その名は「メガトレンド」怪物化するマーケティング

ターゲットはひとつじゃない。地球丸ごとだー。

世界的大企業の数々が「なりふりかまわず」その姿を急速に変化させている。時に批判され、もてはやされ、また矢面に立たされようとも、彼らは素晴らしく厚かましい。未来を作るのは美しい言葉ではなく、挑戦し続ける「点」の連続であると知っているからだ。

その原型をとどめない、節操のない変貌ぶりは、カメレオンのそれを優に超えている。面影を維持せず、静かに姿を変える水生植物のように、場所や環境に応じて大胆かつ柔軟に時代に呼応している。

2015年7月、米国のアンプメーカー「マーシャル」は、突如スマートフォンの発売を発表した。ギターキッズの憧れであり、プロミュージシャン御用達の「音楽機材の会社」が、突如モバイル業界に参入して来たのである。一部の批評家は「大勢に影響はない」と冷ややかに見ているが、同社サイトのトップページには「THE REVOLUTION HAS BEGUN」と高らかに宣言がなされている。ジョークにしては繊細すぎる高機能の数々、新旧マーケットにアピールするデザイン、タトゥーだらけの手が使われた広告。これを酔狂と見るか、パンクな下克上と見るか。

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そして昨年、世界最大のスーパーマーケットチェーン「ウォールマート」社は、医療保険のオンラインサイトである「directhelth.com」と提携した。店舗とオンラインでのラインナップに「保険販売」を組み込んだのである。まさに「ゆりかごから墓場まで」ワンストップで人生をサポートするブランド戦略が如実に感じられる。

一方、日本国内ではどうか。今や不健康の象徴でもあるタバコのケースを作っていた「タニタ」社が、健康のシンボルとも言える「自然食品」のブランドとして、誰もが予想できなかった姿で成功を収めている。自社製品の特許切れに備えた華麗なる経営転換、驚愕のバランス感覚で唯一無二の階段を上り始めた。かの「ユニクロ」も一時、農業への挑戦や中国進出の失敗で倒産の窮地に追い込まれたが、その経験を糧に、今や黒船に乗り込まれたくらいではびくともしない体を手に入れている。

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これらの突然変異は何なのか。なぜ「守り」に入らないのか。そこには「メガトレンド」という、地球レベルのマーケティング思想が彼らを揺り動かしている背景がある。「経済力の変遷/テクノロジーの進化/グローバリゼーション/死生観/人口動態/富と貧/資源・気候」といった強大なるうねりから紡ぎ出す、時代の趨勢を数値化・言語化したビッグデータが大きく影響している。

現代、有限であるエネルギーは枯渇の一途をたどり、その代替となる資源の開発は巨大なマーケットを創出している。ますます都市に人口が集中し、人間の欲望は尽きることなく、精神的・肉体的な肥満化が進んでいる。国家レベルでは人口が集中するメガシティ形成にフィットした政治経済の在り方が主流となっている。より便利に、軽薄短小に、地球は手のひらの端末に収まっていく。

国を越えてインターネットで商品やサービスの売買を行う「越境EC」の時代が定番化し、もはやWeb上での国境は存在しない現在。「地球丸ごと」がマーケティングの舞台である時代に突入している。

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メガトレンド・マーケティングを体現する最たる企業、そのひとつは「Google」だ。彼らは「もうとっくに」検索エンジンではない。

5年前に発表された「Google X」プロジェクト。本プロジェクト内ではさまざまなチームが混在するなかで、特に生体研究、すなわち医療業界への進出が当初から異彩を放っていた。GoogleはITというバーチャルの世界を越えて、現実世界、しかも「生命」という聖域に入って来ている。

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Googleはすでに、世界の終わりを見てきたのかもしれない。その未来を変えるべくライフサイエンスに取り組んでいるという想像も、一笑に付すことはできないであろう。Googleは言う。「身体に生命をおびやかす症状が出る前に、先手を打つ。現代医学のパラダイムを転換させる」と。そしてこの声明には当時、いや、現在においてもまだ、誰も本気で耳を傾けていない。

ひとつの会社がひとつのジャンルを追究し続けることは、現代では死を意味する。今後、ボーダーレスにジャンルを行き来し、主導権を奪い合う「領土なき闘争」は、ますます標準化していくだろう。

答えはいつも闇のなかだ。だからこそ停滞は衰退を招く。しかしメガトレンドというマーブル模様の怪物は、一度足りとて同じ色層を保たないままに、煙の向こうで我々をあざ笑っている。この怪物を制する手立てはあるのだろうか。

古代ギリシアの哲学者、アリストテレスの言葉にはヒントが眠っているかもしれない。

「垣根は相手が作っているのではなく、自分が作っているのだ」
 

【著者 セブ島留学のアクトハウス:清宮 雄】

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