2026.06.04
半実録ドキュメント:山岡さんの半年間。「FDE」仕事の現場レポート
【1カ月目:前半】”パソコンを開かないエンジニア”の現場観測
これは、ギャラクシーDX株式会社に所属するFDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)の山岡が、全国展開のアパレルブランド「ライフ&マイン」にアサインされ、現場の業務構造を再設計していった「半年間」の生々しい活動記録です(※名称はすべて仮称)。
巷にあふれる「仕様書通りにコードを書くだけのエンジニア」とは異なり、現場の最前線に入り込んでビジネスの構造そのものをハックしていくのがFDEの仕事。
彼らは何を考え、どのように現場へ潜り込み、次の価値を生み出していくのか?
初月から巻き起こる“人間関係のこじれ”や、仕様崩壊の引き金となった現場のリアルな歪みまで。FDE・山岡が駆け抜けた激動のストーリーを、「1カ月目:前半」から克明に振り返っていきます。
店長の後ろに立って「現場」を知る

プロジェクトの初日、山岡はアパレルショップ「ライフ&マイン」の渋谷店に私服姿で現れました。
彼のバックパックにはノートPCが入っていましたが、最初の1週間、そのPCがデスクやカウンターの上で開かれることはほとんどありませんでした。他のスタッフが忙しく品出しや接客に追われる中、山岡が最初に行ったのは、店長の後ろに立ち、その一挙手一投足を手帳にメモすることでした。店舗のバックヤード、レジのカウンター裏、そして開店前のミーティングなど、店長が動くすべての場所に山岡の姿がありました。
当時の現場では、長年運用されてきた勤怠・シフト管理の基幹システム「Atlas(アトラス)」が稼働していましたが、店舗運営のリアルな負荷やスピード感には全く追いついていませんでした。
山岡が店長の真横に張り付きながら観測したのは、システム化という言葉とはほど遠い、以下のような分断された泥臭い手作業、まさに「問題」の連続でした。
【問題①】手動運用の混在
システムにシフトの枠はあるものの、スタッフからの突発的な休み希望、有給の申請、近隣店舗との間で行われる急なスタッフの貸し借り調整は、すべて店長が手元のExcelやチャットアプリで個別に対応していた。
【問題②】多重入力の負荷
Excelやチャットの上でようやく確定させた複雑なシフト情報を、店長は深夜の誰もいないオフィスでAtlasの古い画面を開き、1マスずつ手入力で再転記が生じていた。この二重のデータ入力作業が店長の貴重な実務時間を奪い、慢性的な長時間労働の温床となっていた。
【問題③】予測の属人化
過去の売上データや来客数のデータがシフト管理システムと完全に分断していた。店長は自身の「長年の勘と経験」だけで明日の人員配置を決定。結果として、週末の繁忙期にスタッフが不足してレジに長蛇の列ができ、機会損失が生まれる一方で、平日の閑散期には人員過剰で無駄な人件費が膨らむという構造的な問題を内抱していた。
〜日々のヒアリングや雑談から見えてきたこと〜
店長へのヒアリングや雑談を重ねる中で、山岡は「もっと入力画面を使いやすくしてほしい」「ボタンの配置を分かりやすくしてほしい」という、店長自身が口にする表面的な要望の奥にある、本質的な課題を注意深く抽出していきました。
店長が本当に疲弊していたのは、キーボードを叩く入力の手間そのものではなかったのです。「日々激しく変動する店舗の売上予測」「総勢数十名に及ぶスタッフの細かな希望」「労働基準法を遵守するための複雑な勤務インターバル」という、互いに矛盾し合う無秩序なデータ群を、すべて自分の頭の中だけで同時に組み立てなければならないという、脳内での「構造化」の負荷にありました。山岡はこの問題を、単なる「システムの使い勝手の悪さ」ではなく、ビジネス全体の「構造問題」として定義しました。
☑️ポイント:エンジニアでありながら、最初の数日間をコードのバグ探しではなく、人間の脳内プロセスの解剖に費やすこと。現場との密なコミュニケーション。これこそがFDEの最初のステップです。
【1カ月目:後半】「動く画面」がもたらした現場の意識変化

店舗の観察を開始してから2週目の後半に入り、山岡はようやくバックパックからPCを取り出し、デザインツールである「Figma」を動かし始めました。ここで彼が作成したのは、Webデザイナーがクライアントへのプレゼンで使うような、単なる綺麗な静止画のデザインカンプではありません。ボタンをクリックすれば実際に画面が切り替わり、ポップアップが表示され、データの並び替えができる「動くプロトタイプ」です。
現場の声を、その場でFigmaでアレンジしていく
山岡は、従来のAtlasが採用していた「1日単位、1人単位でテキストを打ち込む古い管理画面」を完全に排除しました。新しいデザインでは、店舗間のスタッフ移動のステータスや、時間帯ごとの人員の過不足が、色とグラフィックの視覚的な変化によって直感的に理解できる操作導線(UX)を設計したのです。
このプロトタイプをノートPCの画面に映し出し、山岡は店舗の休憩室で店長に直接触ってもらいました。実システムに近い手触りを感じてもらいながら、店長が少しでも操作に迷ったり、視線が泳いだりした瞬間を見逃さず、その場でFigmaのデータを書き換え、UI(ユーザーインターフェース)の配置を修正していきました。
直感的なドラッグ&ドロップ
Excelで行われていたスタッフの貸し借り調整を、画面上のスタッフのアイコンを隣の店舗枠へドラッグするだけで完了する仕様に変更。
アラートの視覚化
労働基準法の基準に抵触するようなシフトが組まれそうになった場合、文字の警告文を出すのではなく、該当する時間枠が赤く反転して直感的に危機を察知できるデザインを採用。
〜店長の反応が少し変わった〜
「これなら、深夜にわざわざExcelからシステムへ転記する作業そのものが消えるかもしれない…」と、操作を終えたライフ&マインの店長の表情が少し、変わりました。
従来のような、分厚いシステム要件定義書を文字ベースで交わすやり方では、現場の人たちは完成形を想像できません。しかし、実際に手で触れる動くUXを目の前で見せることで、現場の人間すら自覚していなかった「理想の業務フロー」が言語化されていきます。
【参考】なぜエンジニアにデザインが必要か?事例から学ぶFDEの問題解決ロジック
☑️ポイント:FDEは、デザインを単なる見た目の美しさ(アート)としてではなく、業務を円滑に回すための論理的な設計(サイエンス)として活用します。「なにが、いい感じか」をつかんでいきます。
【2カ月目:前半】デザインとプログラミングで試作に着手

プロジェクトが2カ月目に突入すると、山岡はデザインの検証を終え、いよいよ本格的なバックエンドとフロントエンドの実装フェーズへと移行しました。ここで彼の思考は、UXのレイヤーから、強固なデータを構築する実装のレイヤーへと切り替わります。
Python、TypeScriptで構築を試みる
山岡はまず、客先であるライフ&マインの本部システムに眠っていた過去3年間におよぶ詳細な売上データ、曜日ごとの客数の推移、店舗周辺で開催された過去のイベント情報、さらには日々の気象データといった、これまで完全にバラバラに存在していた外部要素やマーケティングデータを洗い出しました。これらを一つの中央データベースへと統合し、クレンジングする仕組みをPython(パイプラインスクリプト)を用いて構築していきます。
このデータ統合により、「この曜日のこの天気であり、近隣でこうしたイベントが重なる条件であれば、この時間帯にはこれだけの来客数と売上が見込める」という、高精度な予測モデルのベースがサーバーサイドで形作られていきました。
同時に、フロントエンドの画面はTypeScriptを用いて構築され、Figmaで店長と約束した滑らかな操作画面が、一切の遅延なくデータと連動して動く環境が整えられていきました。静的なデザインが、本物のシステムへと昇華していく瞬間です。
テスト環境にデータが流し込まれ、実際の売上予測とシフトの枠が美しく連動して動く様子を見たライフ&マインの本部スタッフや経営陣からは、「これで我が社の長年の課題だったシフト管理の自動化に、完全に目処が立った」と大きな拍手と安堵の声が上がり、プロジェクトは極めて順調に進んでいるように見えました。山岡自身も、この時はシステムの完成を疑っていませんでした。
しかし─
【2カ月目:後半】仕様の崩壊と現場の拒絶:自らの傲慢さとの直面

しかし、2カ月目の後半、実際の店舗で限定的な試験運用(パイロットテスト)を開始した直後、山岡は自らのキャリアの中でも最大級の壁にぶつかることになります。彼が完璧に組み上げたはずの仕様が、現場のリアルな現実の前に音を立てて崩壊したのです。
新システムが弾き出した「売上予測に基づいた最適なシフト配置案」を実際の店舗に適用したところ、現場のスタッフたちから激しい不満と反発の不協和音が噴出しました。
理論上は100点、現場では「0点」
Pythonで構築したアルゴリズムは、売上予測のロジックと労働基準法の法的制約を完全にクリアしていました。机の上の計算、ロジックの美しさとしては、100点満点のシフト案だった。しかし、実際の店舗という生き物のような現場には、データ化されていない、人間にしか分からない特有の力学が存在していました。山岡のシステムは、その人間らしい「現場の文脈」完全に無視してしまっていたのです。
【トラブル①】人間関係の相性問題
AIは「能力値の合計」だけでシフトを組んだため、感情的に折り合いの悪いベテランスタッフと新人の組み合わせを頻繁に発生させ、現場のコミュニケーションが硬直した。
【トラブル②】隠れたスキルの無視
データ上は同じ「販売スタッフ」であっても、特定の人物が持つ「高度なラッピング技術」や「VMD(店舗ディスプレイ)の専門知識」といった、システムのデータベースに登録されていない職能が考慮されず、重要なセール日に実務が回らない事態が頻発した。
〜そのシステムを使うのは人間〜
店舗の空気は一気に冷え込み、現場からは新システムに対する強い拒絶反応が起こりました。店長からも、申し訳なさそうな、しかし諦めに満ちた声で「山岡さん、やっぱり機械にシフトを任せるのは、うちの店では無理があるのではないかと思います。来週からは元のExcel運用に戻させてください」という言葉を告げられてしまいます。
この時、山岡は強い衝撃とともに、自分自身の傲慢さを突きつけられる思いでした。「現場に張り付いてすべてを理解した気になっていたが、自分はただ、現場を都合の良いデータとしてしか見ていなかったのではないか」という激しい揺れと反省が彼を襲いました。システムが動かない原因はアルゴリズムのバグではなく、人間の感情や関係性という「非論理」を排除した、自分の設計思想そのものにあったのだと気づかされたのです。
〜答えはパソコンの中でなく「現場」にあった〜
山岡はデスクに籠もってコードを修正する逃避を止め、再び店舗の現場へと足を運びました。彼は店長に深く頭を下げ、休憩時間や閉店後の時間を使って、不満を漏らしたスタッフ一人ひとりと徹底的に対話を重ねました。彼らが何に怒り、何に困っているのかを、手帳に書き殴っていったのです。
そして、彼らの言葉の中に隠されていた「人間関係の相性」や「数値化されていないスキル」を、システムが理解できるルールへと泥臭く翻訳していきました。
技術の正論を現場に無理やり押し付けるのではなく、現場の不条理な人間の現実に合わせて、システム側を柔軟に適応させること。このコミュニケーション層における粘り強い対応と、自らの失敗を認める姿勢によって、システムは単なる「冷たい機械」から「現場を支える道具」へと、徐々に現場の信頼を取り戻していくことができました。
【参考】職種を1つに絞るのが怖い人へ。10年後も迷わない「FDE」という選択肢
☑️ポイント:FDEの本当の強さは、完璧なコードを書く万能感ではなく、こうした仕様の崩壊から逃げずに泥臭く泥をすする人間性の中にあります。コミュニケーションという言葉ではくくれない、深い洞察と現場への執着です。
【3カ月目〜4カ月目】「Atlas Nexus」の誕生とClaude / GPTによるAI業務実装

現場の泥臭い力学を身をもって吸収した3カ月目、山岡はプロジェクトをさらに前進させるため、大規模言語モデル(LLM)のAPIを活用した本格的なAI業務実装へと舵を切りました。
前回のトラブルから学んだ最大の教訓は、人間の業務は「固定された静的なアルゴリズム」だけでは制御しきれないという事実。そこで山岡は、システムの中心にClaudeやChtaGPTといった先進的なAIモデルを組み込み、店長が自由な言葉(自然言語)でシステムと対話しながら、AIの提案を直感的に微調整できる、新しいインターフェースを開発しました。
ロジックプロンプトから導く本当の正解
ここで生かされたのが、山岡が持つ「Logic Prompt(ロジック・プロンプト)」のスキルです。AIに対して、ただ漠然と「シフトを作って」と指示を出すのではありません。現場の泥臭いヒアリングから得た、データ化しにくい文脈を、論理的なプロンプトの構造として定義し、AIに厳密に学習・遵守させました。
【対応策①】スタッフの定性的文脈設定
「AさんとBさんは同じ時間帯に配置しない」「新人Cさんの横には、必ずフォロー能力の高いベテランDさんを配置する」といった現場の相性ルールをプロンプト側で構造化して記述した。
【対応策①】イベント情報の多層的解釈
店長が「来週の金曜日はメディアに露出するセールがある」と画面に入力した際、AIがその言葉の背景にある「通常時の3倍のレジ人員が必要」「ラッピングスキルを持つスタッフを最低2名配置すべき」という隠れたニーズを論理的に分解して解釈した。
〜人と業務とシステムが「一つの線」に〜
この論理設計により、店長が自然言語で指示を出すだけで、蓄積された過去の売上データ、気象予測、そして現場の細かな人間関係の制約条件をすべてクリアした「血の通ったシフト案」を、AIが自動で複数パターン出力する仕組みが完成しました。
4カ月目の終わり、この次世代システムは「Atlas Nexus(アトラスネクサス)」と命名され、ライフ&マインの全国すべての店舗へと正式にデプロイ(配置)されました。
効果は劇的でした。これまで店長が毎週木曜日の深夜に頭を悩ませ、ExcelとAtlasの画面を往復しながら数時間かけて作っていたシフト作成時間は、AIの高度な自動提案と洗練された操作性により、わずか「数分」へと短縮されたのです。
データの二重入力や手作業の隙間がなくなり、売上データ、勤怠データ、Staffのエンゲージメントが、一つの美しいシステムの中で完全に統合されました。ライフ&マインの店舗運営において、業務が文字通り「つながる状態」へと生まれ変わった瞬間でした。
【5カ月目〜6カ月目:前半】知見の再利用モデル「Atシリーズ」への昇華

プロジェクトが終盤となる5カ月目以降を迎えると、山岡の視座はライフ&マインという一企業の課題解決から、さらに上の次元へと引き上げられることになりました。
多くの従来のシステム受託開発やSES(システムエンジニアリングサービス)の現場では、一社の開発が完了してシステムが安定稼働すれば、エンジニアの仕事はそこで終了です。契約期間の満了とともにチームは解散し、エンジニアはまた別の新しい現場へと移り変わっていきます。その過程で得られた貴重なドキュメントや泥臭い現場の知見は、エンジニア個人の経験としては残るものの、組織全体のビジネスを拡大するための資産(レバレッジ)にはなりにくいという、構造的な弱点を抱えていました。
【参考】AI時代の新職種「FDE」とは何か【ITコンサル・SES・受託との違い】
知見を活かし、次のモデルへ展開するのがFDE
しかし、山岡がAI時代の「FDEモデル」とは、ここからが本当のスタートラインとなります。彼らは、今回のライフ&マインのプロジェクトを通じて得られた「光の当たりにくいレガシーな現場の業務プロセスを解剖し、AIとUXを駆使して強固なシステムへと構造化する」という極めてコアな知見を、一社限定のカスタム開発で終わらせるつもりは最初からありませんでした。
山岡は、Atlas Nexusの基盤となったアーキテクチャを徹底的に解剖し、他業界へも迅速に横展開できる、汎用的な知見再利用モデルへと昇華させる戦略を動かし始めました。これが、自社プロダクト群である「Atシリーズ」への接続です。
単なる「ノウハウの共有」という抽象的な話ではありません。山岡は、Atlas Nexusから以下の「3つの具体的なソフトウェア共通基盤」を切り出し、パッケージ化(塊に変形)したのです。
①業務データ統合基盤(データレイヤー)
散らばった売上、勤怠、外部環境データを一元化し、クレンジングするPythonベースのパイプライン。
②AI意思決定コア(ロジックレイヤー)
Logic Promptによって制御され、定性的な人間の制約条件と定量的な予測データを掛け合わせて最適解を出すLLM連携モジュール。
③UXコンポーネント(UIレイヤー)
現場の人間が直感的にドラッグ&ドロップで操作でき、アラートを視覚的に察知できるFigma発のフロントエンドテンプレート。
【参考】最先端AI職種「FDE」へとキャリア転向するビジネステックな処世術
☑️ポイント:これらデータ、ロジック、UIが三位一体となった共通基盤の構築こそが、単なる一過性の受託開発で終わらせないFDEの真骨頂です。この検証済みの「3つの塊」があらかじめ用意されているからこそ、次の展開のおいてゼロから開発する無駄を徹底的に排除し、他産業が抱える固有の課題解決へと迅速に舵を切り、ビジネスの拡張をすることが可能となります。
【5カ月目〜6カ月目:後半】業界横断の展開とグローバル市場への布石

業界ごとに完全にゼロからシステムを作り直すのではなく、この検証済みの「3つの塊」を再利用し、それぞれの業界特有のデータやルールを流し込んでいくことで、圧倒的なスピードで高品質なプロダクトを展開していきます。具体的には、以下のような業界横断のプロダクト展開が、山岡たちの手によって設計・進行していきました。
現場の知見を次のサービスへ。ビジネスを生み出せるのがFDE。
①At-Care(医療・介護領域)
24時間365日体制での極めて複雑な勤務シフト、看護師や介護士の保有資格やスキルレベル、突発的な急患対応やドタキャンに伴う人員の過不足といった、アパレル以上に不条理の多い医療現場のオペレーションを、共通基盤を用いてAIで最適化。
②At-Drive(モビリティ・配送領域)
日々の荷物量や交通状況に応じた最適な配送ルートの選定、ドライバーの労働時間管理、リアルタイムの配車データと組み合わせた人員の適正配置をサポートするシステム。
③At-Logistics(物流・倉庫管理領域)
季節のトレンドや大型セール期ごとに急激に激変する入出荷の荷物量予測と、それに伴う広大な倉庫内スタッフの最適な配置、検品・ピッキング業務の効率化をデータ駆動で支援。
そして、プロジェクトが半年目を迎えた現在、このAtシリーズのロードマップは日本国内の市場だけにとどまらず、さらに壮大なグローバル市場を見据えた設計へと突入しています。言語の壁や海外特有の商習慣、労働法規の違いをクリアするため、Atシリーズのすべてのコアシステムにおいて多言語対応、および英語版としてのアーキテクチャの再設計がFDE山岡の手によって進められています。日本国内の極めて細やかで要求水準の高い業務フローをクリアした実績を持つシステム構造は、海外の深刻な人手不足に悩む現場においても、非常に高い適応力と競争力を持つと考えられているためです。
国内で醸成された技術を世界で回す「知見のループ」へ

具体的な海外進出の足がかりとして、米国を拠点とするビジネスパートナーである「LVILIA(仮称)」との間で、共同マーケティングおよびシステム連携の協議がスタートしています。LVILIAは、単なる海外展開の仲介業者ではありません。「北米市場におけるエンタープライズ(大企業)向けSaaS導入支援の有力パートナー」であり、現地の大企業のレガシーな業務フローに深い土地勘を持つ専門家集団です。
まずは日本国内の各業界においてAtシリーズの定番化を確実に行い、そこで得られた膨大な検証データと確かなファクトの積み上げを完了させた後、その洗練された構造を持って、LVILIAと共に欧米のレガシーな現場業務を抱える大企業市場へと一気に展開していく計画です。海外で得た知見は再び、国内のサービスへも反映される「知見ループ」を生み出します。
これらは決して確定した予定ではなく、現時点では中長期的な「構想・設計」の段階として進行しているフェーズですが、FDEという仕事が、半年前のあの日、アパレル店舗の片隅で手帳を広げて店長の動きをじっと観察していた泥臭い一歩から始まり、一度は仕様の崩壊という絶望を味わいながらも、最終的には世界のビジネスインフラを再設計するグローバルなスケールへと、一切のブレなく地続きで繋がっていることを、この海外展開構想は明確に証明しています。
※本記事はFDEの業務イメージを伝えるための構成事例であり、実際の内容には一部フィクションを含みます。
〜あとがき〜
半実録のドキュメント、いかがだったでしょうか。当サイト、アクトハウスを運営する会社はエンジニア派遣も行っておりFDE領域にも着手しているため、今回の半ドキュメンタリーの執筆に至りました。
従来の「客先に出向いて仕様書通りのコードを書いて終わり」という従エンジニアではなく。というか、そのような役目はどんどんAIに淘汰されていきます。
この記事の山岡さんのように「最初はPCもろくに開かず現場を知る」から始まり、入念なコミュニケーション、そしてデザインやプログラミングを操り「AI実装」まで持っていく。からの、大失敗があっても立ち上がってゴールへと導く。からの、その知見を「次なるサービスへと繋いでいく」のがFDEの本質です。新しいプロダクトの開発点となり、利益を創出できること。
【参考】スキルを学ぶ時代から「現場」を理解する時代へ。技術の先の課題発見力とは
【TOPIC】米国ではOpenAIはFDE専門の会社を約6,000億円を投じ設立。2026年5月末日、日本ではあの富士通と提携しました。国内外のITの巨人たちは、すでに時代を読んで動いています。
富士通とOpenAIの提携で目を引いたのは、やはり「FDE(Forward Deployed Engineer)」の強化。
AIの価値は導入ではなく、実装・運用・展開で決まる。
業務を理解し「AIを価値へ変える人材」が求められる時代になってきました。https://t.co/N03V7BAxrk
— アクトハウス│ +180 ビジネステック留学(FDE人材育成) (@acthouse) June 2, 2026
「現場と技術のラストワンマイルを埋め、さらに未来のサービスさえも創る仕事」、FDEをシンプルに整理したい方は「FDEとは」のページをどうぞ。今までのエンジニアとの違いも、この前提知識があればわかるページになっています。
シンプルにFDEへの興味が湧いた方は「最先端AI職種「FDE」へとキャリア転向するビジネステックな処世術」もチェックしてみてください。
著者:清宮 雄(アクトハウス代表) 起業家・ブランドアーキテクト。2014年にセブ島でIT留学の草分けアクトハウスを設立。「ビジネス×テック」をテーマに、時代に左右されない強靭な個の育成=「+180 ビジネステック留学」の戦略・運営を主導。