誰が作るか」「どんな戦略で作るか」という付加価値の部分に、正当な対価が支払われるようになるからです。

アクトハウスの180日間は、その「付加価値」を身につけるための期間です。

Logic Promptで技術の裏付けを持ち、Art&Scienceでブランドを設計し、Marketing/Strategyでビジネスを勝利に導く。

ツールが進化すればするほど、それを操る人間の「知性」と「覚悟」が問われます。

あなたは、テンプレートを埋めるだけの作業員で終わりますか?

それとも、テクノロジーを武器にクライアントのビジネスを変革するパートナーになりますか?

Webの民主化を味方につけ、プロフェッショナルとして生き残るための戦略。

そのすべてを、セブ島でインストールしてください。

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著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成に従事。

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