「いぶし銀アーティスト」に学ぶリーダー論。「突破・援護・マルチ」の3スタイルとは。


「リーダーにはどんな人物が適しているのか」を、考えるとき。

「あの会社の◯◯社長はこんなリーダー、△△氏はこんなリーダー」と例えられることはよくある。しかしリーダーは、何も会社の中にだけいるわけではない。それは「職人やアーティストの世界」でも同じこと。人間という個の集団が集まって何かをする場合、その度合やスタイルに差はあれど、必ず「リーダー」が必要になってくる。

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今回は、会社組織から視線を移し「エンターテイメントの世界」で活躍するプロフェッショナルを例に「リーダー論」を考えていきたい。一見華やかなこの世界、しかしその裏では熾烈な生き残り競争が繰り広げられており、第一線で生き残っているのはやはり「知性」に長けたリーダーのみである。

本コラムで取り挙げていくのは、誰もが必ず知っているような人物でなく、特にこの日本で話題にならない「いぶし銀のリーダー」たち。そこには、いわゆる「会社」でのリーダーとは違った味わいがありつつも、やはりそれは不思議と「ビジネスマンと共通する信念」を垣間見ることができる。

ではまず本題へ入る前に、世の中のリーダーには大きく分けて「3つ」のパターンがあることを頭に入れておこう。
 


 
【リーダーの3パターン】

1.突破型
⇒「引っ張り巻き込む」ストロングタイプ。

2.援護型
⇒「ずっしり後ろで構える」サポートタイプ。

3.マルチ型
⇒「突破&援護の」ハイブリッドタイプ。
 


 
「突破・援護・マルチ」。この3つの中で、あなたはどのタイプに近いだろう。あるいはどのタイプになりたいだろうか。これから紹介する「3人のリーダー」と自分を重ねあわせながら、読み進めてみよう。
 


 
《1.突破型リーダー》

まずは、周りを強引にでも巻き込んでいく「突破型」から紹介していこう。1974年に一世一代の神話を築いた破天荒なリーダーだ。

話は当時のニューヨークにさかのぼる。かつてここに「地上415mメートル」の2つのタワーがあった。

1

ワールド・トレード・センタービル。ここへ仲間たちと共に、数年にもわたり水面下で準備をしたうえで忍び込み、夜通しで1本のワイヤーを張り、そこを「命綱なし」で渡りきった男がいた。

2

フランスの大道芸人「フィリップ・プティ」。この行為は法を無視して「無断」で行われた。当然のことながら不法侵入など含む犯罪であり、一般的に許された行為ではない。しかし、これは「史上最も美しい犯罪」と言われ、41年の時を経てもなお語り継がれる伝説の「神技」である。とはいえ刑務所に叩き込まれるこの行為、単独行動ならまだしも、プティはどうやって仲間を引き込み、この世紀の「大”犯罪”エンターテイメント」をやってのけたのか。
 


 
《「突破型」リーダーのココがすごい》

《直感を信じる》
プティ18歳のとき、たまたま新聞で見た「アメリカで地上415メートルのビルを2つ建設中」を目にし、綱渡りを決意。単なる直感だけでスタート。

《努力は惜しまない》
夢を決めたら貧乏でもひたすら修行。窓のない安アパートに住み、地元のサーカスに弟子入りし、綱渡りの基礎や「ワイヤーの張り方」を教わる。

《周囲に語る》
自分を夢を周囲に熱く語る。語りまくる。仲間にミッションの達成感をイメージしてもらい「俺たちでもやれるんだ」と結束を固める。ここに駆け引きや金銭は一切ない。あるのは「夢の共有」のみだ。

《周囲を巻き込む》
当初、半信半疑であった彼女や友人たち。しかしだんだんプティの熱に侵され、理由のない勇気が湧いてくる。これが実は「犯罪」だと知っていても。

《リスクも自己責任》
地上415メートルのビルが建設中の段階から、仲間と共に何度も変装し「ビジネスマン」や「ケガ人」を装い、たびたび潜入。道具を運び、下調べを綿密に重ねた。

《見よう見まね》
やったことないスケールでも関係ない。やってみなきゃわからない。ワイヤーは真夜中から朝方にかけ、2棟のビルの間に夜を徹して綱を張られた。

《あきらめない》
実際に綱渡りを達成したのは25歳。実に7年越しの夢だった。もちろんギャラなど誰からも出ない。

《一緒に夢を見続ける》
サポートした仲間たちは、この計画を手伝っても有名になれるわけでもないし、単に「犯罪に手を貸しただけ」の国際犯罪者にもなる。でもプティと「一緒に夢を見たかった」。

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【トクダネ】 このプティの神技の映像は撮られていないが、多くの写真が残っている。またドキュメント映画「Man on Wire」(2008)では本人や仲間たちのインタビューを見ることも可能だ。さらに日本では2016年に映画「THE WALK」が公開され、その伝説を体感することができる。

 


 
では次に「援護型」のリーダーを紹介しよう。強く、静かに、それでいて仲間の精神的支柱であり、どんな場面でも助けてくれる存在。決して派手ではないけれど、こんな寡黙なリーダーもいる。
 


 
《2.援護型リーダー》

世界でも1、2を争う人気を誇るバンドのひとつ「U2」。総セールス枚数は約2億枚、グラミー賞もロックバンドの中で最多の22回。そして、ほとんどのメディアは「リーダーはボーカルの『ボノ』」と書いている。しかし、これはボノ自身が「自分はバンドの窓口なだけ」と否定している。じゃ、リーダって誰?

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実は、このバンドのリーダーはこの人。

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ドラム担当で最年少の「ラリー・マレン・ジュニア」。ところが普段、ラリーはメディア対応は積極的にせず、表立ってインタビューに答えることもない。つまりは、そういうことなのだろう。リーダーとは役職でなく「役割」なのだ。
 


 
《「援護型」リーダーのココがすごい》

《行動力の起業家タイプ》
メンバー中、最年少ながらバンドの発足人。U2の当初の名前は、自分の名を冠した「ザ・ラリー・マレン・バンド」だった。高校生の時に仲間を募集し、現オリジナル・メンバーがいきなり集結。

《平等主義》
作曲は「メンバー全員」で行われ、そこに貢献度の差異があろうとも、クレジットは「U2」とバンド名義にこだわる。各メンバーがエゴで競い合うことがないよう配慮しているのだ。また、ギャランティも毎回等分にすることを制定した。U2創設者でありながら、それを吹聴したり、エゴを振り回すことは一切ない。むしろその逆をいく。

《隠れた司令塔》
ドラムというポジションは客から見れば「一番後ろで地味」に見えるかもしれないが、野球で言えばキャッチャー。「最も全体を俯瞰できる定位置」でバンドと観客を操っている。ラリーを中心にライブを見ると「ボーカルと楽器と観客」をつなぐ指揮者として機能していることがわかる。

《役職でなく役割を重視》
ラリーが出しゃばってU2を語ることはなく、これからもないだろう。援護型リーダーはあくまで縁の下の力持ち。実は本人、大統領の式典にも呼ばれるような評価を得ていながら、インタビューではとにかく脇役であることを強調し「他メンバーを立てる、目立たせる」ことに徹する。主役はたくさんいらないことを知っているのだ。

《もはやリーダーはいない》
チームとしては究極のスタイルとも言えるが、もはや「U2のリーダーは誰?」を語ること自体が野暮である。ラリーはあくまでスタートアップとしてU2を創り、そこであとは「できるヤツ」に任していった流れになる。経営でいえば、先導型とは正反対の「フォロー型」のスタイルだ。アイディアをつぶさず好きにやらせ、自分は「作業の工程や人間関係の溝」をつぶさに埋めていく。ラリーのこのフラットな柔軟性がなければ、U2はデビュー前にも解散していたかもしれない。

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【ポイント】 U2とアップルの親交は、かのスティーブ・ジョブズ時代から深く、それは現在のティム・クック体制であっても変わらない。アップルほどのブランドが単に「売れているから」という理由で特定のバンドにここまで肩入れするだろうか。自然体のやり方でU2をここまで神格化させたラリーの「起業力」と「もの言わぬリーダーシップ」は大変興味深い。
 


 
では最後に「マルチ型」のリーダーを紹介しよう。

いわゆるスーパーマンタイプであるが、知性あるリーダーはやはり風格がちがう。アイドル的な人気で駆け上がったわけでもないし、だれかの二世でもない。着々とマルチに、そして欲張りに、遠回りしながら成功の階段を上がっていく「努力」の人だ。
 


 
《3.マルチ型リーダー》

世界の誰もが知っている作品を監督、また別のメジャー作品では俳優としても出演、さらには自ら脚本も書く、まさに「表舞台も裏舞台も」できるマルチ型リーダー。

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え、この人誰? という人も多いかもしれない。
彼の名は「ジョン・ファブロー」。

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監督作は「アイアンマン」、俳優出演作は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」、脚本作品も数知れず。最新の製作総指揮は「アベンジャーズ」という、まさにマルチで大活躍の映画人だ。
 


 
《「マルチ型」リーダーのココがすごい》

《同時にトライ》
30歳のとき、同年代の俳優らと、青春体験を映画化した「スウィンガーズ」で好評を得る。ここで脚本と主演という「表舞台と裏舞台」の双方に挑戦した。

《長い下積み》
デビュー作の評価は良かったが「俳優+制作」のマルチへの道は甘くない。大作への監督抜擢まで12年以上を要する。

《テレビにも》
決して人気者になることはなかったが、端役ながらテレビにもトライ。映画以外の世界にも挑戦した。

《双方で修行を続ける》
脇役ながらも様々な作品に出ることができたのは、やはり制作の勉強も続けていた人脈の強さであろう。俳優仲間、制作仲間双方と「話せる」知性と度量を兼ね備えている。

《巨大プロジェクトを転がせる》
大作「アイアンマン」ではエキストラ含め数万人のプロジェクトのリーダーを務め上げ、世界的ヒットへ導いた。俳優の本音、制作の気持ち、何より観客が求めるものを知り尽くした下積みが開花した瞬間だ。

《トップリーダーができる》
監督よりも責任が大きい製作総指揮を務めた「アベンジャーズ」。主役級のアメコミヒーローが「勢揃いしすぎ」の映画としてコケることも予想されたが、見事、本プロデユースを大成功させた。

《すべてができる》
最新作「シェフ」では「製作・監督・脚本・主演の4役」を務める。でしゃばるでなく、しかし控えめすぎることもない、まさにマルチのリーダーとして活躍する。

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【トリビア】自身の新作では「アベンジャーズ 3」の制作を断ってまでセルフプロデュースの映画「シェフ」を創り上げた。映画人としてまだまだ新しい領域に挑戦する49歳。かつて無名の脇役だったファブローは確実にハリウッドの「顔」になりつつある。
 


 
では、最後に復習を。

【リーダーの3パターン】

1.突破型
⇒「引っ張り巻き込む」ストロングタイプ。

2.援護型
⇒「ずっしり後ろで構える」サポートタイプ。

3.マルチ型
⇒「突破&援護の」ハイブリッドタイプ。
 


 

「突破型7割・援護型3割」というマルチ型リーダーもいれば「100%援護型リーダー」が性に合っている人もいるだろう。自分の性格や特技を見極め「自分のなりたいリーダー像」をイメージしながら他のリーダーを観察するクセをつけると良い。

そしてリーダーになったその後も、ゴールイメージを常に持ち続けながら「リーダーとは何か」「この瞬間は何型のリーダーであるべきか」をいつも自分に問い続けマネジメントを心がけよう。


 

▶︎著者:清宮 雄 プロフィール
フィリピン・セブ島在住。IoTそしてA.I.時代の国際的な起業家・ビジネスパーソンを育成するセブ島留学のアクトハウス代表。メンターとして現場でも奮闘中。アクトハウスの体験談はこちら >>>

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